ラニーニャ、秋に向けて緩やかに発達
気象庁は10日、ラニーニャ現象が秋の終わりまでに発生する確率が70%と初めて確率による見通しを示した。ただ、発達は緩やかで、力強さはない。むしろ、日本の南海上で雲が多く発生している状況が厳しい残暑に影響しそうだ。
初のエルニーニョ/ラニーニャ発生確率
気象庁はこれまで、エルニーニョ/ラニーニャ現象の見通しを「今後、夏の間にラニーニャ現象が発生し、秋にかけて続く可能性が高い」や「今後春にかけても平常の状態が続く可能性が高く、夏には平常の状態が持続する可能性と、エルニーニョ現象が発生する可能性が同程度である」などと解説していました。
後者の解説は一度読んだくらいでは理解できず、歯切れの悪さから予報官の迷いが見えるほどです。
今回から気象庁は、確率による見通しを示しました。この秋の終わりまでに、ラニーニャ現象が発生する確率は70%です。しかし、発達の程度は緩やかで、この冬の状況は不確実性が高いとしています。
すでに、海外の気象予報センターではエルニーニョ/ラニーニャ現象の発生を確率で示していますが、日本の気象庁でも同様の取り組みが始まりました。今後、どのように理解が進むのか興味深いです。
しかし、一般の人に向けても、わかりやすい表現となったとは必ずしも言えないでしょう。天気の番組を担当していると、確率による表現は何が言いたいのか分からないといわれることが多く、取り上げることにためらいを感じます。
重要なことはエルニーニョ/ラニーニャだけではないこと
海洋と大気の状況はラニーニャ現象に向けて、徐々に変化しています。海の変化が地球を巡る風の流れに影響し、さらに低気圧や高気圧の動きに変化をもたらす、これがエルニーニョ/ラニーニャ現象による異常気象のメカニズムです。
しかし、重要なことはエルニーニョ/ラニーニャ現象だけが天気を動かしているわけではないことです。ひとことでいえば、全体の3割程度の影響しかありません。
これまで、たびたび、エルニーニョ現象によって異常気象が発生したと話をしてきました。事実、影響があったことは確かですが、世界の天候、日本の天候がエルニーニョ/ラニーニャ現象だけで決まるほど単純ではありません。
この夏は西日本で厳しい暑さが続いています。大分県日田市では最高気温35度以上の猛暑日がきょう(12日)で17日連続となり、最長記録にあと5日に迫っています。
この厳しい残暑はいつまで続くのか。そのカギは日本の南の海にあります。現在、日本の南海上で雲が多く発生しています(対流活動が活発)。この場所で雲が盛んに発生すると本州付近から日本の東海上で高気圧が強まり、気温が高くなる傾向があります。
これを専門的にいうと、テレコネクションのひとつで「PacificーJapanパターン」といいます。
8月になり、暑さをもたらす「PJパターン」が明瞭になってきました。今後しばらくはこの状況が続く可能性が高く、厳しい残暑を覚悟しなくてはならないようです。
【参考資料】
気象庁:エルニーニョ監視速報 (No. 287),2016年8月10日
気象庁:エルニーニョ監視速報の拡充 ,2016年8月10日
気象庁:全般季節予報支援資料 1か月予報 予報期間:8月13日~9月12日,2016年8月11日
NOAA(米海洋大気庁):EL NINO/SOUTHERN OSCILLATION (ENSO) DIAGNOSTIC DISCUSSION,11 August 2016
WMO(世界気象機関):WMO Update: Weak La Nina may develop,28 July 2016