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元オーストラリア代表のマット・ギタウが「いいプレーだった」と握手した相手は?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ゴールキックを蹴る際は、トレードマークのヘッドキャップを脱ぐ(写真は昨年)。(写真:松尾/アフロスポーツ)

 ラグビーにあって、もっともプレッシャーのかかるシーンのひとつがゲインライン上でのプレーだ。ゲインラインとは、ボールの位置を境に敷かれるゴールラインと平行な仮想の線。攻撃側と守備側を隔てる領域で、攻める側にとってはタックラーに迫られるなかでラン(コンタクト、ステップを含む)、パス、キックを正確に遂行しなければならない。

 このゲインライン上で正確なスキルを発揮できる1人が、オーストラリア代表103キャップ(代表戦出場数)のマット・ギタウだ。

 7月19日、東京・秩父宮ラグビー場。日本のトップリーグのカップ戦の予選プール最終節で、サントリーのスタンドオフ(司令塔)として先発。防御を引きつけながら左右のスペースへパスを散らし、相手防御がせり上がるやキックを転がす。パナソニックに19―23で勝利した。

 試合後はミックスゾーンに現れ、ゲインライン上で正しくプレーできる秘訣、さらには相手チームのスタンドオフだった山沢拓也などについて言及した。

 以下、単独取材での一問一答(編集箇所あり)。

――今日のプレーを振り返ってください。

「最初はモメンタム(勢い)を作れました。ただ前半、後半の最後の10分ずつはパナソニックに勢いを与えた。両方とも勝つチャンスを作れましたが、最終的には自分たちに勝ちが回ってきた」

――印象では、サントリーがボールを持って攻め続けている間は相手が嫌がっていたような。

「ボールを持ってアタックできた時はチャンスを作れました。ただ、相手防御の上りが速いなか、ボールが滑っていました。お互いにテリトリーを取り合うゲームになりました。試合を進めるにつれ、ボールが滑るゆえのゲームプランの変更は両チームともにあったと思います」

――確かに、ギタウ選手が防御の裏側へ蹴ったボール。有効でした。

「自分たちがプレーしたいスタイルではなかったのですが、そのようにうまく対応できた。個人の判断で、コーナー(敵陣の両端)が空いているからとそのような選択をしました」

――プレッシャーのかかるゲインライン上で正確なプレーをし続けられるのはなぜか。

「もちろん、練習が必要です。練習でしっかりとできないと、試合ではできない。練習でそれを意識していくことが大事です。ゲームライクなプレッシャーのなかで練習しなければいけないと、サントリーでは常に意識しています」

――対戦したスタンドオフに山沢拓也選手についてはどう感じましたか。日本のファンが期待する司令塔の1人です。

「試合後は彼のもとへ握手をしに行き、『いいプレーだった』と伝えました。両足でいいキックを蹴ることができ、走るのも速い。我々のディフェンスもストレスを感じていました」

――残念ながら、彼がここでプレーしていることは、ワールドカップ日本大会に向けた日本代表の合宿へ呼ばれていないことも意味します。

「彼はまだまだ若い、能力のある選手。ハードワークしていくだけだと思います。…きょうで言えば、彼が日本代表に行っていた方がよかったです。彼と対戦したくはなかったので!」

――最後にオーストラリア代表の話題を。最近では選びたくても選べない中心選手が出るなど大変な状況下にありますが。

「選ばれた選手は強い選手。これからのテストマッチを観ること、ワールドカップのチーム作りが楽しみです」

 現在36歳のギタウのサイズは、公式で「身長178センチ、体重87キロ」。世界トップクラスのバックスにあっては小柄で、日本の多くの選手とそう変わらない。しかし、沢木敬介・前サントリー監督曰く、「100キャップ以上を持っている選手はプライドがあるから、さぼらない」。正確なプレーを何度もし続けられるタフさもまた、この人の魅力だ。名人に認められた山沢の「ハードワーク」にも、さらなる注目が集まる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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