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恋愛がうまくいくたった1つのきっかけ「心理学を超える心理学」

ひとみしょう哲学者・作家・心理コーチ

原稿料ほしさに「ハウツー」をでっちあげては数々のメディアにそれっぽいことを書いてきた私が言うのもなんですが、実は恋愛というのは、誰かと一緒に何かをすることによって進展するものです。したがって、マッチングアプリで恋人を探してもうまくいかないのは当たり前です。なぜなら、マッチングアプリでデータ上マッチした相手とはまだ何もしていないからです。そんな状態で駅で待ち合わせてご飯を食べに行っても、メシがうまいはずがない。

それよりか大学生であれば、同じゼミの仲間として共に汗を流しつつ研究に励むとか、社会人であれば同じプロジェクトに関わって共にしんどい思いをするとか、そういったことをしたほうが恋愛に発展しやすいのです。

しかしそれでも、恋愛がうまくいかない人もきっと多いでしょう。そこで今回は、恋愛がうまくいくきっかけについてお話したいと思います。

人生を回しているものの正体

人生というものは予想外のことがガソリンとなって回っています。「まさかこんなことが起こるなんて思ってもみなかった」というようなことが、あなたの人生を回してくれているのです。

人生の一部である恋愛も同じです。一生懸命相手の年収や勤務先、学歴を調べ上げたところでどうにもならないのが恋愛です。それより、たまたま新幹線の隣の席に座った相手となぜか意気投合し、名古屋駅で降りてひつまぶしを一緒に食べた方がはるかに良い。

今の世の中は予測不能な事態を徹底的に排除しようとします。バスが3分遅れただけで怒る人がいるくらいですから、バスだって「安全をみて」便数を減らすわけです。人間ドックに行けば体中の状況を数値化され、少しでも異常が認められたら「再検査しましょう」と言われます。それがたとえ正常の範囲内における異常値であったとしてもです。

そのような社会からは言葉にできないものが捨象されます。反対からいえば、私たちは言葉や数字にできるものだけに囲まれて生きています。それが現代社会です。

心理学の業務外のこと

しかし恋愛は、完全に言葉や数字に置き換えることができない営為です。なぜその人のことを好きになったのか? 誰も十全に説明できません。それは心の不思議といっても過言ではないでしょう。

心というものは心理学で説明可能だと考える人が多いようですが、心理学はなぜある人のことを好きになったのかを完全に説明しません。そこを誤解している高校生が多いからか、大学のオープンキャンパスでは心理学の先生が心理学と哲学の違いについて説くことがあるそうです。

ある脳内物質が脳のある部位に働きかけた結果好きになったのだというような説明を、心理学はします。では、なぜその人を眼前にした時、ある脳内物質が出てくるのか? これを心理学は説明しません。それは心理学が悪いのではなく、そもそも心理学の業務外のことだからです。

恋愛の真実、実存の真実

その業務は実は、哲学が担っています。「AだからB、ゆえにC」というガチガチのロジックで固められた哲学もありますが、他方で、祈りとか思いといった、その発生事由がよく分からず、かつ完全に言葉や数字にできないものを対象とした哲学もあります。

なぜかはわからないけど、ある日ある時、あることが起こり、その結果、なぜか分からないけれどその人のことを好きになり、やがてあることをきっかけになぜか結婚し、その後たくさん喧嘩もしたけれどなぜか、ずっと結婚生活が続いているのよね。こういった関係のうちに、恋愛の真実、ひいては実存の真実があります。

哲学者・作家・心理コーチ

8歳から「なんか寂しいとは何か」について考えはじめる。独学で哲学することに限界を感じ、42歳で大学の哲学科に入学。キルケゴール哲学に出合い「なんか寂しいとは何か」という問いの答えを発見する。その結果、在学中に哲学エッセイ『自分を愛する方法』『希望を生みだす方法』(ともに玄文社)、小説『鈴虫』が出版された。46歳、特待生&首席で卒業。卒業後、中島義道先生主宰の「哲学塾カント」に入塾。キルケゴールなどの哲学を中島義道先生に、ジャック・ラカンとメルロー=ポンティの思想を福田肇先生に教わる(現在も教わっている)。いくつかの学会に所属。人見アカデミーと人見読解塾を主宰している。

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