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メタバースを提供するVRChat、クリエイター支援策を発表するも一部ユーザーからは冷ややかな反応が

武者良太ガジェットライター
(キャプチャ:VRChat Blog)

メタバースとも呼ばれるVR SNSの1つ、「VRChat」を運営する米VRChat社が新しいサブスクリプションサービスを発表しました。

Paid Subscriptions: Now in Open Beta!(VRChat Blog)

VR空間のなかでユーザーが自由に世界を作り、彩り、交流できるVRChatでは、アバターやバーチャルファッション、ワールドのクリエイター、そしてミュージシャン、ダンサーなどのパフォーマーがVRChatカルチャーの中心でした。

彼らをサポートする手段は限られていましたが、新たなサブスクリプションサービスによってファンはサポーターとなり、好きなクリエイター・パフォーマーを直接サポートできるようになります。

クリエイター・パフォーマー側も、資金を得るだけではありません。サポーターのみがアクセスできるVIPルームの設定や、イベントの優先アクセス権・独占アクセス権の付与など、サポーターに対するサービスを提供できます。

利益配分に対する疑問

VRChatの世界を支えてきた人、そのファンにとっては朗報ではないだろうか。と思いきや、一部のユーザーから「クリエイター・パフォーマーの利益率が低いのでは」と疑問の声が上がっています。

(キャプチャ:VRChat Blog)
(キャプチャ:VRChat Blog)

VRChat社が公開した資料によると、クリエイター・パフォーマーに支払われる利益はサブスクリプションサービスによる支援額の50%。

残りの50%はMeta Questストア(Meta)やSteam(Valve)、Google Playストア(Google)といったアプリプラットフォームへ支払う手数料が30%、VRChat社および決済手数料で20%となっています。

ここでの論点としては

・アプリプラットフォームの手数料30%が高いか

・VRChat社+決済手数料20%が高いか

と、なるでしょうか。

開発者とアプリプラットフォームの収益分配率70:30は一般的だった

ここで大手アプリプラットフォームの有料アプリ販売・アプリ内決済の手数料を御覧ください

Appleストア手数料30%

(前年の合計収益額が100万ドル以下の開発者は15%に軽減)

Google Playストア手数料30%

(前年の合計収益額が100万ドル以下の開発者は15%に軽減)

Steam手数料30%

(売上が伸びると25%→20%と軽減される)

このことから「アップル税」「Google税」と揶揄されることもありました。しかし大手アプリプラットフォームの手数料が30%というのは、(従来から高い、ボリすぎという声があるにしろ)ある意味業界標準であるとはいえます。

アプリプラットフォームが得た30%の収益は、アプリストア全体の機能やゲームの管理機能、無料で公開される他のアプリのサポートとして使われており、30%の手数料が高いか安いかは一概に判断できないのも事実です。過去の裁判事例からも、不当でないとされています。

ゆえに「アプリプラットフォームの手数料30%は高い」とは言い切れません。

VRChat社のマネタイズも考慮すると妥当といえるか

いままで無料アプリとしてMeta QuestストアやSteamでアプリを提供してきたVRChat社です。いわばアプリプラットフォームが得てきた他ゲームの売上でもってサポートされてきた存在です。

そんな企業が、アプリプラットフォームの手数料を無視して独自の決済を行うとは考えにくい。

基本的に無料で提供されているサービスゆえに、現状の収益構造には難がある。今までに集めた資金を使い切ったらサービス終了という、ベンチャー企業あるあるの道を征くケースも考えられます。

そう考えると、VRChat社側の手数料+決済手数料が20%。決して高くはない。

VRChatというサービスに関しての研究開発コスト、運営コストを考慮すると、むしろ儲けがあるのだろうかと心配になってきます。

ゆえに「VRChat社+決済手数料20%は高い」とも断言できない。かといって、「クリエイター・パフォーマーの利益率が低いのでは」という疑問も分からなくはない。このあたりはVRChat社としても相当悩んだところではないでしょうか。

クリエイター・パフォーマーやサポーターが納得する内容となるか

VRChat社のブログを見ると、2024年1月18日にはさらなるクリエイターに対してのサポート施策を発表するそうです。

金銭面の話となるのか、機能面の話となるのか、詳細は不明です。

開発会社であるVRChat社、アプリのダウンロード・管理を請け負っているアプリプラットフォーム企業、クリエイター・パフォーマー、そしてサポーターの全員が納得できる内容となるのでしょうか。今後の動向に注目です。

ガジェットライター

むしゃりょうた/Ryota Musha。1971年生まれ。埼玉県出身。1989年よりパソコン雑誌、ゲーム雑誌でライター活動を開始。現在はIT、AI、VR、デジタルガジェットの記事執筆が中心。元Kotaku Japan編集長。Facebook「WEBライター」グループ主宰。

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