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韓国のメディアが一斉に「次は日本が譲歩する番」 「岸田訪韓」を前に元徴用工問題で謝罪を求める韓国

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
訪日した尹錫悦大統領と握手する岸田文雄首相(総理官邸HPから)

 岸田文雄首相が今月7日から1泊2日の日程で韓国を訪問することが決まった。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の訪日(3月16-17日)への答礼である。

 これにより民主党の野田政権と李明博(イ・ミョンパク)政権を最後に途絶えていた日韓「シャトル外交」が12年ぶりに復活することになる。それも、尹大統領の訪日から僅か1か月での実現の運びとなった。

 「シャトル外交」が途絶えたのは歴史認識、「過去の問題」を巡る政権の対立によることは言うまでもない。

 この間、韓国は李明博政権から同じ保守の朴槿恵(パク・クネ)政権、そして進歩派の文在寅(ムン・ジェイン)政権へと政権が移行し、日本もまた、民主党から自民党に政権が交代し、安倍政権、菅政権、岸田政権に引き継がれてきた。

 朴政権の時は韓国側が「首脳会談開催には慰安婦問題で日本が誠意を示すことが先決、前提である」との立場に固執し、「課題があればこそ、まず会って話をすべき」(安倍総理)と、無条件対話を呼び掛ける日本側の提案を2015年11月まで頑として拒み続け、文政権の時は逆に日本側が「元徴用問題で韓国が解決策を示さない限り会っても意味がない」と「膝を交えて虚心坦懐話をしたい」とする韓国側の要望を突っぱねてきた。

 岸田首相は訪問先のガーナ・アクラで「日韓関係の加速や激変する国際情勢について腹を割って意見交換をしたい」と随行記者らに語っていたが、隣国の首脳同士が胸襟を開き、未来に光明を見て目前の課題を解こうとする姿勢は大いに歓迎されてしかるべきだ。尹大統領も両手を広げて、岸田首相を待ち受けていることであろう。

 今後の問題は政権レベルではなく、国民のわだかまりの解消にある。その意味から5年ぶりの日本の首相の訪日を韓国国民がどう受け止め、 何に期待しているのかを韓国各紙の社説から探ってみた。

 以下、代表的な政府擁護で知られる「朝鮮日報」とその逆の政府批判の「ハンギョレ新聞」の2紙を除く他の6紙の社説を取り上げ、その概要を紹介するが、見出しを見れば、一目瞭然で、どれもこれも依然として過去の問題、元徴用工問題に拘っていることがわかる。

▲保守大手紙「中央日報」(2日付)「岸田総理が誠意をもって供応すべき番である」

 「韓日関係の特殊性と敏感な変数を考慮すれば、日本の総理の1回の答礼訪問ですべてを解決することはできない。それでも岸田総理の今回の答礼訪問は両国関係の雰囲気を変える大切な機会として生かすべきである。そのためには岸田総理の旅行カバンの中に幾つか誠意ある供応すべき措置が入っていることを期待して止まない」

 「一つは、強制徴用被害者らに対する明白な謝罪と過去史謝罪に対する前向きな言及である。尹大統領が国内の政治的損害を甘受して韓日関係改善のため前向きな強制徴用解決策を示しただけに岸田総理が真心を持って供応すべき番である。もう一つは、日本の経済産業省が先月28日に『ホワイト国リスト』に再指定するための手続きの開始を発表したが、その関連手続きを迅速に終え、他の障害物も果敢に取り払うよう願う」

 ▲中立紙「国民日報」(3日付)「今度は岸田の番・・・韓日未来は彼の回答にかかっている」

 「日本は政治的打撃を甘受した尹大統領のお陰で韓日関係の難題を解く機会を得た。またこのことを誰よりも歓迎した米国の視線から(日本は)一層大きな圧迫を感じることになった。こうした渦中に韓国が日本に先駆け、米国と核を基盤とした安保同盟を構築したワシントン宣言は韓米日協力関係の面で日本に役割を悩ますことになったであろう。3月の韓日首脳会談と4月の米韓首脳会談はすべて日本に向かって語り掛けている。『今度は岸田総理が行動する番である』と』

 「韓日関係と韓米日協力の未来のため、今は100の未来志向的な措置よりも歴史問題に対する真心のこもった一言が大きな力を発揮する時だ。歴代政府の認識を継承するとした3月の首脳会談の水準を越えた謝罪と反省の真心を見せれば、両国関係にとって大きな里程標となるであろう。慰安婦及び強制徴用被害者らに直接会うのが最も望ましい」

