北朝鮮「重大実験」は液体燃料ロケットエンジン燃焼試験の可能性
12月8日、北朝鮮は西部の東倉里にある西海衛星発射場で12月7日に「重大実験」を行ったと発表しました。細かい説明はありませんでしたが発表主体は国防科学院なので兵器に関連したものであり、長距離弾道ミサイル用の新型ロケットエンジン燃焼試験だったと考えられます。
東倉里にある施設は衛星打ち上げロケット発射台と液体燃料ロケットエンジン燃焼試験棟です。なお固体燃料ロケットエンジンの製造と試験は東部の咸興にある施設で行われているので、今回の東倉里で行われた「重大実験」は固体燃料ではなく液体燃料ロケットエンジンの試験であった可能性が高いでしょう。
米ミドルベリー研究所の核兵器問題専門家ジェフリー・ルイス氏は民間商業衛星サービス「プラネット・ラボ」の衛星写真を用いて、東倉里の液体燃料ロケットエンジン燃焼試験棟の12月7日と12月8日の様子を見比べて、地面にロケット噴射跡が確認できることや前日までにあった車両やコンテナなどが消えていることを指摘しています。ここで12月7日にロケットエンジン燃焼試験が行われたのはほぼ間違いありません。
東倉里の液体燃料ロケットエンジン燃焼試験施設は山の斜面に垂直の試験棟が建設され、上から下に噴射して燃焼ガスを斜面に沿って横に逃がす方式です。一方、咸興の固体燃料ロケットエンジン燃焼試験施設は横置きにして噴射する方式です。液体燃料ロケット用の垂直試験棟に後から固体燃料ロケットモーターケースを組み込むのは構造上かなり難しい改造となり、秘密裏に行うことは考え難いと推測されます。
北朝鮮の液体燃料型長距離弾道ミサイル「火星15号」は既に射程の面では十分にアメリカの東海岸まで届きます。それでも新型液体燃料ロケットエンジンを試験したということは、小型高出力化を狙っている可能性があります。火星15号は車載移動式弾道ミサイルとしては世界最大の大きさで、移動発射車両は重野戦機動トラック型で9軸18輪の特別に大きなものを用いています。ロシアや中国の車載移動式弾道ミサイルでも最大の物は8軸16輪なので、同じくらいの大きさの移動発射車両に搭載できるように、大き過ぎる火星15号を小型化したい意図があるのかもしれません。
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