イスラエル SNSに拡散されている「ホロコースト否定」に対抗「#TruthShinesBright」
SNSには反ユダヤ主義の投稿が多数だが発覚は難しい
第2次世界大戦時にナチスドイツによって約600万人のユダヤ人が殺害された、いわゆるホロコースト。イスラエルにはホロコースト犠牲者を追悼したヤド・バシェムという博物館がある。
ヤド・バシェムには約490万人のホロコースト犠牲者のデータベースがあり、それらは世界中からネット経由で閲覧することもできる。約600万人のユダヤ人が殺害されたが、残りの110万人は名前が判明していない。第2次世界大戦が終結して約80年が経過し、ホロコースト生存者の高齢化が進んできた。生存者が心身ともに健康なうちにホロコースト時代の経験や記憶を証言として動画で録画してネットで世界中から視聴してもらう「記憶のデジタル化」が進められている。
そのヤド・バシェムが2024年12月にホロコースト否定と戦っていき、ホロコーストの記憶を後世に伝えていくための「#TruthShinesBright」(真実に光をあてる)キャンペーンをスタートした。現在でも欧米やアラブ諸国では反ユダヤ主義が根強く「ホロコーストはなかった」「ユダヤ人はそんなに殺されていない」といったホロコースト否定論者が多く、そのようなホロコースト否定に関する投稿はネットやSNSにも多く、あっという間に拡散されている。特に若い人たちはSNSでのホロコースト否定の情報を鵜呑みにしてしまう傾向が強い。日本人の目には止まりにくいかもしれないが、SNSにはホロコースト否定に関する誤情報、フェイクニュースが散乱している。今回、ヤド・バシェムが制作したキャンペーン動画でもSNSによる拡散を懸念しているところから始まっている。
特にSNSはエコーチェンバーの影響で、反ユダヤ主義的な投稿をするフォロワーがいて、投稿を見た人には反ユダヤ主義の投稿がタイムラインに流れやすくなっている。ホロコースト否定に関する投稿が表示されると似たようなホロコースト否定や反ユダヤ主義的な投稿が大量に表示されてしまい、洗脳されてしまう傾向が強い。
FacebookやX、インスタグラムなどはホロコースト否定や民族憎悪に関する投稿は禁止されており、投稿が発覚すると削除される。だが、反ユダヤ主義やホロコースト否定の投稿は機械的には発覚しにくいような隠語や仲間内でしかわからない言葉で書かれていることがほとんどで、発覚しにくく削除されないものも多い。
戦後約80年が経ち、ホロコーストの生存者らも高齢化が進んできている。ホロコーストの正しい歴史を若者に知ってもらうために「#TruthShinesBright」のハッシュタグをつけてSNSでホロコーストの正しい歴史を伝えていこうと呼びかけている。
ホロコースト生存者は高齢化が進み、ホロコーストを体験した人たちは年々減少している。「ホロコーストは当時、実際にあった」と証言できる生存者らがいなくなると、「ホロコーストはなかった」という"ホロコースト否定論"の投稿や情報が世界中に蔓延することによって「ホロコーストはなかった」という虚構がいつの間にか事実になってしまいかねない。いわゆる歴史修正主義だ。
過激な投稿によるインプレッション増・再生回数増は収入源でやめられない
さらに、「ホロコーストなんてなかった」、「ホロコーストはユダヤ人のでっち上げだ」という過激で刺激的な偽情報やフェイクニュース、反ユダヤ主義のような特定民族を侮蔑するような内容ほどSNSでは、多くの人が事実確認もしないで、面白がって興味本位と他人に伝えたいという欲求で拡散してしまう。そのような反ユダヤ主義やヘイトの投稿を自身のSNSのタイムラインで次々と目にすると、いつの間にか「イスラエルが一方的に悪い」といった反ユダヤ主義的な思想になってしまうこともある。
過激で刺激的な偽情報、陰謀論、フェイクニュースは拡散されやすいため、インプレッション数が上がったり、再生回数が増えたりするので発信者の収益につながる。つまり、ネット上で反ユダヤ主義の発言を積極的にしている人の中には、実は反ユダヤ主義的な思想を持っていなかったとしても、反ユダヤ主義やホロコースト否定に関する過激な内容の発信が収入につながるのでやめられないという人もいる。
▼ヤド・バシェムが制作したキャンペーン動画