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箱根駅伝で注目! 知る人ぞ知る「箱根温泉の共同浴場」3選

高橋一喜温泉ライター/編集者

1月2日、今年も箱根駅伝がスタートを切り、白熱した戦いが続く。なかでも手に汗握るのが、箱根路を駆け上がる第5区である。

箱根は日本を代表する観光地だ。なかでも箱根の急坂と名所を通過する5区のルートには豊富な温泉が湧出し、数々の名旅館が軒を連ねる。だが、そこには観光客のほとんどが知らない、地元の人に愛される共同浴場がひっそりと存在する。

温泉にも負けない熱いレースに感動したら、後日ゆっくりと激シブの共同浴場を訪ねてみてはいかがだろうか。華やかな箱根のイメージとは異なる一面を垣間見られるかもしれない。

弥坂湯(箱根湯本温泉)

駅伝の5区では箱根の玄関口・箱根湯本温泉を通過すると、本格的な山登りが始まる。

コースから外れて土産物屋が軒を連ねる賑やかな温泉街を横切り、早川にかかる橋を渡る。弥坂という急坂を登りきり、箱根旧街道にぶつかると、「弥坂湯」が見える。1951年(昭和26年)の開業以来、地元の人々を癒やしてきた共同浴場である。

いかにも共同浴場といった風情の建物は、いい具合に鄙びている。観光客の多くは、存在に気づくことなく、素通りしてしまうだろう。木をふんだんに使った番台も味わい深く、昭和の時代にタイムスリップしたかのようだ。

浴室の中央に、まん丸の湯船がぽつんとある。青く細かいタイルが敷き詰められた湯船は、絵になる美しさである。

透明な湯は、100%源泉かけ流し。たえず新しい湯が投入され、湯船からあふれ出ていく。泉質は、アルカリ性単純温泉。くせのないやさしい湯だが、ほんのりと温泉らしい匂いがする。箱根湯本では、湯を循環ろ過している旅館や温泉施設も少なくないが、弥坂湯では本物の湯が楽しめる。

姫之湯(大平台温泉)

5区の7キロメートル付近にあるヘアピンカーブで有名なのが大平台。急斜面をU字に曲がるカーブは、山に挑むランナーたちにとっては難所として知られる。

大平台も旅館などが並ぶ温泉地である。温泉が湧いたのは、昭和27年まで遡るが、施設自体はちょっとした旅館ともいえるほどの立派な建物で、清潔感もある。

地元客が中心で、浴室では世間話に花が咲いている。湯船は6~7人が入れる円形のタイル張り。透明の湯がものすごい勢いで注がれ、湯船からあふれ出ていく。こちらの源泉から、周辺の旅館に配湯されるほど湯量豊富なのだとか。

源泉は65度以上のため加水しているが、それでも43度以上はありそう。我慢して一気に入ると、肌がピリピリ。体がしびれる感覚。

平静を装っていたつもりだが、地元の方から「熱いでしょう?」と心配される始末。熱い湯船につかっては、湯船の外で涼むのを繰り返すのが、姫の湯のスタイルのようだ。このような地元の人との交流も共同浴場の魅力である。

太閤湯(宮ノ下温泉)

大平台を過ぎると、箱根のランドマークともいえる建物が姿を現す。明治11年(1878年)創業の富士屋ホテルである。

和洋折衷の建物の雰囲気も人気の秘訣。現在では箱根駅伝の中継地点としてもおなじみだが、かつてはチャップリンやヘレン・ケラー、ジョン・レノンとオノ・ヨーコ夫妻など、海外のVIPも宿泊した伝統あるホテルだ。

富士屋ホテルの目の前を走る国道1号線はいつも交通量が多いが、ほとんどの人はホテルに目を奪われる。しかし、実は富士屋ホテルと道路を挟んだ反対側に、小さな温泉がひっそりと佇んでいる。その名は「太閤湯」。

小さめの湯船には、透明な湯がなみなみと注がれ、激しくあふれ出す。特徴は源泉がとてつもなく熱いこと。83度もある。源泉の注ぎ口に手をあてると、やけどしそうなほど。

おそるおそる湯船に体を沈める。ちょっと歯を食いしばれば、なんとか入れるくらいの熱さ。3分も浸かっていると、たちまち汗がだらだらと流れ出す。だが、一度つかってしまえば極楽。あつ湯好きにおすすめの温泉である。

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3800超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)のほか、『有吉ゼミ』『ヒルナンデス!』『マツコ&有吉かりそめ天国』『ミヤネ屋』などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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