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音楽、動画配信から焼き肉定額まで? 広がるサブスク契約 便利だが「始めどき」より「止めどき」に注意

山崎俊輔フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP
焼き肉も定額食べ放題?(写真:西村尚己/アフロ)

焼き肉にもサブスク? サブスクリプション契約は個人にとってお得か?

毎月定額を課金することで使い放題になるのがサブスクリプションサービスです(以下サブスクと略す)。

サブスク契約は課金のしやすさからネットやITサービスの世界では広く進んでいます。かつてはパッケージを買い切って数年使うのが当たり前だったマイクロソフトのOfficeはOffice365として、アドビのPhotoshopなどのソフトはAdobeCreativeCloudとして、月額定額制に切り替えをすすめています。

クラウドストレージのデータ保管についてはGoogleドライブ、Dropboxなどと定額契約している人も多いでしょう。

定額サービスは仕事の分野に限りません。音楽の聴き放題(iTunesMusicやGooglePlayMusic、AmazonMusicUnlimitedなど)、雑誌の読み放題(dマガジンやビューン、楽天マガジンなど)、書籍の読み放題(KindleUnlimitedなど)、アニメや映画の見放題(dTV、Amazonプライムビデオ、Netflix、Huluなど)、オフの時間の楽しみの多くにもサブスク契約が広がっています。

利用した人はおわかりでしょうが、定額でいろんなサービスが使えるのは、使いこなす人ほど便利です。例えば私は、ビジネス雑誌を読むつもりでdマガジン(雑誌読み放題)を契約しましたが、「歴史人」とか「ムー」とか「週刊プロレス」とか「散歩の達人」とか、むしろビジネス誌以外のほうで課金の元を取っているような気がします。

先日、牛角が発表した「焼き肉定額食べ放題」がネットで話題になりました。定期券は月1.1万円するものの月3回以上通い続けることができれば元が取れるような設定で、リピーターを確保しようと狙っているのだそうです。

ところが、牛角サイドの想定以上の利用申し込みがあったようで、あっという間に新規募集停止となってしまったことがまたネットのネタとなっています。

下記ニュースによれば、通常の予約に支障がでる恐れがあるほど人気だったとか。

(FNNのニュースはこちら )

これをみて、「牛角は甘い見通しだ」と笑いの種としてしまうところですが、これは本当に甘い見通しなのでしょうか。実はそれでも会社側は儲かる可能性がある、としたらどうでしょうか。

サブスクは「スタート」ではなく「何ヶ月か後」にこそ、売り手側のメリットが出てくるビジネスモデルだからです。それは言い換えれば、個人にとっては「始めどき」より「止めどき」がサブスク契約の鍵、ということです。

サブスクは長い目で見てお店にメリット 「あなたが利用しないほど」メリットが増える

誰でもサブスクを契約してすぐは元を取るくらい使い倒します。雑誌読み放題にしろ音楽やアニメ配信にしろ、焼き肉にしろ、会費以上のサービスを最初の1カ月は獲得することでしょう。

数カ月は確実に、運営元のほうが損になります。しかし、どこかであなたには「飽き」が来ます。例えば雑誌読み放題やアニメ見放題を契約していても、永遠に見続けるわけにはいきませんから、いつかは気が抜けて利用率が下がるときがやってきます。

アプリの場合など、毎日起動しなくなると、そこから先は一気に利用率が下がってしまいがちです。ソシャゲのアプリなどで誰でも経験があるはずです。

毎日起動していたアプリが週一あるいはそれ以下の起動率になったり、利用時間が半分以下になった場合、今度はお店にとっては「サービス提供コスト<会費」という時期の到来です。

しかし、私たちはそのタイミングを見計らって解約をすることはあまりありません。解約は手間がかかって面倒であることが第1の理由。第2の理由は「いや、また使うので」と自分に言い訳してしまうことです。

