JR東が約3万4千筆、署名受取拒否で再び騒動の「青春18きっぷ」 署名主催者は何を意図していたのか
2024年冬シーズンの販売分から、これまでの「任意の5日間でグループ利用も可能」というルールから、自動改札機利用は可能となったものの「連続する5日間または3日間でグループ利用不可」と大きくルール変更が行われた青春18きっぷ。この変更が発表された10月24日には、これまでの利用者から「使い勝手が悪くなる改悪だ」とSNS上では大きな騒動となり、この日の夜には「JR旅客6社に対し、青春18きっぷを従来の制度に戻すように要望する」オンライン署名活動が開始され、直後から大きな注目を集めた。この署名活動は12月2日までに約34,000筆を集めて終了した。
署名終了直後には、この署名活動を主催した坂井啓一さんから「これからJR各社へ署名とコメントを提出する準備に入り、当方から確実に責任を持って、JR旅客6社全社に紙媒体と電子データでの署名提出を計画している。提出の準備などが進みましたら、あらためて発表する」と発表があったが、12月5日にJR東日本から「直接ご提出いただく窓口の用意がございません」として署名の受け取りを拒否されたことを公表。
この中で坂井さんは「高輪ゲートウェイ駅名撤回運動、米坂線復旧活動、京葉線快速存続活動など、芸能人、地域住民、議員からの署名は受け取られるようだが、私どものような一般人へは塩対応のようです」と心境を記していたが、このことは記事(「青春18きっぷ」改悪反対署名、約3万4千筆 JR東日本が受取拒否で、「殿様商売だ」と怒りの声も)でも触れている。これがきっかけとなりSNS上ではまた賛否が入り乱れる騒動となり、X(旧ツイッター)では、「青春18きっぷ」が一時トレンド入りする事態となった。
寄せられたコメントの中には、「JR東日本がこの12月1日から入鋏の日付印を廃止してしまったことから従来通りとすることは不可能だ」といったものや「値上げを容認しない姿勢はおかしいのではないのか」と署名活動に対して否定的なものも見受けられたが、そもそもこの署名活動を主催した坂井さんは、全てを従来通りに戻すように要望することを意図したわけではない。
筆者の記事(「青春18きっぷ」の改悪は納得できない! 「オンライン署名」活動始まる 任意の5日間利用に戻して…)では、坂井さんにこの署名活動を立ち上げた思いを聞いているが、「JR各社もさまざまな事情があるので、今後も従来の価格・制度のまま現在の制度を維持できるとは思っていないが、今回のような大きな改悪は、長年の利用者の離反を招くものだと思ったことから、何かをしなければと思い行動に移した」と答えている。そして、まずは混乱を収めるためにも「いったん従来の制度に戻すか、本質を損なわないうえでの改善が必要」で、今後については「物価上昇に応じた値上げ、電子チケット化による使用回数のカウントなど、18きっぷを維持する方法はあるはずだ」と語っていた。
さらに、もともとは福岡県出身で、高校時代や上京してからもよく18きっぷを利用してムーンライト九州・山陽・ながらでさまざまなところを旅してきたという坂井さんは、「今回の改正で3日間用の設定や自動改札機が利用できるようになるなどのメリットもあるが、任意に5日間使用可能だったものが、自動改札機で日数を判定できるようにというシステム上の制限と引き換えに、連続5日間または連続3日間利用にしたのは本末転倒なのではないか。『普通列車乗り放題』という本質だけは残ったが、任意の5日間利用と複数人同時使用という大きなメリットが失われ、これまでの『青春18きっぷ』から大きく内容が変わってしまった。こうしたことから利用者離れをあえて招きJR各社が青春18きっぷの廃止を様子見しているとしか思えない状況なのではないか」と青春18きっぷの置かれた現状に警鐘を鳴らしていた。
青春18きっぷのルール変更については、これまでは自動改札機の利用ができず、切符に利用日の日付印を押し、有人改札で駅員の目視によりきっぷのチェックを受ける方式だったことから、JR側にとっては省力化が大きな目的で、不正乗車や偽造、転売対策の側面もあったと考えられる。しかし、青春18きっぷのルール改正がここまで大きな騒ぎとなったのは、JR側の目的と利用者のニーズが一致していなかったことにあると言えそうだ。昨今、駅みどりの窓口の大量閉鎖や京葉線の通勤快速廃止問題など、利用者軽視とも言える施策からたびたび騒動を起こしていることもあり、今回の青春18きっぷ騒動も含めて、JRグループは利用者との向き合い方を考え直すべきではないだろうか。
(了)