なぜ「コーギーのシッポを切る?」「ネコの爪を取る?」動物の幸せを考えてみよう
コロナ禍でペットを飼う人が増えています。
一般社団法人ペットフード協会の調べでは、新規飼育者飼育頭数は、犬は2019年に40万4千頭、2020年46万2千頭で114%、一方、猫は2019年に41万6千頭、2020年48万3千頭で116%です。犬や猫を新しく飼い始める人が増えています。
そんな中、ペットに対する考え方も少しずつよくなっています。今日は、ネットで話題になった「コーギーのシッポ切り」を取りかかりに、猫の爪取り手術・抜爪手術(ばっそうしゅじゅつ)を考えてみましょう。
なぜコーギーもトイプードルもシッポを切るの?
なぜコーギーもトイプーもしっぽ切る? 断尾・断耳行為が日本で消えない理由「メリットなく、リスク伴う」という記事がネット上で話題になりました。
ペットショップに並んでいるコーギーやトイプードルなどは、シッポが短いので、生まれたときから、そんなものだと思っている人も多いかもしれません。そのうえ、コーギーのシッポが短くてかわいいと思っている人も多くいます。それをプリケツ、桃尻と呼ばれています(一般的には、コーギーの中でも上の写真のウェルシュ・コーギー・ペンブロークだけが断尾されています。一番下の写真にあるウェルッシュ・コーギー・カーディガンは断尾はしません)。
実は、コーギーやトイプードルなどの犬種は、生まれたときはシッポは長く、「断尾」ということをされているのです。
「断尾」とは?
犬の「断尾」という言葉を聞いた事がありますか?
犬の「断尾」とは、生後間もなくシッポを切り落とす事をいいます。
獣医師がする場合は、(局所麻酔をかけることもありますが、実際あまりされていません)レーザーやメスなどでシッポを短く切ります。
一般的には、ブリーダーさんが行うことが多く、シッポを輪ゴムやヒモできつく縛り、シッポに血を通わせないようにして落とします。科学的なエビデンスはないですが、生まれてすぐだと無麻酔でも痛みを感じにくいとされて、このようなことをしています。
シッポを切る理由とは?
歴史的な背景が大きいです。
ヨーロッパなどでは、犬は使役犬として狩猟犬や牧畜犬でした。このような犬にとって、シッポがあると仕事上で怪我が多かったのです。
例えば、トイプードルなどのプードルたちはもともと猟犬です。プードルは泳ぎが得意で、鴨猟の回収犬として用いられていました。このように狩猟をしていると、森や川で獲物を追いかけて、シッポがあると傷つきやすく、化膿しやすいというデメリットがありました。
コーギーなどの牧畜犬にとっては、牛や羊を追うときに長いシッポは踏まれてしまう危険性が高くなります。
いまも断尾する必要があるの?
いまでは、トイプードルを鴨猟に連れて行ったり、コーギーを牧蓄犬として飼っている人はほとんどいません。日本では犬は多く「ペット」として飼われていますね。
本来の目的がすでに失われ、シッポは、かわいいからとか、昔からそうしていた犬種を特徴づけるからなどの形式的な面だけとなってしまっています。なぜ断尾するのかを考え飼うことも大切になってきています。
断尾しない犬がほしいときは、どうすれば?
動物のことを考えてヨーロッパを中心に犬の断尾をしない傾向になっています。日本ではまだ、このような考えはあまり起きていません。
それでも、飼う犬は断尾していない子と思えば、事前にブリーダーさんに切らないようお願いするしかありません。断尾は生後すぐにされるためです。
このことについてもっと議論が行われないと、断尾をするという日本の文化はなかなか変わらないでしょう。こんなことを通して、ペットの本当の幸せとは何かを考えることは大切ですね。
猫の爪取り手術「抜爪手術」
猫と一緒に暮らす中で、爪の問題があるのです。
猫の爪を抜く手術をご存じですか?
日本ではまだあまり知られていないのですが、室内飼いのときに、猫の爪問題があります。次に、猫の爪を抜く「抜爪手術」について考えていきましょう。
「抜爪手術」とは
「抜爪手術」とは爪を抜く手術です。主に猫でされています。
手術方法ですが、獣医学が進歩しているのでレーザー型で処置してもらえば、以前からある骨ごと切除するいわゆるギロチン型のものより痛みは少ないです。
もちろん、獣医師が麻酔をして爪を抜くのですが、爪の回りには、血管や神経が多くあるので、術後痛みが残ることもあります。
なぜ、抜爪手術をするのでしょうか?
「何のためにそんな猫にとって痛そうな手術をするの?」と疑問を持ちますよね。
もちろん、猫の爪を抜く手術は、安易にはされていません。飼い主や周りの人や猫のことも考えて行われています。抜爪手術をする場合は、完全室内飼いに限ります。
飼い主や周りの人の怪我の防止
全ての猫が穏やかで、襲ってこないといいですが、そうもいかないこともあるのです。
猫の中には、急に攻撃的になる猫もいます。飼っている猫が攻撃的な猫だとすれば、不妊去勢手術をしても、愛情を注いでも引っ掻いてくるようなことがあります。そんな猫は、爪を切ることさえできないのです。
引っ掻かれる場所が悪いと、流血騒ぎになることもあります。以前、診察室で、猫が暴れて、飼い主が猫に手を引っ掻かれて、血が止まらなくなり救急車を呼んだことがあります。
このようになにかのトラブルで凶暴な猫が外に出てしまい、人や動物に傷をつけたらと思うと飼い主は心配で仕方がないのです。猫の飼育放棄のひとつに「凶暴性」というのもあります。
そのような場合、どうしてもやめさせられないときに、この爪を抜く手術を受けることがあります。
猫自身のために
猫の病気として、脳の疾患などがあります。水頭症やてんかんを持っている子もいます。お薬で抑えることができるといいのですが、なかなかできない場合は、発作が起こると激しく暴れて、猫が自分自身を傷つけてしまうことがあります。
そのようなときに、猫の爪を抜く手術をすることがあるようです。
抜爪手術のたくさんのデメリット
抜爪手術は猫にとってたくさんのデメリットがあります。そのため、上記の理由などがあり、よっぽどのことがないと行いません。猫にとって、以下のようなデメリットがあります。
□歩行困難
□バランスがとれなくなる
□ふんばれない
□高いところに登れない
□爪研ぎなどでストレス発散ができない
□爪研ぎなどで縄張りを主張できない
□精神的に不安になる
などがあるので、抜爪手術は慎重にしないといけないですね。
まとめ
犬や猫は、家族の一員といわれています。
ペットは、大切に飼われることが多くなってきています。断尾などは、美容の面の意味合いも強く、私たちが犬の幸せとは何かを考え出すと変わるかもしれません。そして、猫の抜爪手術もなくなればいいのですね。
猫の中には、急に獰猛になり一緒に暮らすことが難しい子もいるのです。そのような猫なら、安楽死させたらいいと簡単に考えるわけにはいきません。
ペットを巡る問題は、簡単に解決ができない場合もあります。ペットと人の暮らしの落としどころを慎重に考えて答えを出します。
日本では「自然のままに」という考えをする人も多くいます。動物と一緒に暮らすことは、やはり管理することも必要なこともあるのです。たとえば、不妊去勢手術はもちろんのこと、そして、このような猫の抜爪手術を行っている子もいます。
コロナ禍で、新規にペットを飼う人もいます。動物と暮らすことは、かわいいだけでは、済まないことも起こる可能性があることを熟考してくださいね。