ほとんど通わないスポーツジムの会費を払い続けるのとほぼ同じ理屈です。しかも、月会費が1000円以下だったりすると「まあこのままでいいでしょう」となります。

焼き肉定額食べ放題も、おそらく最初の数カ月は定額の2倍くらい食べる人が多くなります。最初は予約も取れないくらい人気になって大赤字です。しかし徐々に会費相当分くらいに利用を落とし、最後は月1回くらいしか顔を出さなくなるはずです。誰だって毎日焼き肉を食べ続けることはできないのでこれは当然です。

あなたが長く契約し、あまり利用しないほどにサブスクの運営元には利益が残るようになるわけです。

運営元は「始めさせる」ことに力を入れるので、あなたは「引き際」に意識を高める

利用率を考えると、最初の数カ月は運営側の赤字になる可能性が高いのがサブスクの傾向だったとしても、サービス提供側はしばし「初月利用無料」とか「最初の○カ月は100円のみ」のような割引をすることがあります。

NTTdocomoが提供するdTVは31日間無料を打ち出しています。KindleUnlimitedは何度か「最初の3カ月99円」などのプロモーションを行っています。こうしたお試し加入は「始めさせる」ことには大きな価値があると考えているからです。

仮に利用率と会費が逆転するとしても、長い目で見れば新規顧客を増やすことのほうが有意義というわけです。もちろん、利用が減ったから解約する人より、利用が減ってもずるずる継続する人のほうが多いということです。

個人としては、その逆を考えなければいけません。つまり、

・サブスクを気楽に始めてもいい

が、

・利用しなくなったらすぐにサブスクは解約しなければいけない

ということです。

人間心理の弱みをうまくついたサブスク契約 ときどき解約メンテをしよう

サブスクはお試しがあるし、解約ペナルティを設定しないことがほとんどです。2年縛りのようなものもまずありません。もしあなたが興味があったら、そしてプロモーションで割引があれば、サブスクはいろいろ試してみるといいでしょう。

しかし、サービスのクオリティが定額課金額に見合わないコスパだと判断したり、自分の利用率が下がってコスパが悪化したと判断した場合は、できるだけ早く解約手続きをしたほうがいいでしょう。

自分を振り返ってみても、Amazonプライムビデオを見られる環境下においてdアニメストアを同時契約していたりします。ごくまれにAmazonプライムでは視聴できないアニメがあったりするのですが、同時契約を続けることはあまり合理的ではありません。

dマガジンやKindleUnlimitedあたりは読まないときはまったくムダな課金でした。最近ようやく、元を取るくらいには読むようになったのですが、利用はしなくてもずるずる課金をする可能性も大いにあったところです。

モノの断捨離はよく議論されます。しかしこれからは「サブスクリプションの断捨離」を時々真剣に考えておいたほうがいいのではないかと思います。年に一度くらい、とにかく使わないものを一度止めるのです。やり過ぎるくらいでもいいでしょう。

もし「やっぱり再開したいな」と思ったら、多くのサブスク契約は再開にあたって「再入会金」は取らず、利用の再開が簡単に行えるからです。

まとめ

サブスクリプションサービスはとても便利です。ネットやITの親展により、所有しなくてもオンデマンドで利用できる時代になり、私たちは低価格で充実したサービスを得るチャンスを獲得しました。

しかし気楽に始めさせ、ずるずる長期契約させるのがサブスク契約の基本戦略です。これはなかなか人間心理をうまくついています。1カ月に一度も行かないスポーツジムを人はなかなか解約しないわけですから、月500~1000円のサービスを解約しない人が多いのは当たり前のことです。

サブスクが悪い、というわけではありません。しかし、このコラムを読んだ今日か今週末にでも、ムダなサービスはぜひ解約してみましょう。もしかしたら月何千円もの節約になり、その分貯金ができるかもしれません。

フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP

フィナンシャル・ウィズダム代表。お金と幸せについてまじめに考えるファイナンシャル・プランナー。「お金の知恵」を持つことが個人を守る力になると考え、投資教育家/年金教育家として執筆・講演を行っている。日経新聞電子版にて「人生を変えるマネーハック」を好評連載中のほかPRESIDENTオンライン、東洋経済オンラインなどWEB連載は14本。近著に「『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」「共働き夫婦お金の教科書」がある。Youtube「シャープなこんにゃくチャンネル」 https://www.youtube.com/@FPyam

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