グーグルに対する反トラスト法違反調査が大規模に
米国の州・地域の超党派連合による米グーグルに対する反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)調査が大規模になってきたと米ニュース専門局のCNBCなどが報じている。
調査に関わる人員やアドバイザーなどのスタッフを拡充し、調査対象の分野拡大する。米司法省との協力体制も強化すると、事情に詳しい関係者は話している。
大統領選挙のある年は、グーグルなどの大手テクノロジー企業に対する監視が厳しくなる。今年に入り、ドナルド・トランプ米大統領やエリザベス・ウォーレン上院議員といった共和、民主両党の最高レベルの人物からの攻撃が激しくなってきたという。
規模拡大し、役割を分担
これに先立つ昨年9月、テキサス州など全米50の州・地域の司法長官がグーグルに対し反トラスト法違反の疑いで調査を始めることを明らかにした。カリフォルニアとアラバマを除く48州とワシントンDC、自治領プエルトリコの超党派連合による合同調査をテキサス州のケン・パクストン司法長官が主導するというものだ。
この時の記者会見でパクストン氏は、ネット広告と消費者のデータ利用に関するグーグルの市場支配力を強調。グーグルは技術力と支配力を利用し、自社サービスを有利なものにして競争を阻害していると、非難していた。
その後、州の調査連合は、正式に調査を拡大することを決定。役割分担も決めた。グーグルのモバイルOS(オペレーティングシステム)「Android」なども調査することにし、Androidはユタ州とアイオワ州が担当することになった。アイオワ州のトム・ミラー司法長官は影響力を持つ人物で、1990年代の米マイクロソフト独禁法訴訟の調査に深く関わったという。
州の調査連合はこのほか、グーグルの検索サービスにおける著作権侵害などを非難して同社を2度提訴した、元ミシシッピ州司法長官のジム・フッド氏をアドバイザーとして起用すべく、協議中だという。
州と司法省が協力体制
そして、州の調査連合と米司法省は、「ネット広告」「検索」「Android」の3分野で協力体制を敷くことに合意した。両者はこれらグーグルの事業に関する情報共有を定期的に行っているという。
2月4日には、テキサス州のパクストン司法長官やユタ州のショーン・レイズ司法長官などの数人の州司法長官が司法省の高官と会談し、調査の役割分担などを話し合ったとCNBCは伝えている。
司法省はネット広告事業に照準
ウォールストリート・ジャーナルによると、先ごろ、司法省で反トラスト法部門のトップを務めていたマカン・デラヒム司法次官補が、グーグルに対する調査の担当を辞任した。
グーグルは、2007年にネット広告企業の米ダブルクリックを買収したが、この時にデラヒム氏はグーグルに顧問弁護士として雇われ、米連邦取引委員会(FTC)から承認を得るために助言をした。ダブルクリックはその後、グーグルの広告事業に重要な役割を果たすようになった。
デラヒム氏は、司法省の倫理局と利益相反の可能性について再検討し、同社に対する反トラスト法調査の担当から外れることにした。
CNBCによると、デラヒム氏の担当辞任のほぼ1カ月前に、司法省がダブルクリックとグーグルの広告技術事業に照準を合わせたと関係者が示唆していた。同省では、グーグルのネット広告に対する調査が先行しているものの、引き続き3事業すべてに注目していく構えだと関係者は話している。
- (このコラムは「JBpress」2020年2月11日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて再編集したものです)