新たな取締役で変わるOpenAIの組織図の力学 AGIの到来時期はすべて新・取締役が判断できる
2023年、OpenAIの退任劇は日々状況が変わりつつある。
2023年11月22日に、解任された、サム・アルトマンとグレッグ・ブロックマンが戻ったことにより、この騒動が解決となった。
気になるのは、結果としてクーデターを起こした張本人の元取締役のメンバーたちだ。
『私たちはもどってきた』とのグレッグ・ブロックマンのポストを、OpenAIの公式X.comがリポストしたことによって、元の鞘に収まった形となった。いや、取締役会の3人を追放という逆クーデターに成功した形となった。
■そもそものクーデターの原因は何だったのだろうか?
サム・アルトマン退任劇の理由として、批判的な論文を書いた取締役メンバーのヘレン・トナー氏の論文が原因という説が有力だ。
https://www.nytimes.com/2023/11/21/technology/openai-altman-board-fight.html
サム・アルトマンがヘレン・トナーの『人工知能と高価なシグナル』に関する論文を批判し、取締役会を解任しようとしたが、イリヤ・サツキヴァーも、ヘレン・トナー氏を支持し、結果として、トナーの『OpenAIの使命は『全人類に利益をもたらす人工知能を開発すること』であり、アルトマン氏を追放して会社がつぶれることがあったとしても、それは全人類の利益に一致する可能性がある』として、取締役会においてのアルトマン氏解任案が成立したそうだ。
■OpenAI社の従業員のほとんどが辞める宣告が、取締役会へ影響
本日、2023年11月24日時点で、大幅にOpenAI社のウェブサイトは変更が施されている。組織が変わったページを更新しているからだろう。利用規約の TOS 以外、何もない状態だ。
今回の『お家騒動』を終結へもたらしたのが、従業員たちのほとんどが、サムアルトマンとグレッグの復帰を望んだということだ。
2023/11/20日、取締役会あてへ書簡が送られた
そして、その書簡が送られた後、MicrosoftのCTOのケビン・スコットが、Microsoftでのポジションで報酬はOpenAIと変わらないと宣言したこともオープンAIの取締役にとっては究極の判断を迫られたこととなった…。
『OpenAIのパートナーへ:我々はあなたの嘆願書を拝見し、マイクロソフトの新しいAI研究所でサム・アルトマンと一緒に働きたいというあなたの希望に感謝しています。必要であれば、あなたの報酬に見合った、私たちのミッションを前進させる役割がマイクロソフトにあることを知っておいてください』
https://twitter.com/kevin_scott/status/1726971608706031670
■ストックオプションのないMicrosoftに行くよりは…
OpenAIの従業員側も、クーデター側の取締役会による運営では、800〜900億ドルと言われる評価額が下がり、自分たちの『ストックオプション』の権利行使の価値も同時に目減りすることも計算済みであることもあったのではないだろうか?
さらに、エンジニアたちの給与も破格値だ。その金額でMicrosoftでも継承されるのであればそれも悪くはない。しかし、『ストックオプション』を考えると、企業価値を下げる可能性のある取締役を追い出し、サムとグレッグを戻らせ、新たな取締役会を構築したほうがやりやすい。Microsoftにはそのオプションがないからだ。
■OpenAIの年俸は最低3,000万円から5,775万円
ちなみに、OpenAIの年俸は最低3,000万円から5,775万円まで
『ChatGPTチームは、OpenAIの技術を世界に広めるため、リサーチ、エンジニアリング、プロダクト、デザインの各分野で活動しています。
私たちは、この強力なツールが責任を持って安全に使用されることを保証しながら、導入から学び、AIの利点を広く普及させることを目指しています。私たちの革新的なツールは、地理的、経済的、またはプラットフォームの障壁を越えて、グローバルにアクセスできるようにすることを目指しています。私たちのコミットメントは、人々がどのように私たちの製品を使用するかについての厳密な洞察によって培われた、生活を向上させるためのAIの使用を促進することです』
■非営利団体が営利団体を配下にもつ組織体は、『取締役会』がすべて
https://openai.com/our-structure
こちらの図は、OpenAIの組織の階層図に筆者が加工したものである。
ポイントとしては、
1.最上位に取締役会がある。
2.取締役会は、非営利団体として、『OpenAI,Inc』が創設された。
3.『OpenAI,Inc』の傘下に『OpenAI nonProfit+従業員持株会+投資家』のホールディングスカンパニーが存在する。
4.そして最後に、営利企業の『OpenAI Glaoval LLC』が存在し、Microsoft社はそこの会社の49%のシェアホルダーとなる。
大きく4段階のレイヤー構造の組織体となっている。
そして今回は、Adam D'Angelo以外の取締役が刷新されるので、大きく組織体も変わる可能性が出てくる。
■新任の取締役はBret Taylor (Chair), Larry Summers, and Adam D'Angeloの3人
アルトマン氏、オープンAIのCEOに復帰へ 取締役会も再編
『サム・アルトマンがCEOとしてOpenAIに戻り、ブレット・テイラー(会長)、ラリー・サマーズ、アダム・ダンジェロからなる新たな初期役員を迎えることで基本合意に達しました。詳細について把握するために協力しあっています。ご迷惑をおかけしました』
2023年11月22日
新取締役会のメンバーは、
アダム・ディアンジェロ氏(39)が留任
元SalesforceのCEOで取締役会長に就任するブレット・テイラー氏(43)と
経済学者のラリー・サマーズ氏(68)元・米財務長官が新たに加わった。
つまり、イリヤ、ターシャ、ヘレンの3人が辞任するということとなった。
アダム・ディアンジェロ氏が2023年11月21日にこの記事をリポストをしていた。
https://twitter.com/adamdangelo
『アダム・ディアンジェロとは長い付き合いで、しばらく話をしていないが、彼が気が狂ったとか、特集が重なったことで執念深くなったとか、そういう噂は間違っていると思う。もっと情報が出るまで判断は控えた方がいいだろう。』
そして、サム・アルトマンもこのようなコメントをポストしている。
『アダム・ダンジェロと素晴らしい数時間を過ごした。私たちの家族からあなたの家族へ、幸せな感謝祭を!』と、新たな取締役会との門出に、久しぶりの安堵の感謝祭を迎えていることだろう。
■今後が気になる、OpenAI社の非営利組織と営利組織との構造変化
非営利組織が営利組織の上位階層にある現在のOpenAI社の構造であるが、ウェブサイトも消されてしまったので、過去の解説をもとに、それがどう変わるのかをふくめて、階層構造を説明しておきたい。
