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ウクライナ農民の創意工夫で作られた「防護盾付きの無人地雷除去車」

佐藤仁学術研究員・著述家
地雷除去の訓練を行うウクライナ兵(写真:ロイター/アフロ)

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻してから、ロシア軍は大量の対人地雷、戦車用の地雷をウクライナの最前線に設置している。ロシアは対人地雷の使用、生産、移譲などを禁止しているオタワ条約(対人地雷全面禁止条約)に加盟していない。

多くのウクライナ兵や一般市民が対人地雷の犠牲になっている。地雷では殺害されることはほとんどないが、手足が吹っ飛んでしまう。また小型のおもちゃのようにも見える対人地雷は子供や一般市民が拾ってしまい、爆発したら手足が吹っ飛んでしまう大けがをすることになる。

地雷の他にも不発弾や、迎撃されたが上空で爆発しないで墜落した「爆弾を搭載した神風ドローン」なども地上に散乱しており、それらも何も知らずに踏んだり触ったりしてしまうと爆発する危険性がある。

ウクライナ政府ではウクライナ兵が地雷除去機で地雷を除去している動画を紹介していた。探知した地雷を丁寧に爆破して除去している。人間の兵士が地雷を探知して除去するのは大変な作業で危険を伴っている。

そんななか、ウクライナでは遠隔からのリモートコントロールで地雷を除去する「無人地雷除去車」を活用して地雷の調査と破壊をしている。2023年6月にウクライナのメディアUnited24が「無人地雷除去車」を紹介していた。トラクターの前に防護盾のような防御用の鉄が装着されており地雷除去中に地雷が爆発してもトラクターが破壊されにくいようなつくりになっている。United24では「地雷のせいで農業ができなくなってしまった農民が創意工夫を重ねてつくったリモート式の無人地雷除去車」と紹介していた。

「無人地雷除去車」は遠隔操作なので運転手はいない。従来のように人間が探知して除去するよりも効率的で安全である。このような危険な業務には無人のロボットが適している。地雷だけでなく不発弾や神風ドローンも探知して破棄することができる。広大な農場では人間が地雷を探して除去するよりも効率も良い。このような「無人地雷除去車」はウクライナの農民や当局が独自に開発もしている。だが、まだこのような「無人地雷除去車」は普及していないので、危険を伴う地雷の探知と除去作業のほとんどはウクライナ政府の動画のように人間の兵士が行っている。

「無人地雷除去車」やロボットのようなリモートコントロールでの無人での作業は4D業務(Dangerous:危険な、Dirty:汚い、Dull:退屈な、Deep:深くて人間が行けない場所での作業)に適している。地雷除去はかなり危険(Dangerous)な作業なので、「無人地雷除去車」による作業の方が人間が行うよりも適している。

地雷が爆発して死ぬことは少ないが、手足が吹っ飛んでしまい不自由な生活をせざるを得なくなる。また対人地雷で大けがをした負傷兵の世話をしないといけないので軍隊のオペレーションにとって大きな負担となる。さらに負傷した軍人や市民らは生涯にわたって不自由な生活を強いられることになる。そのため地雷は発見したらすぐに除去しないといけない。紛争が終わってからも地雷が残っていると、地雷が埋められていることを知らないで市民や子供が地雷に触れてしまい爆発する危険がある。

▼防御用の防護盾のような鉄が装着されている「無人地雷除去車」

▼人間の兵士が地雷を探知して除去する作業を伝えているウクライナ政府

▼リモートで操作して地雷を探知・除去するハルキウ州当局の「地雷除去車」

▼「地雷除去車」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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