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なぜ“バルサの至宝”は17歳でスペイン代表に選ばれたのか?ガビの闘争心と待望のカンテラーノの台頭。

森田泰史スポーツライター
バルサでプレーするガビ(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

今季、バルセロナに新星が現れた。

昨季のバルセロナにおいて、数少ない朗報を挙げるとすれば、それはペドリ・ゴンサレスの台頭だった。移籍一年目で瞬く間にリオネル・メッシとの信頼関係を構築し、セルヒオ・ブスケッツ、フレンキー・デ・ヨングと盤石の中盤を築いた。

だが正確に言えば、ペドリはバルセロナのカンテラーノ(下部組織出身選手)ではない。彼はテネリフェ島で生まれ育ち、ラス・パルマスのカンテラでプレーした後にプロデビューを飾っている。

そういう意味では、本当のバルセロナのカンテラーノのブレイクが待たれていた。

今季CLでデビュー
今季CLでデビュー写真:ロイター/アフロ

リーガエスパニョーラ第3節、ヘタフェ戦。セルジ・ロベルトとの交代で、一人の選手がピッチに入った。パブロ・マルティン・パエス・ガビラ、「ガビ」の愛称で親しまれるヤングプレーヤーだ。

ガビは17歳24日の若さでトップデビューを飾った。ビセンテ・マルティネス、アンス・ファティ、ボージャン・クルキッチに次いで、クラブ史上4番目の若さだった。

その才能は、ラ・ロハ(スペイン代表)を率いるルイス・エンリケ監督の注意を引きつけた。10月のネイションズ・リーグに向けて、ガビが招集された。

「この数試合のバルサでのプレーを見て、テストしたいと思った。以前から、彼のことは知っていた。バルサのカンテラにいた頃からね。将来、彼がどういったパフォーマンスを見せるかというのに疑いの余地はないよ」とはL・エンリケ監督の言だ。

「招集は時期尚早かもしれない。しかし、クラブで、代表で、将来的に非常に重要な選手になる可能性がある」

■見初められた才能

アンダルシア出身のガビは、地元のクラブであるリアラ・バロンピエで6歳からサッカーを始めた。「一目見て、異なる選手だと悟った。プレベンハミンの世代だったと思うが、すぐにカテゴリーを上げなければいけなかった。大胆なところを含めて、フットボールのための生まれ持った才能を有していた」とは彼を最初に指導したマヌエル・バスコの弁だ。

だがバスコが長くガビを指導することはなかった。2年後、ベティスがガビを確保する。ベティスでは、1シーズンに96得点を記録するという“伝説”を残した。

2015年に、11歳でバルセロナのカンテラに入団した。当初は、家族と共に移住しバルセロナのランブラス通りに居を構えた。1年後にラ・マシア(バルセロナの育成寮)で一人暮らしをスタート。ガビの本格的なチャンレンジが始まった瞬間だった。

バルサのカンテラ出身の3選手
バルサのカンテラ出身の3選手写真:ロイター/アフロ

バルセロナは今夏、リオネル・メッシがパリ・サンジェルマンに移籍した。

2010年には、メッシ、アンドレス・イニエスタ、シャビ・エルナンデスがFIFAバロンドールの最終候補に残った。カンテラーノの3選手が世界の頂を争うという構図は、バルセロナの育成力を誇示するものでもあった。

だが、以降、その育成力は発揮する場を失うことになる。2013年のネイマールの獲得を筆頭に、クラブはスター選手の獲得に舵を切った。ウスマン・デンベレ(移籍金1億500万ユーロ/約131億円)、フィリップ・コウチーニョ(1億2000万ユーロ/約156億円)、アントワーヌ・グリーズマン(1億2000万ユーロ)…。もっと言えば、ネイマールの加入・退団で、その後釜を見つける必要性が生じた。ネイマール に振り回され、彼の代役を捕まえる以外の策を講じられていなかったのが近年のバルセロナの現実である。

最終的にはビッグプレーヤーが集まりすぎたがゆえにサラリーの問題が膨れ上がった。そして、メッシの放出を避けられなかった。カンテラの象徴的存在であり世界最高の選手が移籍金ゼロで去るという結末が迎えられた。

スペインA代表でデビュー
スペインA代表でデビュー写真:Maurizio Borsari/アフロ

メッシ、イニエスタ、シャビ。彼らはペップ・グアルディオラ監督の下で主軸となり、4年間で14個のタイトルを獲得した黄金時代の中心にいた。

ガビのアイドルは、イニエスタだった。彼らに憧れていた世代が、確実にチャンスを掴んできている。

ガビに関して、特徴としては競争性と闘争心が挙げられるだろう。カンテラ時代の2016年に、エスパニョールとの試合でゴール前の混戦で顔面を蹴られ、鼻骨を骨折。それでも1ヶ月後に同様のシチュエーションでゴール前に突っ込み、相手GKと激突しながらゴールを決めたという逸話がある。

「いまは代表について話したくない。負けたのが本当に悔しい」

リーガ第8節アトレティコ・マドリー戦後に、スペイン代表の招集について問われた際には、そう答えている。その数日後、ガビはネイションズリーグ準決勝イタリア戦でスタメンに名を連ねA代表デビューを果たした。

ガビ、ニコ・ゴンサレス、アレッハンドロ・バルデ…。バルセロナに、期待のカンテラーノが出てきている。クラブはすでにガビに対して2026年夏までの契約を準備しているようで、イライクス・モリバのようなケースにはならないだろう。バルセロナとスペイン代表の未来に、希望の光が灯っている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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