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ある動物愛護管理センターに「若い柴犬の引き取り」が多い...その悲しすぎる理由とは

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:アフロ)

東海テレビが、『「手の影にビクッてする」虐待受け捨てられたか…ペットブームの陰で飼育放棄急増 柴犬アキちゃんの運命は』というニュースを報道していました。

このニュースの柴犬は、若い柴犬ではありませんが、無事に素敵な里親が見つかりました。保護活動をしてくださっている人たちに感謝です。

その一方で、ある動物愛護管理センターで働く大学の同級生が「ここ半年ぐらいは、若い柴犬が多く保護されるようになった」と教えてくれました。その悲しすぎる理由について、考えていきましょう。

コロナ禍での柴犬の悲劇とは?

写真:アフロ

コロナ禍になり、在宅時間が増えたことや先行きが見えない不安があり、犬や猫に癒やしを求めている人が多くいます。それで犬や猫を飼い始めています。

一般社団法人ペットフード協会の発表でも、コロナ禍の前より、2020年、2021年の2年間では犬猫とも新規飼育者が増えているのです。

そんななか、柴犬を飼って多く放棄される悲しすぎる理由は以下です。

柴犬は他の血統書付きの他の犬に比べて安いので、あまり考えずに購入した

柴犬は中型犬なので運動が必要で、そのため散歩が不可欠

柴犬は、洋犬に比べてそれほどフレントリーじゃない

多くの人は、ペットショップで犬や猫を購入します。言い方は悪いかもしれませんが、多くのペットショップは、犬や猫の料金さえ払えば、だれでも飼うことができるのです。

そのため、どうしてもいま犬や猫がほしいという衝動的な気持ちで飼ってしまう人もいるのです。

その一方で、多くの保護愛護団体や行政の動物保護センターなどは、犬や猫を譲渡する場合は、散歩に行く時間があるか、終身飼育できる人かなどを多方面にわたって判断してからでないと譲渡しません。そんな手続きが面倒な人は、ペットショップで購入する傾向があります。

初めて柴犬を飼育してみて、「こんなはずではなかった」

写真:アフロ

SNSが多く人に浸透するようになり、毎日、他の人が飼っている犬や猫の投稿を眺める時代になりました。そんな日常を送っていると、自分も犬や猫と暮らしたくなります。

SNSの投稿は、その犬や猫のよいところの一部を大きく切り取っているわけです。一瞬に見せるかわいい仕草などが投稿されています。それを毎日、眺めていると犬や猫は、24時間かわいいと錯覚してしまうのかもしれません。

ネットの中にいた犬や猫を生まれて初めて迎えると、こんなはずじゃなかったと思うことになる人もいます。

柴犬の場合は、以下のことは教える必要があります。

・トイレは決まったところにするようにしつける

・散歩のときに、引っ張らないで飼い主の横を歩くようにしつける

・他の人や犬と仲良くするようにしつける

・無駄吠えをしないようにしつける

飼育放棄の理由のひとつに、トイレを覚えないというものが多くあります。犬は猫と違って、1回教えても失敗することがあるので、根気よく教える必要があります。

たとえば、一緒に寝ようしたら布団にオシッコされて激怒した飼い主の話とかを聞きます。柴犬は、チワワやトイ・プードルに比べて大きくオシッコの量は多いので布団にされると乾かすのは大変です。それで、余計に腹を立てるようです。

柴犬を飼うということ

写真:アフロ

柴犬は小型犬ではなく中型犬なので、大きさの把握もしっかりしておかないといけないです。

柴犬はしっかりとした骨格をしており、体高40~45cm、体重10~13kgほどになります。この体重を抱っこできない人は、柴犬を飼うのをやめておいた方がいいです。

運動

柴犬は活発で運動が大好きな犬種です。

1日2回それぞれ30分程度の運動を目安に行います。もちろん、雨の日も風の日もきちんと散歩に連れて行ってあげましょう。

しつけ

以前は猟犬として人間と生活をともにしてきたことなどから、主従関係に忠実な性格です。信頼関係をきちんと作ると、よくいうことをききます。そうじゃない場合は、しつけるのが難しいです。

なかには、拾い癖や噛み癖などがある子もいるので、しつけは大切です。噛み癖は運動不足などによるストレスが原因のときもあります。なかなかしつけができないときは、専門のトレーナーに頼みましょう。

被毛

ダブルコートです。

毛の長さは短いですが、剛毛で一年を通して生えている毛と綿のような下毛からなります。室内飼いをする人は、毛が抜けるのでその辺りは注意してください。

写真:アフロ

上述の大学の同級生は「犬や猫を飼うのはよいことかもしれないが、その一方で、飼う前にしっかり勉強してからにしてほしい」と言っていました。ネットの情報だけではなく、実物の犬や猫に見て触れてから飼うようにしてほしいと筆者も思っています。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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