はしか、全世界で流行:98カ国で前年より増加、ユニセフが報告
ユニセフ(国連児童基金)は2019年3月1日、全世界ではしかの流行が警戒すべき高いレベルで急増していることを明らかにした。増加数の74%が10カ国に集中し、過去にはしか根絶を宣言した国にも拡大していると警鐘を鳴らした。
ユニセフによると世界の98カ国が2018年のはしか症例数が2017年と比較して増加したと報告。はしかは予防可能であるものの死に至る可能性もある。2017年と比べて2018年のはしかの症例数が最も増えたのはウクライナ、フィリピン、ブラジル。ウクライナだけでも2018年に3万5120件のはしかの症例が報告されている。
はしかの感染力は、エボラ出血熱、結核やインフルエンザよりも高く、感染者がいた部屋では、感染者がいなくなったあとも最大2時間も他者が感染する可能性が続く。空気感染により呼吸器に感染し、栄養不良の子どもたちや予防接種を受ける前の新生児の命を奪う。はしかに感染すると特定の治療方法がないため、子どもたちにとって予防接種が命を救う手段になっている。
予防接種と啓発活動の必要性訴える
ウクライナでは、ユニセフは現在実施中の全国での定期予防接種の前倒しおよびワクチンに対する躊躇への取り組みに加え、2017年から30人の命を奪った最近の集団感染を止めるための支援を行っている。ウクライナの保健省はユニセフと協力して2月に、最も感染が深刻な西部ウクライナのリヴィウ州の学校やクリニックで予防接種強化を開始。
フィリピンでは、政府、ユニセフおよびパートナー団体が協力して、17地域の900万人の子どもたちを対象にはしかの予防接種キャンペーンを実施。キャンペーンは、ソーシャルメディア(SNS)を活用して両親や保健員に対する予防接種の奨励を計画。
ブラジルでは、2018年8月から9月にかけて、政府による5歳未満児1100万人以上を対象としたポリオとはしかの予防接種キャンペーンが実施された。ユニセフは予防接種を受けるよう啓発活動を行い、ベネズエラ人移民の仮設住居で活動する保健モニター員に研修を実施。
イエメンでは、数年におよぶ紛争が原因ではしかの集団感染が発生し、2月には地方当局が、ユニセフ、WHO(世界保健機関)、GAVI アライアンスの支援を受けて、1150万人以上の子どもに予防接種を実施。
マダガスカルでは、2018年9月3日から2019年2月21日までの間に、7万6871人がはしかに感染し、928人が死亡。死亡者の大半は子どもだった。政府はユニセフと協力し、全114地区を対象とした予防接種キャンペーンを1月に開始し、25地区の子ども200万人以上が予防接種を受けた。2月には子ども140万人が予防接種を受け、3月には新たに390万人が受ける予定。
先進国でもはしかは増加している。アメリカでは、2018年のはしかの症例が791件と、2017年と比べて6倍に。最近では、ニューヨーク州とワシントン州で集団感染が発生している。またフランスでもはしかが増加している。
ユニセフははしかと闘うために、各国政府、保健従事者に対して、病気の根絶のために次の行動をとるよう緊急に呼びかけている。
・ワクチンが安全かつ効果的で、子どもの命を守るものだということを理解すること
・集団感染が発生している間は、生後6カ月から5歳までのすべての子どもたちに予防接種をすること
・保健員が質の高いサービスを提供できるように研修し、必要な機材を提供すること
・命を守るすべてのワクチンを届けるために、予防接種プログラムを強化すること
ユニセフ事務局長ヘンリエッタ・フォア氏は 「はしかの増加は私たちへの警鐘です。この感染力の高い病気に対する、安全で、効果的で、安価なワクチンがあります。ワクチンはこの20年間、毎年百万人近くの人々の命を守ってきました。この流行は一夜にして起こったわけではありません。現在の深刻な流行が2018年に始まっていたように、今日行動しなければ、明日、子どもたちに悲惨な結果を招くことになります。はしかは感染する病気ですが、多くの場合、真の感染は、誤った情報、不信感や油断です。私たちはすべての子どもたちに安全に予防接種を受けさせるために、すべての親に対して正しい情報を伝えるためのさらなる努力に努めなければなりません」と語った。