年間600万円分もの食品を捨てていた大手コンビニ、食品ロス減らし年400万利益を増やした対策とは?
世界から2周3周遅れの日本で食品ロスを減らし利益を増やす一つの策とは?
記事を読んでいる方からメールが届いた。欧州諸国は賞味期限切れスーパーを立ち上げるなど、食品ロス=悪 として対処する動きが活発化しているが、日本の食品小売業界ではコンビニ中心にまだまだ積極的な対応ができていない、という内容だ。
この方は、日本の食品小売業をより良くするための業務に就いておられる。
そんな中、ある大手コンビニエンスストア加盟店で、年間400万円、利益を増やしたことを教えて頂いた。
その対策をする前は、月間で最大50万円分の食品(年間で600万円の食品)を廃棄していた。
対策を講じた後は、月間での廃棄は17万円分(年間でおよそ200万円の廃棄)にまで改善された。
年間にすると、その差、つまり、捨てるのを防いだ金額は、およそ400万円。
その店が行なった対策のうち、主なものを5つ挙げてみる。
その1:おしぼりは希望者のみに渡す
多くの人が知らないのは、大手コンビニで渡されるおしぼりや割り箸、スプーン、フォーク、レジ袋などは、加盟店主(オーナー)が自腹で購入していること。トイレットペーパーも、店でオーナーが購入している。すべてが経営コストだ。何も買わずにトイレだけ使っていく客も多いと、終日データをとったオーナーさんから伺った。
トイレを汚されたあとは、オーナーやアルバイトなど、店で働いている人が掃除する。
海外諸国の多くでは、街のトイレは基本的に有償だ。現金、あるいはクレジットカードなどを使い、使用料を支払って使う。
ところが日本のコンビニは無償。
本業と並行して行なっているというのは、果たして適切な対応なのだろうか?
昨今では、プラスチック問題で、レジ袋などの必要性が議論されている。
この店では、おしぼりは、基本的に渡さないことにし、その理由を掲示することにした。
その2:当日に消費期限が切れるパンを半額で販売
この店では、消費期限が当日に迫った食品(パン)を、見切り(値引き)販売している。
筆者がこれまで全国のコンビニオーナー50名近くに取材した中で、当日に消費期限が来るパンを販売している店は、とても少ない。近づいていても、翌日。多いと、3種類の鮮度(期限)を示すパンが置いてある(翌日、翌々日、3日後)。
その3:弁当・おにぎり・麺類売り場に「もったいないコーナー」を設置
弁当やおにぎり、麺類を販売するところに「もったいないコーナー」を設置し、消費期限の近づいたものを見切り(値引き)販売している。
全国55,000以上あるコンビニのうち、見切り販売をしている店舗は全体の1%しかないという(映画『コンビニの秘密』による)。
見切りの例としては、一般の棚と同じところに、シールを貼った見切り商品を置く場合が多い。
ただし、この「もったいないコーナー」のように、値段を下げていることがわかりやすいよう、「お買い得」などのPOP(掲示物)をつけている店舗もある。
その4:レジ横で会計時に取りやすい場所に設置
このコンビニでは、レジ横に、賞味期限や販売期限の迫ったお買い得品を置き、会計時に顧客が手に取りやすい工夫をしている。
その5:POP(掲示物)に何のための値引きか、手書きで目的を説明
この店では、「食品ロスを減らすために」という目的を書いたPOP(掲示物)を掲げている。
印刷ではなく、手書きで、イラストを入れている。
見切り販売は平均して年間400万円の利益増をもたらす
2018年にも、見切り前と見切り後の、コンビニ11店舗の損益計算書を税理士に分析してもらった。その結果、平均して年間400万円、利益が増えていた。
年間400万円といえば、日本で企業などに雇用されている人の年収に近い。
日本のコンビニの場合、売上高シェアは、セブンイレブン43%、ファミリーマート27%、ローソン19%、3チェーン合計で約9割を占める。
ポプラは、期限が迫った食品を値下げして販売することを、本部側が加盟店に提案したという。
この店で実施している主な内容
この店舗で実施している内容や感想などについて、教えていただいた。
- 本部に了承を得た上で、見切り販売を実施している(本来は了承を得ずとも実施は可能)
- 昼・夜のアルバイトの方にも教育をしっかりし、夜中に期限が切れることの多い食品もしっかり対応
- 見切り販売することで、廃棄する食品ロスはほぼなくなっている(ある日はサンドウィッチとカレーうどんの2品のみ)
- 他店舗オーナーも視察に来るが、自分の店舗では見切り販売を実行できていない
- そもそもコンビニの利益追従のシステム化が弊害となり、店舗の負担になっている
SDGsの専門家「日本は周回遅れ」
SDGs(持続可能な開発目標)の専門家が「日本は周回遅れ」と話していた。実感としてはわかりづらかったが、欧州のコンビニを視察してみると、それは身にしみてわかった。
見切りの記事を書くと、現役コンビニオーナーさんが登場し、匿名でツイッターなどで「見切りガー」などと批判をされる。この記事もそうだろう。
はっきり言って、見切り販売は最善(ベスト)の策ではない。環境配慮の3R(スリーアール)からいくと、2番目の優先順位である「Reuse(リユース)」にあたる。最初から棚に並べ過ぎない、発注し過ぎない方が重要だ。
でも、大切なのは、他人がやっていることに安全地帯から文句をつけることではなく、今、自分ができることをやる、それが最善(ベスト)ではなく次善の策(ベター)なことでもやれるところからやる、ということでは?
全国55,000店舗以上あるコンビニの、ほとんどで、消費期限や賞味期限が迫った食品が見切り販売されていない。イコール、食べられる食品を、毎日、大量に廃棄しているということだ。見切りをバカにして捨てている場合ではない。
持続可能性のために重要なのは、水を出しっぱなしにしている水道の蛇口を締めること。
水とは、限りある資源や食料などのことも指す。
小売業は、大量に売り過ぎない。
そして小売業は、製造業に欠品を禁じ、作り過ぎ(=欠品禁止)を取引継続の条件として強要しないこと。
消費者は、買い過ぎないこと。
適量買うことで、家計も助かる。
ローソンでは消費期限間近の食品に5%ポイント付与・5%寄付の社会実験がもうすぐ2ヶ月
ローソンでは、消費期限間近のおにぎりや弁当を16時以降購入した場合、カード会員に5%ポイント付与(もう5%はこども関連施設に寄付)という社会実験を、愛媛県と沖縄県で6月上旬からスタートした。もうすぐ2ヶ月となる。
法政大学の小川孔輔先生は、この5%ポイント付与により、加盟店の収益が、年間400万円程度、あるいは600万円程度、上がるのではと、2019年5月に予測しておられた。
2019年6月11日から始まったこの社会実験は、8月11日に実施2ヶ月を迎える。
はたしてどうであったのか、多い店では年間600万円年収が増えたのか(=2ヶ月間の収入が100万増えたのか)、結果を楽しみにお待ちしたい。
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