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中信兄弟(台湾)の2軍監督・林威助(元阪神タイガース)、就任1年目で優勝を飾る

土井麻由実フリーアナウンサー、フリーライター
愛弟子たちの手によって宙を舞う林威助監督(写真提供:中信兄弟)

■台湾球界で2軍監督に就任

昨年の引退試合での胴上げ(写真提供:中信兄弟)
昨年の引退試合での胴上げ(写真提供:中信兄弟)

 監督就任1年目にして見事、初優勝に輝いた。愛弟子たちの手によって空高く舞った指揮官は、「去年のほうが高かったですよ」と目尻を下げた。

 林 威助。日本でもお馴染みの野球人だ。日本の高校野球に憧れ、海を渡ってやってきた。福岡の柳川高校でその打撃が注目されて大阪の近畿大学に進んだ。2002年のドラフトで阪神タイガースに指名され、そこからの活躍は日本の野球ファンに広く知られている。

 チャンスでの勝負強さ、強烈な打球、飛距離などの打撃力のみならず、その愛くるしい笑顔やトーク、ファンへの優しい気遣いなども相まって、絶大な人気を誇った。

現役時代の林威助選手(写真提供:中信兄弟)
現役時代の林威助選手(写真提供:中信兄弟)

 2013年にタイガースとの契約が終了した後は、祖国・台湾に帰って中信兄弟の中心選手として錦を飾った。キャプテンも務め、チームからは揺るぎない信頼を寄せられた。

 「去年のほうが高かった」というのは、昨年の自身の引退試合での胴上げのことを示す。林選手は2017年限りで現役を引退した。幾多の故障と戦い、耐えてきたが、全身はもう悲鳴を上げていた。

今年、「台湾デー」で甲子園に帰ってきた(写真提供:中信兄弟)
今年、「台湾デー」で甲子園に帰ってきた(写真提供:中信兄弟)

 しかし指導者としての林氏の力量を、球団はよく知っていた。現役時代もチームのため、後輩のためを思って、ときには嫌われ役になっても苦言を呈することがあった。なにより日本で11年、台湾で4年、両国の野球を経験してきた。“台湾野球”に必要なもの、また足りないものを林氏はしっかりと把握しているのだ。

 そこで引退してすぐに2軍監督に任命されたのである。そしてその初年度に優勝。もちろん2軍は優勝することが第一目的ではない。1軍に何人もの優秀な選手を送り込むというもっとも重要な役目も、林監督はきっちりと果たした。

甲子園のファンに手を挙げて応える(写真提供:中信兄弟)
甲子園のファンに手を挙げて応える(写真提供:中信兄弟)

 そんな林監督に自身の「監督1年目」を振り返ってもらった。以前にも書いたが、林氏はかわいらしい顔とは裏腹に、その内側に「頑固オヤジ」を飼っている。こと野球に関しては怠惰なことは許さない。それは厳しく指導する。監督となれば、なおさらヒートアップするのは予想できた。

 まずは規則を作ったという。昔からあったファームのルールに、林監督独自のものも付け加えた。それが以下だ。

「中信兄弟 二軍守則」

1.「礼」を大事にする。

「ウォーミングアップをする前、みんなで一列に並んで礼をする。試合前も同じくベンチ前で礼をする。全員が一列にというのが大事」。

2.髪の毛や髭を染めること、タトゥーは禁止。

「多少の茶色くらいならいいけど…金髪なんかダメですよ(笑)」。

3.練習中、試合中のタバコは禁止。

「メジャーの選手がよく口に入れている噛みタバコも、グラウンドでは禁止している。グラウンドから出てからは自由だけど」。

4.ユニフォームのズボンの裾は膝の高さまで上げる。

「高校野球スタイルですね(笑)。ソックスを見せること」。

5.練習中、アンダーシャツのみは禁止。

「ユニフォームを着るか、練習用のTシャツを必ず着ること」。

6.必ず帽子は着用する。

「台湾はとにかく暑いから。暑さ対策という意味でね」。

7.コーチと話すときはサングラスを外す。

「当たり前でしょ!規則にするまでもないでしょ!!」

8.攻守交替のときはダラダラせず、キビキビ動く。

「全力疾走…まではいかなくても、80%以上の力で走ること」。

9.用具を運ぶ若手選手は、早めに集合する。

「そうしないと間に合わないからね」。

10.遅刻厳禁。

「これも当たり前でしょ!遅刻したらグラウンド10周させる。1周?400mくらいかな。でも何回もやるようじゃ、球団に報告します!」

11.靴を並べる。整理整頓、掃除をする。

「自分のものはベンチに置きっぱなしにせず、各自のロッカーにしまうように。グラウンドやベンチは常に美しく。態度もきちんとする」。

「台湾デー」でトークショー(撮影:筆者)
「台湾デー」でトークショー(撮影:筆者)

 これらは紙に記して選手たちに手渡し、目につくところに貼ってもあるという。「2軍の選手は当然だけど、1軍から降りてきた選手にも、2軍にいる間は守ってくれと言ってある」。

 徹底した鬼監督ぶりだが、林監督は表情を引き締めて言う。「でも全部、当たり前のことだから。まずこういうことがちゃんとできないと、野球もうまくならない」。日本での11年間が生きているようだ。

 そんな林威助氏が監督としてどんな1年目のシーズンを過ごしたのか。次号で詳しく明かしてもらう。

(続く⇒鬼監督・林威助が理想とする監督像とは・・・?

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フリーアナウンサー、フリーライター

CS放送「GAORA」「スカイA」の阪神タイガース野球中継番組「Tigersーai」で、ベンチリポーターとして携わったゲームは1000試合近く。2005年の阪神優勝時にはビールかけインタビューも!イベントやパーティーでのプロ野球選手、OBとのトークショーは数100本。サンケイスポーツで阪神タイガース関連のコラム「SMILE♡TIGERS」を連載中。かつては阪神タイガースの公式ホームページや公式携帯サイト、阪神電鉄の機関紙でも執筆。マイクでペンで、硬軟織り交ぜた熱い熱い情報を伝えています!!

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