なぜレアルはクラシコを前に“ギア”を上げているのか?ヴィニシウスとロドリゴの躍動とダブルボランチ。
ビッグマッチを前に、調子を取り戻している。
リーガエスパニョーラ第8節でヘタフェと対戦したレアル・マドリーは、敵地コリセウムで1−0と勝利した。前節、オサスナに引き分けた後、再び白星をあげている。
水平線には、伝統の一戦が控える。バルセロナとのクラシコだ。両者は現地時間16日にリーガの首位を争い、真っ向から衝突する。
■ベンゼマの在・不在
マドリーは一時、失速したかに見えた。だがカルロ・アンチェロッティ監督はチームを立て直している。
近年、マドリーの攻撃を牽引しているのはカリム・ベンゼマである。そのベンゼマを負傷やコンディション不良で欠いた時、マドリーは苦しい状況に追い込まれる。
そのような中で、アンチェロッティ監督が攻撃の全権を託したのがヴィニシウス・ジュニオールとロドリゴ・ゴエスである。
まずはチャンピオンズリーグ・グループステージ第3節で「実験」が行われた。ヴィニシウス、ロドリゴ、ベンゼマが共存した。しかしながらアンチェロッティ監督は単に3選手を置いただけではない。従来の【4−3−3】ではなく、【4−2−3−1】のシステムに3選手を嵌めたのだ。
左WGにヴィニシウス 、トップ下にロドリゴ、CFにベンゼマが入り、彼らは躍動した。2点目のシーンでは、3選手の鮮やかなコンビネーションから中央突破を見せ、ヴィニシウスがフィニッシュした。これが決勝点となり、シャフタール・ドネツクに競り勝った。続くヘタフェ戦ではベンゼマに休養を与え、ロドリゴをCFに、モドリッチをトップ下に押し出した。結果は同じ。勝利である。
「ベンゼマ、ロドリゴ、ヴィニシウスはスペクタクルなコンビネーションを見せてくれた。ベンゼマにゴールはなかったが、それを第一に考えてはいない」
「ロドリゴのポジションを変更した。それは相手のセンターバックにしっかりとプレスを掛けたかったからだ。守備の形を変え、もう少し中央寄りでプレーさせたかった」
これはシャフタール戦後のアンチェロッティ監督のコメントだ。
■ダブルボランチの採用
ダブルボランチのシステムを採用した効果が、もうひとつある。中盤の安定性だ。
マドリーは今夏、カゼミロを移籍金7000万ユーロ(約98億円)でマンチェスター・ユナイテッドに売却した。モナコから移籍金8000万ユーロ(約112億円)で加入したオウリエン・チュアメニが代役に選ばれたが、カゼミロとチュアメニではプレースタイルが異なる。
現在のマドリーの【4−1−2−3】のアンカーを任せる上で、カゼミロ以上の選手はいなかった。そこでアンチェロッティ監督はダブルボランチのシステムにして、トニ・クロースやエドゥアルド・カマヴィンガをチュアメニと組ませた。中盤のバランスが良くなり、それぞれの選手のパフォーマンスも安定した。
「カゼミロが移籍していき、簡単ではなかった。彼は10年にわたり、あのポジションでワールドクラスのプレーを見せていた」とはダビド・アラバの弁だ。チームの中にあった不安要素を、アンチェロッティ監督のタッチでプラスに転じさせている。
無論、マドリーはまだ完璧なチームではない。シャフタール戦では36本のシュートを浴びせ2得点、ヘタフェ戦では19本のシュートで1得点だった。だがアンチェロッティ監督は「フィニッシュの精度を欠いてはいる。しかし、シーズンのこの時期で、こういう状態というのは心配していない」と強気の姿勢だ。
「昨シーズンの我々の成功というのは、守備力に起因する。2ゴールあるいは3ゴールを決められれば良かった。けれど、(ヘタフェ戦で)我々が勝利したのは失点がゼロだったから。私はクリーンシートを高く評価する。多くのゲームでそれが達成できることを願っている」
2021−22シーズン、マドリーはリーガとチャンピオンズリーグで優勝してドブレテ(2冠)を達成した。リーガでは、38試合で30得点31失点。得失点差49というのは隠れた功績だった。
相手より1点多く奪えば勝利する。当たり前のことを当たり前にやろうとするアンチェロッティ・マドリーが、クラシコを前に態勢を整えている。