東大総長は新入生に「新聞を読むこと」を勧めたかったのか
東京大学の入学式で、五神真総長が「新聞を読もう」「新聞を読みますか」と新入生に式辞で問いかけたとの記事が新聞各紙に掲載されています。その後に東大ホームページに掲載された総長式辞の全文を読み、意図とは違った報じられ方をしているのではないかと感じました。むしろ、総長が東大生に求める「知のプロフェッショナル」として教材になっています。
まず新聞各社のネット版タイトルと該当部分を紹介します。
東大入学式、総長「新聞読みますか?」 「習慣身につけて」
東大生よ、新聞を読もう…入学式で五神学長
「新聞読みますか」 五神真 東大学長が新入生に問いかけ
以上のようなものです。それでは公開されている総長式辞の該当部分を見てみましょう。
総長は確かに記事本文を読もうとは言ってますが、オンラインで新聞記事を検索出来る仕組みを用意していると、述べています。これは各大学の図書館などに用意されている記事データベースのことです。さらに、海外メディアの報道にも目を通そうとも呼びかけています。ここは各紙から抜け落ちているところです。ネットVS新聞のような書き方をしている記事もありますが、むしろ手近な日本の新聞やテレビでは「足りない」と言っているのです。
新聞各社の記事は総長が伝えたかった内容を、反映しているのでしょうか?「新聞を読むこと」ではなく、多様な情報に触れることで広い視野を持ってもらいたい、という話ではないでしょうか。
新聞業界に都合の良い部分だけを抜き取っているように見えるのですが、ここで「新聞は都合が良いことを!」「だからマスゴミは」と怒り出さないで下さい。私も、新聞業界を批判するために、都合よく記事と総長式辞を使っているかもしれないからです。メディアというのは(人はと言っても良い)、世の中の事象の全てを伝えることは出来ません。一部を切り取らざるをえないのです。そして、そこには「意図」が必ず存在します。
総長の式辞は6000字を超えています。新聞記事は400字程度で、事象をコンパクトに伝える「ヘッドライン」のようなものです。この記事でも総長式辞から400字程度しか紹介していません。記事やネット上の反応を比較し、原文を読み、さらに他の大学の総長式辞なども確認できる時代になっています。大学生なら、図書館に全国紙、週刊誌なども揃っていますし、新聞各社のデータベースから過去の報道を確認することも出来ます。
例えば、五神真東大総長と、私の所属する法政大学の田中優子総長の式辞を比べてみるだけでも、大学の立ち位置や教育方針、社会にどのように貢献して欲しいか、が随分違うことが分かるでしょう。
大学生の皆さんには、メディアを読み解き、使いこなす(発信)ことで「知」を身につけ、卒業後は自由に社会を生き抜いてもらいたいと思います。