なでしこがオーストラリアに挑む五輪前哨戦。相手を「走らせる」サッカーで勝機を掴めるか?
なでしこジャパンは、7月14日にサンガスタジアムby KYOCERAで、オーストラリア女子代表と国際親善試合を行う。
7月21日に初戦を迎える東京五輪の”前哨戦”だ。
日本はグループステージ初戦でカナダ(21日)、第2戦イギリス(24日)、第3戦チリ(27日)と対戦する。
五輪に出場するために来日したオーストラリアは、FIFAランク9位(日本は10位)で、アジアでは最上位の強豪だ。スピード、高さ、パワーでは日本を上回っており、サッカーのスタイルは欧米に近い。グループステージのカナダやイギリスを想定した一戦になる。
オーストラリアとの直近の対戦は2018年。同年に3度対戦しており、結果は1勝1敗1分だった。
20年9月に、スウェーデン出身のトニー・グスタフソン監督がチームを引き継いだ(正式に着任したのは今年1月)が、基本的な戦い方に大きな変化は見られない。
縦に速い攻撃が脅威で、日本はエースのFWサマンサ・カーに手を焼いてきた。カーは爆発的なスピードと得点力を持ち、19年には25歳でNWSL(アメリカ女子プロサッカーリーグ)の得点王とMVPを受賞。同年にイングランドのチェルシーに移籍し、直近のシーズンはプレミアリーグ得点女王に。27歳にして、3つのリーグ(オーストラリア、アメリカ、イングランド)で得点女王に輝いた初の選手として名を刻んでいる。ゴールを決めると、”バク宙パフォーマンス”を見せることがあり、日本戦でもその凄まじい身体能力を見せつけられた。カーにパスを配給する中盤のMFエミリー・バン・エグモンドや右サイドを猛スピードで駆け上がるDFヘイリー・ラソなど、警戒すべき選手は他にもいるが、カーがゴールを決めるとチームを勢いづかせてしまう。
ストライカーのゴールがチームを勢いづけるのは日本も同じ。FW陣のオーストラリア戦へのイメージは、三者三様だ。
エースのFW岩渕真奈は、「攻撃した後の(守備への)切り替えを意識しながら、ゴールを目指します」と語り、FW菅澤優衣香は「自分に求められている得点やチームを押し上げるキープ力を出して、ベンチも含めて勝ち切りたいです」と、交代の「5」枠も含めた総力戦を見据える。
FW田中美南は、「ボールをしっかり動かしながらゴール前のアクションを増やして、守備に回る時間が多ければ、自分からボールを呼び込んで一発(の決定機)を決めたいです」とイメージを膨らませ、FW籾木結花は、「(日本の暑い)天候も含めて、五輪の戦い方を考えたときに、自分たちが走らされるのではなくて、相手を走らせることができれば勝機につながると思います」と語った。「相手を走らせる」ために、ポジショニングやパスの質が生命線となる。
今大会のオーストラリアは、22人中17人が19年W杯のメンバーだ。また、南半球に位置しているため現在の季節は冬だが、選手の大半はヨーロッパのリーグでプレーしている。
日本は4月からの4試合でパラグアイ(○7-0)、パナマ(○7-0)、ウクライナ(○8-0)、メキシコ(○5-1)と大勝を収めてきたが、オーストラリアは、同時期の4試合でドイツ(●2-5)、オランダ(●0-5)、デンマーク(●2-3)、スウェーデン(△1-1)と、強豪を相手にして負け越している。早い時間帯の失点が多く、クロスに対してファーサイドのマークを見失って失点するケースが散見された。
五輪ではニュージーランド、スウェーデン、アメリカと同じ厳しい組に入っており、本番前最後のこの一戦に向けて、非常に高いモチベーションで臨んでくるだろう。ランキング上位国との対戦が1年4カ月ぶりとなる日本にとっては、心身ともに高めることができるうってつけの好敵手だ。
試合の立ち上がりは警戒したい。過去の対戦では、立ち上がりから猛攻を仕掛けられて失点し、早々に主導権を渡してしまったこともあった。その時間帯を無失点で切り抜けることができれば、後半、相手の勢いは必ず落ちて、スタミナのある日本にチャンスが巡ってくるだろう。
オーストラリアは慣れた4-3-3のほかに、3バックを使うこともある。4-4-2をベースとする日本とはマッチアップにズレが生じる可能性が高く、スペースの管理や浮いたマークの受け渡しなども、成長が問われるポイントだ。攻撃時も相手のアンカーポジションは常にケアしながら、“一発”を虎視眈々と狙うカーへのパスコースを断ちたい。カーは左サイド(日本から見て右サイド)に流れることが多く、右サイドバックのDF清水梨紗とのマッチアップは見応えがありそうだ。
10日には、カーが「I love Japan & I love Japanese people」と可愛らしい絵文字付きでツイートを発信。
籾木は、「嬉しいツイートでした」と明かし、「もてなすことは(コロナ禍で)できないですが、日本を楽しんでもらいたいですし、いい思い出だけではなく、日本代表が日本でプレーする強さを知ってもらいたいです」と、ピッチ上では全力で勝ちに行くことを誓った。
五輪に向けて勢いを得るのは日本か、オーストラリアか。試合は、19:20キックオフとなる。