実力はモンスター級 “怪物くん”のあだ名を持つ中学生ボクサー藤木勇我とは
中学3年生という若さで、すでに世界チャンピオン候補とされているボクサーがいる。UJ57キロ級王者の藤木勇我だ。世界ランカークラスと互角に戦う実力を持ち、“怪物くん”と呼ばれている。
プロを圧倒
藤木を初めて見たのは、大阪のジムに取材で訪れた時だ。取材していたボクサーが中学生とスパーリングをするという話を聞き、その様子を見ていた。
プロのスパーリングパートナーに選ばれるだけあって実力者なのだろう。ジュニアボクサーのレベルは年々上がっているとはいえ、まだ中学生。
どれほどのものかと見ていたが、想像以上の実力に目を見開いた。なんとプロで活躍するボクサーをダウンまで追い込んだのだ。
体格もひと回り以上離れている。アマチュア経験が豊富なプロ相手に終始ペースを握っていた。ダウンを奪ったラウンド終盤のボディは中学生が打てるものではない。
特に驚かせたのは、プレッシャーと近距離での攻防だ。体を振りながらパンチを打ち込み、アッパーやボディなど多彩な攻撃を見せていた。
本人は「上手い選手なのでどうやって崩すか考えていました。上は当たらないので、下から崩していこうかと思い実行しました」と話していた。
まるで4階級王者ローマン・ゴンザレスのような動きを見せてくれた。バランスが良く、パンチを打った後でも体制が崩れない。外からでも中でも戦えるオールラウンダーなのだろう。
その他にも、元世界王者の宮崎亮や現WBOアジアパシフィックライトフライ級王者の加納陸とも互角に戦うというから驚きだ。
数々のボクサーを見てきた筆者だが、ここまで完成度の高い中学生ボクサーは見たことがない。
藤木勇我とは
中学生でも大人と互角に戦うボクサーはいる。3階級王者の井上尚弥や先日プロボクシングのテストに合格した那須川天心、元2階級王者の粟生隆寛など、親の影響で幼少期からボクシングや格闘技に親しんでいる選手達だ。
藤木も元プロボクサーだった父の影響で、幼少期からボクシングを始めた。小学1年生の時に初めてスパーリング大会に出場し、順調にキャリアを積み、アマの大会を総なめにしてきた。
戦績は31戦30勝(17KO・RSC)1敗、10代では驚くべき戦績だ。唯一の1敗を喫した相手にも、リベンジを果たしている。
家族のサポートも手厚く、母親が体調や体重管理、父親がトレーナーや送迎を行っている。3つ上の兄もアマチュアボクサーとして活躍しているようだ。
今後の可能性
今後の目標について「高校の全国大会を全部取って、国際大会でも勝って、世界チャンピオンになりたい。応援してもらっている人や家族が喜んでくれるのが一番のやりがい」と話していた。
ボクシングは個人競技ではあるが、決して一人ではリングに立つことができない。勝ち進んでいくには、ジムやトレーナーのサポート、ファンや家族の応援などが必要になる。藤木は中学生ながら、その重要性を理解していた。
世界3階級王者の亀田興毅氏も「彼は規格外のボクサー。このままいけば必ず世界チャンピオンになる」と太鼓判を押していた。
藤木が練習拠点としている陽光アダチジム会長の安達哲夫氏も「ここまで化けるとは思わなかった。大阪の井上尚弥になると言われている」と話していた。既に多くのボクシング関係者から一目置かれているようだ。
4月からは大阪の名門で井岡一翔などを輩出している興国高校に進学する予定だ。
強くなるために環境はとても大切だ。強い選手やライバルに出会うことで更なる進化を遂げるだろう。藤木勇我の今後の活躍に期待したい。