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きょう発売の「モンスターハンターライズ」は本編? カプコンに直撃してみた

河村鳴紘サブカル専門ライター
「モンスターハンターライズ」のゲーム画面

 カプコンの人気シリーズの新作「モンスターハンターライズ」が26日に世界同日発売されました。ヒットが確実視される同作ですが、一つの疑問があります。既にPS4などで発売された「モンスターハンター:ワールド」もありますが、どちらが本編シリーズでしょうか。

◇ナンバーリングこそ王道という“空気”

 「モンスターハンター(モンハン)」シリーズは、さまざまな武器を手に、最大4人が協力して巨大モンスターと戦うアクションゲームです。第1作は2004年に発売され、2008年に発売された「モンスターハンターポータブル 2nd G」(PSP)が国内でだけで400万本を超える大ヒットを飛ばして注目を集めるようになりました。2018年発売の「モンスターハンター:ワールド」(PS4やPCなど)は1680万本を出荷しており、世界的な人気作に成長しました。

 ニンテンドースイッチの世界累計出荷数は、「あつまれ どうぶつの森」の世界的大ヒットなどもあり約8000万台に膨れ上がりましたから、ビジネス的には絶好の機会といえます。カプコンに「ライズの計画本数は?」と質問すると「開示しておりません」という返事が返ってきました。とはいえ「ワールド」の実績がありますから世界で1000万本売れても驚きません。

 さて「ワールド」と「ライズ」、どちらが本編シリーズかを気にするのは、理由があります。人気ゲームは、「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー(FF)」シリーズのように、タイトルに数字を付けるナンバーリングこそ王道で、「本編」という“空気”があります。

 任天堂とソニーのゲーム機は、ゲーム市場の拡大で並立できる関係にはありますが、それでもお互いを意識するライバル関係にあるのは確かです。ゲームファンからすると「どちらにナンバーリングを出す?」というのは、人気タイトルがどちらのゲーム機に肩入れをするかを推し量る“指針”になるわけです。ですが「モンハン」の場合は、ナンバーリングが外れるようになり、どれが本編シリーズか不明瞭になっています。

◇ワールドとライズ 「どちらも本筋」

 そこでカプコンに「モンハンシリーズの『ワールド』と『ライズ』、本編シリーズはどちらですか」と尋ねました。

 同社の答えは「それぞれコンセプトこそ違うものの、どちらも本筋であると考えています」という答えでした。

 「その答えはずるい」と思う人もいるかもしれませんが、ビジネス的には実に合理的な考え方です。要するに「モンハン」のタイトルから数字を外すことで、本編シリーズを二つにする戦略が取れるようになったのです。どちらかに「肩入れ」をするのは、ビジネスの幅を狭くし、モンハンというブランドの広がりを押さえてしまいます。

 そもそも「ワールド」を展開したPS4やPCは、高性能を生かした豪華なグラフィックが持ち味です。一方のスイッチは携帯ゲーム機の要素もある通り、手軽さがポイントです。実際「ライズ」について、カプコンは「いつでも、どこでも、誰とでも、気軽に楽しめるモンスターハンターがコンセプトです」と説明しています。友達同士で持ち寄って楽しむ「モンハンポータブル」的な要素があるのは明白です。

 要するに「ワールド」も「ライズ」もそれぞれの特徴があり、「どちらが本編だ」と決めるのは、さほど意味がないように思えます。もちろん個人の好みはあるでしょうから、おのおののゲーマーが決めればよいことです。

◇新規層の獲得重要

 ゲームソフトのタイトルに数字を付ける「ナンバーリング」戦略は、昔であれば効果的でした。ヒットした人気シリーズの顧客をそのまま取り込めるメリットが大きかったのですね。ところがシリーズが重なると、どうしてもコア層向けのイメージが色濃くなります。それは新規層が入りづらくなることを意味し、出荷数も先細りするなどデメリットが目立つようになります。

 ナンバーリングの「リセット」は、出版業界では普通に行われています。マンガ「浦安鉄筋家族」シリーズやライトノベル「とある魔術の禁書目録」シリーズなどがそうですね。タイトルを変える理由について、担当編集に質問したことがありますが「巻数を重ねると、新規層が手に取りづらくなるから」だそうです。既存のファンも当然大事ですが、同様に新規層へのアプローチを続けるのも重要です。それを怠るとファンの先細りになるからです。

 特にゲームファンの間には、本編シリーズを“格上”、それ以外を“格下”に見るような空気が存在します。「ナンバーリング」を無効化しようとするカプコンの戦略は、5月発売の「バイオハザード ヴィレッジ」にも見え隠れしています。

 個人的には「モンハンポータブル」シリーズの血を色濃く受け継ぐように思える「ライズ」が、国内でどこまで売れるか注目しています。「あつまれ どうぶつの森」は国内だけで900万本以上(2020年12月末)を出荷しています。

 以前、PSPの「モンハンポータブル」シリーズで女子中学生がプレーしているのを見て「なぜ遊ぶの?」 と尋ねると、「気になる男の子と(ゲームのことで)話せるから」という予想しない答えが返ってきました。もちろんゲームの面白さが根底にあってこそなのは言うまでもありませんが。作り手でさえ予測できない動きがあるのがビジネスの面白いところですから、「ライズ」も、ぜひ世の中を驚かせてほしいところです。

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サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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