ヘレントナーやイリヤ・サツキヴァーも本当に、前述の『OpenAIの使命は『全人類に利益をもたらす人工知能を開発すること』であり、アルトマン氏を追放して会社がつぶれることがあったとしても、それは全人類の利益に一致する可能性がある』のであれば、従業員をすべてMicrosoftに転出させても、取締役会を存続させたはずである。それが、すんなりと取締役会辞任を決意させたのは何だったのだろうか? 構造は、OpenAIのトップ構造で全人類の利益を優先できたはずだ。
結局は辞任することの個人的なメリットで動いたとしか思えない。
Googleの初期コンセプトの『Don't be evil(邪悪になるな)』と同様、広告を嫌い続けながらも世界最大の広告会社となったGoogleの後を追うことになりそうだ。
ただ、Googleと違うのは、『AGI』を超えた瞬間のMicrosoftとの停止のルールも変わるとすると、映画『ターミネイター2』の『サイバーダイン社』になる可能性も出てくることだけは考えておく必要がある。
新取締役のラリー・サマーズはクリントン政権時の財務長官、ハーバード大学学長、オバマ政権時の国家経済会議委員長でワシントンDC方面でも顔が効くからだ。
■OpenAI の『Our structure』
取締役会が刷新されることにより、第四『人類の利益のために非営利団体に還元』第五の『AGIに達したかどうかは理事会が決定』のストラクチャーが大きく変わることとなる。
そう、すべて新たな取締役会が決定できることとなったのだ。
通常、投資家は金銭的リターンを求めるものですが、私たちは投資家の動機と私たちの使命を一致させる道を見出しました。私たちは、いくつかの重要な経済的およびガバナンスの規定によって、このイノベーションを達成しました
■第一に、営利目的の子会社はOpenAIの非営利団体によって完全にコントロールされます。第一に、営利目的の子会社はOpenAI Nonprofitによって完全にコントロールされます。NPOは、営利目的の子会社をコントロールし統治する権限を持つマネージャー企業体(OpenAI GP LLC)を完全に所有しコントロールすることで、これを実現しました。
■第二に、理事会は非営利団体の理事会であることに変わりはないため、各理事はその使命である広範な利益をもたらす安全なAGIを促進するために受託者としての義務を果たさなければなりません。営利目的の子会社は、利益を上げ、分配することが許されているが、この使命に従わなければならない。非営利組織の主な受益者は人類であり、OpenAIの投資家ではありません。
■第三に、理事会の過半数は独立性を保っている。独立取締役はOPEN AIの株式を保有していない。OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏でさえ、直接株式を保有していない。彼の唯一の関心は、彼がフルタイムになる前にOpenAIに少額の投資をしたY Combinatorの投資ファンドを通じた間接的なものである。
■第四に、マイクロソフトを含む投資家と従業員に配分される利益には上限がある。上限を超えて生み出されたすべての残余価値は、人類の利益のために非営利団体に還元される。
■第五に、AGIに達したかどうかは理事会が決定する。繰り返しになるが、AGIとは、経済的に価値のある仕事において人間を凌駕する高度に自律的なシステムを意味する。このようなシステムは、AGI以前の技術にのみ適用されるマイクロソフトとのIPライセンスやその他の商業条件から除外される。
※理事会と取締役会は同等の意味
The structure in more detail
While investors typically seek financial returns, we saw a path to aligning their motives with our mission. We achieved this innovation with a few key economic and governance provisions:
■First, the for-profit subsidiary is fully controlled by the OpenAI Nonprofit. We enacted this by having the Nonprofit wholly own and control a manager entity (OpenAI GP LLC) that has the power to control and govern the for-profit subsidiary.
■Second, because the board is still the board of a Nonprofit, each director must perform their fiduciary duties in furtherance of its mission—safe AGI that is broadly beneficial. While the for-profit subsidiary is permitted to make and distribute profit, it is subject to this mission. The Nonprofit’s principal beneficiary is humanity, not OpenAI investors.
■Third, the board remains majority independent. Independent directors do not hold equity in OpenAI. Even OpenAI’s CEO, Sam Altman, does not hold equity directly. His only interest is indirectly through a Y Combinator investment fund that made a small investment in OpenAI before he was full-time.
■Fourth, profit allocated to investors and employees, including Microsoft, is capped. All residual value created above and beyond the cap will be returned to the Nonprofit for the benefit of humanity.
■Fifth, the board determines when we've attained AGI. Again, by AGI we mean a highly autonomous system that outperforms humans at most economically valuable work. Such a system is excluded from IP licenses and other commercial terms with Microsoft, which only apply to pre-AGI technology.