Googleにスマートスピーカーの仕様変更を余儀なくさせたSonos社の特許を解説する(1)
「グーグル、Sonosの特許侵害と米ITCが裁定--スマートデバイスの動作変更で対処」というニュースがありました。「Googleは米国時間1月6日に発行された米国際貿易委員会(ITC)の禁止措置を受けて、スマートスピーカーの設定と制御方法を変更する。」ということです。この件に関するITCの通告文はこちらです。
請求人はSonos(ソノズ)という企業です。同社は2002年創業の、スマートスピーカーの開発を続けてきたテクノロジー企業です。いわゆるパテントトロールではありません。約500件の自社開発技術の特許を取得しているそうです(調べると日本でも126件の特許登録があります)。
SonosとGoogleの特許権侵害訴訟はカリフォルニア州中央地区連邦地裁に係属中ですが、今回のITCへの申立はそれと並行して行われたものです。ITCは裁判所ではなく、輸出入を司る行政機関ですが、特許権を侵害する物品の輸入を禁止できる権限がありますので、米国の特許訴訟戦略の一環として特許権侵害訴訟と並行してITCへの申立が行われることがよくあります(Apple vs Samsungでも使われました)。ITCへは損害賠償は請求できませんが差し止めの決定を裁判よりも迅速に得られるというメリットがあります。ただし、当然ながら、米国内で製造が完結している製品に対しては使えません。ちなみに、日本でも税関への申立により同様のことを行うことは可能です。
Sonos社はNASDAQ上場、売上は約17億ドルとそれなりの規模の会社ですが、Google(Alphabet Inc.)の売上規模はその30倍以上と桁違いなのは言うまでもありません。このような小規模企業が世界最大規模の企業と特許によって”一応”は勝負できているといういう点が、米国における知財の価値の大きさを感じさせてくれます。
さて、操作方法の具体的変更内容は、Googleの公式ブログに書いてありますが、最も大きな変更は、スピーカーグループの音量を一括して変更することができなくなった点、および、スマホの音量ボタンによるスピーカーグループの音量が変更できなくなった点です。
ブログ記事には「不便になって困る」とのユーザーのコメントが見られます。米国だと、家の各部屋にスピーカーを置いて同じ音楽を流す使い方が多いのでしょうか?日本だとこういう使い方が一般的かどうかはわかりませんが、店舗やオフィスのBGMで使うケース、2台使ってステレオにするケースはあるかもしれません。Googleもこの状況を許容できないと思いますので、早晩、ライセンス契約を伴う和解に至るのではないかとも思えますが何とも言えません。
関連する特許番号は、9,195,258、10,209,953、9,219,959、8,588,949、10,439,896 の5件です。いずれも、複数のスマートスピーカーを一括して使用する際の技術に関連する特許です。
本記事では、上記のスピーカーグループの一括音量調整機能に直接関連する8,588,949の内容を見てみましょう(残りの5件は次回に回します)。今回の特許の中には日本でも同等の特許が権利化されているものもありますが、この特許に関しては権利化されているのは米国のみです。
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