五感を刺激する「麺屋武蔵」の新たな挑戦
「革新にして上質」「唯一無二」
1996年の創業以来、常に革新的なラーメンを生み出し、ラーメン界に衝撃を与えてきた人気店「麺屋武蔵」。「革新にして上質」「唯一無二」が麺屋武蔵の変わらぬコンセプト。店舗ごとに味やテーマが異なる斬新かつ意欲的な出店を続け、現在国内に15店舗、海外に6店舗を構えている。
麺屋武蔵にはその業態に合わせた2つのカテゴリーが存在する。「Double Brand」は店名に「麺屋武蔵」ともう一つの「屋号」を掲げた店舗群で、それぞれの店長は「店主」として立ち、各店ごとの個性を発揮した革新的なラーメンで競い合っている。「Single Brand」はテーブル席を設置したりサイドメニューを充実させるなど、これまでの客層とは異なりファミリー客やグループ客も意識した、幅広い客層をターゲットにしている。
麺屋武蔵を語る上でこの「Double Brand」の存在は欠かせない。「麺屋武蔵 二天」(池袋)は特殊なフライヤーを使って揚げた豚天や鶏天などを具材に使用。「麺屋武蔵 虎洞」(吉祥寺)は虎の尻尾に見立てた自家製の「チャーシューソーセージ」を大胆に乗せるなど、常に革新的で他にはないラーメンを生み出し続けている。
麺屋武蔵2年ぶりの新店「五輪洞」
そんな麺屋武蔵が10月11日、およそ2年ぶりの新店「麺屋武蔵 五輪洞」(東京都港区芝5-29-1)をオープンさせた。ここ数年はSingle Brandでの出店が続いており、Double Brandとしての出店は2011年9月の「麺屋武蔵 虎嘯」(六本木)以来、約7年ぶりのこととなる。
これまでも兵法の「二天一流」から「二天」を取るなど、店名の由来にもなっている剣術家、宮本武蔵に縁のある屋号をDoble Brand店につけてきた麺屋武蔵だが、今回の屋号である「五輪洞」も宮本武蔵が晩年に執筆したとされる兵法書「五輪書」からの引用。また従来のDouble Brandの店名はすべて二文字(武骨外伝、武骨相傳を除く)だったが、今回初めて三文字の屋号がつくこととなった。
食べ手の五感を刺激する斬新な一杯
メニューはつけ麺とラーメンの2種類。看板メニューの「五輪洞つけ麺」は、従来の麺屋武蔵同様に「和」を感じさせるもの。豚骨や鶏ガラを使った動物系の白濁スープに煮干しや昆布などを使った魚介系の出汁を合わせ、さらに香ばしく焼き上げたカニと鰹の厚削り節を加えたスープをベースに使用。そこに合わせるのは麺屋武蔵オリジナルの「包丁切り麺」。通常でも十分なボリュームだが、物足りない人には麺量1kgまでは同料金というサービスも。具には黒酢を使って柔らかく深みのある味わいに仕上げた、大きな酢豚風の角煮「黒角煮」を乗せた。
そして今回の五輪洞で特筆すべきポイントは「香味油」の製法にある。店内に置かれた回転式の削り機で削ったばかりの鰹節をスープの入った丼に乗せ、その上から熱々に熱した油をかけていく。店内に油の「ジューッ」という音とともに、熱せられた鰹節の香ばしい香りが一気に広がり、食欲をこれでもかというほど刺激する演出だ。
「鰹節は鹿児島県産の荒節を使っています。香味油として抽出しやすく、かつ口の中に入れても溶けやすい薄さを追求した結果、0.1mmになりました。削りたての鰹節を使うことで、市販の削り節では出せなかった香りと味わいが表現出来ていると思います」(麺屋武蔵 代表取締役 矢都木二郎さん)
動物と魚介のバランスが取れたスープに鰹の香味油が加わることで、徐々に鰹の風味が強くなって味わいが時間とともに変化していく。さらに黒角煮を煮込んだ濃厚な黒酢ダレもスープに溶け出していき、さらなる味の変化が楽しめる。目の前で削りたての鰹節が香味油になっていく楽しさ、油を注いだ時の音と香り、包丁切り麺の独特な食感、そして変化していく味わいと、まさに「五感を刺激する」つけ麺が五輪洞のつけ麺なのだ。
「あっと驚くようなものを作り続けていきたい」
卓上に置かれた調味料にもこだわりがある。「五輪酢」は元々つけダレに入っている米酢とは別のもので、これを途中で入れることで柚子の風味が爽やかに広がる。さらに店主がぜひ試して欲しいと薦めるのが、オリジナル香辛料の「五輪辛味」だ。
「五輪の名前にちなんで、2種類の唐辛子のほかに鰹節、ネギ、ニンニクと5種類の素材をブレンドして作りました。スープ本来の味を損なうことなく、それでいてしっかりと辛さが効くようなバランスに仕上げた自信作です」(五輪洞店主 米澤迅三朗さん)
今回も斬新な手法で新たな味に挑戦する麺屋武蔵の新店、五輪洞。社長の矢都木さんはこの店に新たな可能性を感じている。
「目の前で油をかけるという手法で、ほかにも色々な香味油や新たな表現が出来ると思っています。常識にとらわれることなく、皆さんがあっと驚くようなものをこれからも作り続けていきますのでご期待下さい」(矢都木さん)
※写真は筆者の撮影によるものです(出典があるものを除く)。