 ▲政府に批判的論調の「京郷新聞」(3日付)「韓国に来る岸田総理・・・『コップの残り半分を満たせ』」

 「隣国の間で首脳同士が行き交うのは歓迎すべきで、長期間中断していたシャトル外交が復活するのも意義深いことである。しかし、今は正直、快く受け入れる気分にはなれない。尹政権の性急かつ軽率な韓日関係復元努力と国民の自尊心を著しく棄損させた言行や過去史問題を『他人事』のように見てきた日本政府の態度がこうした後味の悪い雰囲気にさせたからである。(中略)岸田総理は訪日した尹大統領との首脳会談で過去史謝罪を省略し、『(韓国が)先にコップに半分注いだので、残りの半分は日本が』との(韓国側の)期待を壊してしまった」

 「岸田総理は韓国世論のこうした雰囲気を注視し、誠意のある訪韓準備に万善を期すべきである。何よりも強制動員被害者らを含め過去史に対する真心のこもった謝罪が必要である。歴代総理の発言を繰り返す程度では韓国の世論を動かすことはできない。福島原発汚染水の放流など敏感な懸案についても誠意ある態度で臨んで欲しい」

 続いて、一貫して日韓関係改善を待望していた経済紙から「ヘラルド経済」と「ソウル経済」の2紙の社説である。

 ▲「ヘラルド経済」(2日付)「岸田総理訪韓 韓日関係復元の転換点に」

 「尹大統領が国内の政治的損害と世論の批判を甘受して『第3者弁済方式』という前向きな解決策を提示し、引き続き日本を訪問したことが関係回復のための土台となった。岸田総理の訪韓はこれを完成し、未来志向的に向かう出発点とすべきである」

 「日本の総理の一度の訪韓で複雑に絡み合った両国の関係が一挙に解決することはできない。それだけに岸田総理の訪韓は一層重要である。何よりも誠意のある訪韓包み(土産)を出さなければならない。一歩前進の過去史謝罪がその一つだ。その中には両国関係が冷却化した強制徴用被害者に対する部分も含まれていなければならない。また、尹大統領が提示した『第3社弁済方式』の残りの部分を埋める真心のこもった方策も含まれていなけれならならない」

 「韓国と日本は互いに引き離したくても引き離せない関係にある。過去に足を縛られていては未来に進むことはできない。お互いの国益のためにも、朝鮮半島と北東アジアの平和のためにもともに助け合い、協力すべきである。岸田総理訪韓への期待は大きい」

 ▲「ソウル経済」(3日付)「未来志向関係復元のため日本の総理は誠意ある供応措置を示すべき」

 「韓国と日本は今回の首脳会談で韓日軍事情保護協定(GSOMIA)の完全正常化、『ホワイト国』早期復元、半導体など先端産業の供給網の再編論議で可視的な成果を上げるべきだ」

 「何よりも重要なのは尹大統領が強制徴用解決策として前向きな『第3者弁済』方策を提示しただけに岸田総理の誠意のある供応措置が供わなくてはならない。そのためには強制徴用被害者と我が国民に真心のこもった慰労と反省の意を明らかにすべきである。韓日経済経済界がつくった『未来青年基金』に日本の被告企業が積極的に参加する後続措置も取られるべきだ。岸田総理は過去の総理の歴史認識を継承するという式の迂回的な謝罪ではなく、直接『痛切な反省と謝罪』の意を表明すべきである」

 最後に地方紙、それも日本に最も近い、韓国第2の都市、釜山市の新聞を取り上げる。

 「釜山日報」(2日付)の社説「岸田総理来週訪韓 日本が誠意を示す順である」

 「今度は日本が韓国に誠意を示す番だ。1998年に発表された金大中・小渕宣言には日帝の植民地支配に対する日本の反省と謝罪と未来志向的な韓日関係発展に関する内容が含まれていた。岸田総理は前回の首脳会談ではこうしたことに直接言及しなかったため日本側の供応が不足していると指摘されていた。ソウルで第二の『金大中・小渕宣言』が出れば良い。韓国の前向きな強制徴用解決策に(日本は)今からでも積極的に供応し、未来を共に切り開く意志を示してもらいたい。福島汚染水放流問題を含む韓日漁業協定再開など韓日の間には懸案が山積している」

 「外交はお互いギブ&テイクが慣例である。我が政府も今回の機会を十分に生かし、国民の目線と感情に沿った措置を日本に要求すべきである。日本の相応の措置が抜け、政府には大きな負担となった。強制動員解決策については『屈辱外交』批判が高まっている状態で尹大統領が再度(G7会議関連で)訪日するのは見かけ的にもよくない。独島(竹島)問題など繰り返される日本の妄言も根絶させる時だ。ばらまき外交との非難を再度浴びたくなければ可視的な成果が必要だ。岸田総理がソウルで示す未来に向けての発言と後続措置を期待する」

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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