【《ボロフェスタ》が京都で愛される理由】後編~音楽がそこにある日常から未知なる出会いへ
いよいよ今日10月26日から28日まで開催される《ボロフェスタ 2018》。普段は比較的閑静な、御所西エリアにあるKBSホールに、出演者、オーディエンス、スタッフが賑やかに入り乱れる3日間。だが、今や京都の秋の風物詩ともなったこの音楽フェスを、主催者の一人、西村雅之氏は「年に一度のお祭りではなく、日常の延長線上にある」と冷静に断言する。逆に言えば、それは町中で日頃から大小様々な場所でライヴやイベントが開催され、京都がちょっとした音楽の町となっていることの証。普段は二条城近くにある人気ライヴ・ハウス《nano》の店長をつとめ、“モグラ”の愛称で慕われる西村氏だからこその説得力がある。(西村雅之氏以外の写真はボロフェスタ提供)
西村雅之氏が語る《ボロフェスタ》前編記事
【《ボロフェスタ》が京都で愛される理由】前編~音楽が日々の生活と地続きであることの豊かさ
https://news.yahoo.co.jp/byline/shino-okamura/20180913-00096764/
フード出店も今年は《ボロフェスタ》プロデュース
とはいえ、おそらくこの記事が公開される頃は西村氏は会場で汗だくになって最後の準備をしていることだろう。毎年、初日にオープニングに登場し開催宣言をする西村氏。始まってしまえば、場内にいるオーディエンスに気軽に声をかけ、時には一緒にふざけ合って場を盛り上げていく。西村氏自身がさしずめお祭り番長のような役割も担っていることに気づくだろう。だが、一方でインカムでスタッフと密に連絡をとり、搬入搬出に不備がないかを確認、公演自体の進行具合のチェックも怠らない。加えて、西村氏自身、会場外の物販コーナー、飲食出店もまめに覗いている様子が毎年見られるが、特に今年はその屋外の飲食ブース《KBS食堂 produced by borofesta》を楽しみにしていてほしいと太鼓判を押す。
「今年はフード出店を《KBS食堂》としてこちらで全部選んでいるんです。主催者が出てほしいと思う出演者に声をかけるのと同じで、飲食も《ボロフェスタ》ならではの店をこちらから声をかけようかと。これ、愛知県で毎年開催されている《森、道、市場》の様子や話を聞いて改めて思ったんですけど、あのフェスって音楽ありきじゃなくて、本当に市場のように様々なモノや食べ物飲み物の店が集まっているでしょ? あれすごくいいなって思うんです。で、実際、京都には今や全国人気になった《マドラグ》のような店もあって、プレイベントの《ナノボロフェスタ》では会場としても貸してくれている。だったら、フード出店もそれだけで楽しめるようにこちらでオススメの店を集めようと思って。美味しい店を探して出てもらうんじゃなくて、《マドラグ》の食事が美味しくて僕ら大好きだから出てもらうってことなんです」(西村氏)
今年のフード出店は、今はなき《コロナ》の玉子サンドイッチのレシピを受け継いだその《喫茶マドラグ》のほか、ライヴ・ハウス《nano》でいつもニコニコとドリンクをサーブしてくれる《まーこおばちゃんのドライカレー》、ザ・シックスブリッツの西島衛による《Cafe&BAR 大丈夫》、京都の店を中心に美味しいパンを集めた《PAINLOT》など多数というわけではないが、あくまで馴染みの“名店”の味が揃う。こうした飲食ブースもまた、《ボロフェスタ》が京都の音楽の現場の延長線上にあることを物語っていると言っていい。
今年のオリジナルTシャツは古着店とのコラボ商品
「あと今年は古着屋さんの《SPINNS》がコラボレーションしませんか? と声をかけてきてくれて。初めてその《SPINNS》が《ボロフェスタ》オリジナルTシャルを作ってくれたんですけど、これをデザインしてくれたのがKONCOSの古川太一くん。KONCOSは京都のバンドじゃないですけど、《ボロフェスタ》とは長く縁のあるバンド。すごくいいデザインになっていると思うのでぜひチェックしてほしいですね。それから、毎年、外の駐車場のところで、綱引きや玉入れ、餅つきなんかをやってるんですけど……そうそう、餅つきをやった年は、くるりの岸田繁さんも参加してくれました。今年も何かきっとやると思いますので、演奏を見るだけじゃなくて会場外にも出て楽しんでほしいですね」(西村氏)
新たな出会いや繋がりを求めてより開かれたフェスへ
確かに《ボロフェスタ》はこのように大学の文化祭さながらのハンドメイドの良さがある。イベントの即出しレポも裏でPCに向き合いながら作業するボランティア・スタッフたちの仕事だ。だが、ともすれば身内でかたまってしまって見えがちのこうした繋がりに対して、西村氏は一定の距離をとり、さらに広げていくことも忘れていない。実際、自転車でどこでも気軽に行けてしまう狭い京都市内だけでも様々なシーンがあり、クリエイター、音楽家たちがそれぞれ独自に活動をしている。京都生まれ京都育ち京都の大学出身の西村氏自身、まだまだ知らない音楽、新しい試みを見せてくれる未来の同志たちに興味津々だ。
「《ボロフェスタ》にも未知なる出会いがもっとあるといいですよね。これからはミニ・シアター…例えば《立誠シネマ》から移転し名前を改めた《出町座》、《ホホホ座》、あとファッション、アパレル関係の人たちともこれから合流していければと考えているんです。あと、同じ音楽界隈でも、例えば錦林車庫前に2年前にできた空間現代が運営するライヴ・ハウスの《外》、あるいはハードコア・パンク界隈のバンドとももっとコミットしていければと考えています。それがこれからの課題であり、次のテーマかもしれません。でも、まあとりあえず始まってしまえば、お祭りですよね。今年は自然災害も多くて、関西でも台風や地震でまだ復興していない場所があると思います。中止になったフェスもありますよね。でも、せっかくやるんだから、いろいろあるやろうけど、たまにはちょっと遊びにこいや!みたいな気持ちでいます。普段はいろいろあるやろうけど、ここに来たら騒いで踊っといたらええねん!てな感じですね(笑)」(西村氏)
初日はMOROHA、fox capture plan、折坂悠太、地元京都からはCrispy Camera Clubやベランダらが、2日目はtofubeats、Polaris、ミツメ、京都からはHomecomingsや岡崎体育らが、最終日にはサニーデイ・サービス、在日ファンク、BiSH、地元の台風クラブや本日休演らがそれぞれ出演する。音楽の町としての京都の一端を支える《ボロフェスタ》の現在を今年も見届けたい。
前編記事
【《ボロフェスタ》が京都で愛される理由】前編~音楽が日々の生活と地続きであることの豊かさ
https://news.yahoo.co.jp/byline/shino-okamura/20180913-00096764/