なぜレアルの“本命”はエムバペなのか?ヴィニシウス 、ベンゼマ、アセンシオとの共存の可能性。
それは、数年にわたるプロジェクトだ。
レアル・マドリーがパリ・サンジェルマンに所属するキリアン・エムバペを狙っているのは、もはや周知の事実だろう。マドリーとしては、問題は加入が今冬になるのか、次の夏になるのか、だ。
■エムバペの契約期間
エムバペとパリSGの契約は2022年夏までだ。契約期間が残り半年を切り、他クラブとの自由交渉が可能になる。一方で、パリSGの契約延長の可能性が潰えたわけではない。
「エムバペが残留を決断したら、そのようになる。それは我々の希望でもある」と語るのはスポーツディレクターのレオナルドだ。
「複雑な状況だ。彼のような選手には、ずっと残って欲しいと思うものだからね。しかし、彼の立場をリスペクトしなければいけない。そして、まだ契約延長の可能性はあると信じている」
マドリーのエムバペに対する関心は、いまに始まったことではない。
最初に獲得に迫ったのは2017年夏だ。18歳の若さで、モナコでブレイクしたエムバペのポテンシャルをフロレンティーノ・ペレス会長は確信していた。スペイン紙『マルカ』では当時、移籍金1億8000万ユーロ(約234億円)で合意に達したと報道されている。
その頃のマドリーは「BBC」の全盛期だった。カリム・ベンゼマ、ガレス・ベイル、クリスティアーノ・ロナウドの3トップが攻撃の中心となり、そこにイスコを加えたポジション争いが激化していた。2015−16シーズン、16−17シーズン、17−18シーズンとチャンピオンズリーグ3連覇を成し遂げたチームで居場所を確保するのは至難の業だった。
そして、エムバペは新天地にパリを選んだ。パリのオファーはマドリーと同額で、なおかつエムバペの年俸はモナコ時代に比べて倍になった。加えて「新たな相棒」としてバルセロナからのネイマールの加入が決まっていた。
さらに遡れば、エムバペは14歳の時に初めてマドリーの練習場を訪れている。
彼のアイドルはクリスティアーノ・ロナウドだった。そのクリスティアーノに会い、かつフランスの英雄であるジネディーヌ・ジダンが彼を迎えた。心が動かないはずはない。
■エムバペの適応
気になるのは、エムバペの適応である。
エムバペのベストポジションは左ウィングだろう。スピード、ドリブル、得点力、いずれも一級品だが、右利きのエムバペが左サイドから内側に入ってくる時に最も危険なシーンが生まれる。ただ、今季のマドリーでは、ヴィニシウス・ジュニオールが絶好調だ。課題だった決定力が改善され、ベンゼマとのコンビネーションにも磨きがかかっている。25試合12得点9アシストという数字がそれを証明している。
過去には、ジダン前監督がヴィニシウスを右ウィングで試していた。しかし、これは機能しなかった。となると、右にエムバペ、中央にベンゼマ、左にヴィニシウス の3トップが理想になる。ロドリゴ・ゴエス、マルコ・アセンシオ、エデン・アザールらはローテーションで起用されるだろう。アセンシオに関しては、インサイドハーフにコンバートされる可能性もあり、そうなればマドリーの戦術のバリエーションは広がる。
アンチェロッティ監督がトップレベルで指揮を執り始めたのは1996年だ。世界最高のリーグだったセリエAで、パルマを率いた。パルマではリリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ディノ・バッジョ、ファビオ・カンナバーロ、エルナン・クレスポ、ジャンルイジ・ブッフォンと錚々たるメンバーをまとめ上げた。
以降、ユヴェントス、ミラン、チェルシー、パリSG、マドリー、バイエルン・ミュンヘンと複数のビッグクラブで監督を務めてきた。選手マネジマントには定評があり、戦術眼も高い。アンチェロッティなら、エムバペをうまく嵌められるはずだ。
一方、レオナルドが語ったように、パリSGはエムバペの契約更新を諦めていない。
エムバペのマドリー移籍は決まったわけではない。残り半年とはいえ、どんでん返しがあるのが欧州のフットボールシーンであり移籍市場だ。どのような結末になるのかーー。最後まで、目が離せない。