「ユニクロ同窓会」を全国開催中。会社に使い捨てられないために私たちができること
新卒で入社した人の半分が3年以内に退職するユニクロ(『週刊東洋経済』2013年3月13日号)。「石の上にも3年」というけれど、ユニクロは良くも悪くも「焼石」なのだ。気力・体力・時の運(上司との相性)のどれかに優れていないと、疲れ果てて消えるように辞めることになる。とりわけ体力のない僕はわずか1年で辞めた。2001年の春のことだった。
退職してから10年間ぐらいは挫折感や敗北感が残っていた気がする。しかし、『週刊文春』や『週刊東洋経済』をはじめとする報道を読んでいると、ユニクロという会社は短期間で退職した僕たちのほうがむしろ多数派であり、必要以上に恥じ入ることはないのだと思えてくる。
ただし、「3年もたたずに体調を崩して退職」というのはキャリアとしては明らかな失敗である。同じ過ちを繰り返さないために、「僕たちはどこで間違えたのか」を確認しておかねばならない。そのためには同じ経験をした人たちと語り合うのが一番だと思う。相手の経験談の中にかつての自分を見つけることができるからだ。
今年4月に「ユニクロ同窓会」を思い立ち、ユニクロを率いるファーストリテイリングで社員を経験した人を訪ね回っている。現在、『週刊文春』の誌上などで経過報告をしているが、まとまってきたら書籍にする予定だ。ユニクロで働く現役社員にもぜひ読んでほしい。なぜなら、企業に使い捨てられないための処方箋となりうるからだ。
4か月間で、「地域限定正社員」から「年収1200万円の中途入社本部社員」までを10人ほど訪ねることができた。「処方箋」はまだ完成していないが、1つの仮説が浮かんで来ている。「考えることをやめてはいけない」だ。
新入社員はユニクロの各店舗現場に配属され、圧倒多数のパート・アルバイトスタッフの上にいきなり立つことになる。作業は膨大であり、覚えることはいくらでもある。会社の方針はどんどん変わり、社員は半年から1年で新たな店舗に異動になる。新入社員は仕事についていくことに必死になり、上層部(柳井社長)が考えたオペレーションをいかに効率良くミスなくこなすかだけを考えるようになってしまう。それはもはや「考える」とは言わないだろう。
この先に終身雇用が待っているならば、高性能ロボットのような「ユニクロマン」になるのも一つの選択肢かもしれない。かつての大企業戦士のような姿だ。しかし、労働組合すらないユニクロに家族主義的な終身雇用は望めない。社員の平均年齢は約30歳なのだ。若いうちに活躍できるとも言えるが、「平均寿命」が戦国時代以下という見方もできる。考えなければ、気力・体力・時の運が尽きた時点で哀しい最期を迎えることになる。
ユニクロで何を得て、どのタイミングで退職をするのか。常に考えながら働くことが大事なのだ。「辞めることを考えながら働くなんて寂しい。愛がない職場だ」と思う人もいるだろう。しかし、商売や顧客や優秀な人材は愛するけれど、一人の人間としての従業員は愛することはしないのがユニクロという会社だ。超ドライでチャンス(とリスク)に満ちた社風、とも言える。だから、自分もクールにならなくては身を守れない。考えることだけは決してやめてはいけない。