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鬼軍曹・永瀬拓矢二冠(27)朝日杯ベスト4進出 藤井聡太七段(17)の大会3連覇を阻止するのは誰か?

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月20日。東京・将棋会館において第13回朝日杯将棋オープン戦の1回戦2局、2回戦1局がおこなわれました。その結果、永瀬拓矢二冠がベスト4進出を決めています。

【1回戦】10時-11時26分 97手

 永瀬拓矢二冠○-●糸谷哲郎八段

 ニコニコ生放送の企画で2年連続、年末に将棋を指している永瀬二冠と糸谷八段。将棋が本当に好きなのでしょう。

 所属が東西に分かれているためか、公式戦での対局は過去に2局と意外に少なく、永瀬1勝、糸谷1勝となっています。

 後手番の糸谷八段は一手損角換わり。対して永瀬二冠は早繰り銀の速攻に出ました。銀交換の後、糸谷八段は右玉に構えます。そして金2枚を玉のそばから離して永瀬二冠の猛攻を受けて立ちます。途中からは永瀬二冠のパンチが的確にヒット。早見え早指しの糸谷八段も時間を使って考えますが、永瀬二冠の進撃は止まりませんでした。

【1回戦】14時-15時57分 113手

 渡辺明三冠●-○山崎隆之八段

 若手の頃には「東の渡辺、西の山崎」と並び称された両者。過去の対戦成績は渡辺11勝、山崎3勝となっています。

 山崎八段が先手で、戦形は相掛かり。角交換の後、山崎八段が渡辺陣の左右をにらむ位置に角を据えて、中盤の戦いが始まりました。山崎八段は右に左に手をつけて、いつしか優位に立ちました。渡部三冠はリスクを承知の上で決戦に出ます。山崎八段は手堅い指し回しで勝勢に。最後は自玉の頓死筋に避けながら、逃げ切りました。

【2回戦】19時-20時46分 99手

 永瀬拓矢二冠○-●山崎隆之八段

 過去の対戦成績は永瀬2勝、山崎1勝。竜王戦本戦など、いずれも両者が勝ち進んだところでの大きな勝負でした。

 永瀬二冠が先手で戦形は角換わり腰掛銀。ほぼ互角の中盤戦が続いた後、70手を過ぎるあたりで、形勢は次第に永瀬二冠に傾きました。山崎八段が攻防に打った桂を永瀬二冠は決断よく飛車で取ります。

「飛車切りをうっかりしました」

 と局後に山崎八段。飛車を取ると、桂を打たれて山崎陣は崩されます。山崎八段は飛車を取らずに辛抱しましたが、以下は永瀬二冠が押し切りました。

 永瀬二冠は糸谷八段、山崎八段と森信雄七段門下の関西実力者2人を連破して、ベスト4へと進出しました。

 改めて、トーナメント表を見てみましょう。

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 過去に優勝経験があるのは2連覇中の藤井聡太七段と、2008年度優勝の阿久津主税八段です。

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 永瀬二冠と千田翔太七段は本棋戦も含めて、過去に全棋士参加棋戦の優勝はまだありません。

 誰が優勝してもおかしくはないところ、やはり注目されるのは、藤井七段が3連覇を達成できるかどうか、という点でしょう。

 藤井七段から見て過去の対戦成績は、千田七段は2勝0敗。阿久津八段は1勝0敗。永瀬二冠とはまだ公式戦の対局はありませんが、非公式戦「炎の七番勝負」では、永瀬勝ちとなっています。

 準決勝、決勝は2月11日、東京・有楽町の朝日ホールでおこなわれます。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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