生ごみ・牛ふん・もみ殻の「土魂壌(どこんじょう)」で有機米栽培 福井県池田町の取り組み
コロナ禍になり、家庭での調理が増え、家庭での滞在時間が長くなってきた。そのようなライフスタイルの変化が背景にあるのか、コンポスト(堆肥)づくりがじわじわと注目を集めているようだ。
雑誌『天然生活』の2020年11月号では「ごみを、ごみにしない暮らし方 始めよう、コンポスト生活」と題し、5ページにわたって特集している。記事を監修している、東京都三鷹市の農家兼啓発活動アドバイザーの鴨志田(かもしだ)純さんによれば、例年、春の時期にはコンポストが注目される傾向があるそうだ。2020年春以降は例年にも増してコンポストが注目されており、インターネットでの検索数も急増したとのこと(Google Trendsリサーチによる)。LFCコンポストなど、持ち運びに便利で見た目もおしゃれなコンポストが登場している。
2020年11月4日、食品ロスの講演に呼んでいただいた福井県池田町で、食品ごみ(生ごみ)から堆肥を作る取り組みについて、現場を案内していただいた。
福井県池田町は、福井県の中央部、今立郡(いまだてぐん)に位置する、人口2,465人(2020年10月末現在)の町。町の面積の9割が森林で占められている。
2002年、家庭の生ごみを牛ふんやもみ殻と混ぜ、堆肥「土魂壌(どこんじょう)」を作る食Uターン事業を立ち上げ、堆肥を活用した有機米の栽培に取り組んできた。生ごみを食品資源と呼んでいる。
専用回収車「あぐりパワーアップ号」で毎週月・水・金に回収
町民は、食品の調理や消費の過程で出た食品資源(生ごみ)の水を切り、新聞紙などで包み、池田町内で販売されている指定の紙袋に入れて出す。
町民が出した食品資源(生ごみ)は、専用の回収車「あぐりパワーアップ号」で、毎週、月・水・金の3回、回収される。回収は、NPO法人環境Uフレンズが行っている。
回収された食品資源は、あぐりパワーアップセンターへ運ばれる。
そこで食品資源は、牛ふん、もみ殻と一緒に、有機肥料「土魂壌(どこんじょう)」になる。
また、たい肥製作過程での発酵時の蒸気から、有機の液肥である「土魂壌の汗」も作られる。
出来上がった堆肥や液肥は、農家や一般家庭で使用され、安全な農作物を作る「ゆうき・げんき正直農業」が行われている。
また、福井市のショッピングセンター内のアンテナショップ「こっぽい屋」でも販売されている。
容器包装も回収してリサイクルに
福井県池田町では、食品資源(生ごみ)だけでなく、容器包装も回収してリサイクルしている。町民が自主的に回収場所へ持参し、ある一定数を入れるとインセンティブが与えられる仕組みだ。
生ごみを資源に
環境省が毎年3月末に発表するリデュース(1人1日当たりのごみ排出量)取組の上位10位市町村で、福井県池田町は、全国のベスト10には入っていない。だが、町民が自主的に立ちあげたプロジェクトが20年近く続いているのは素晴らしいと感じた。
生ごみは、実はごみではなく、資源なのだ。生ごみを生かす取り組みは、食品ロスを出さない意識や行動にも着実につながっていく。