なぜエムバペは再び移籍の可能性が浮上しているのか?レアルの変化した状況とパリSGの思惑。
マーケットが本格的に動くのは、まだ先だ。
だがすでに移籍の報道が過熱している選手たちがいる。ハリー・ケイン(トッテナム)、デクラン・ライス(ウェスト・ハム)、マテオ・コバチッチ(チェルシー)…。そして、ここにきて、その“リスト”に加わったのがキリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)だ。
■エムバペの契約
エムバペは昨年夏、レアル・マドリー移籍に迫っていた。しかし、最終的にはパリ残留を決断し、所属クラブと契約延長を行った。その際、エムバペは2025年夏までの新契約を結んだと見られていた。ホームのスタジアムで契約延長の発表が行われた折には、「2025」のユニフォームを掲げるエムバペの姿があった。
だが実際には、エムバペの契約更新は「2年+1年の延長オプション」というものだったようだ。またフランス『レキップ』によれば、エムバペは先日、クラブに対して、その1年の延長オプションを行使しない旨を伝えたという。これが、再びエムバペの移籍の噂を加速させている。
■売り時とタイミング
エムバペに延長のオプションを行使する考えがないとなると、2024年夏に契約満了を迎える運びとなる。それはつまり、パリSGとしては、“売り時”がこの夏になるということを意味する。
パリSGは、この夏、すでにリオネル・メッシの放出を決めている。2022年夏に契約満了を迎え、退団を決断したメッシは、バルセロナからの関心があったものの、インテル・マイアミへの移籍を決断した。
また、ネイマールにも、移籍の可能性が浮上している。マンチェスター・ユナイテッドが、興味を抱いているのだ。
パリSGは2021年夏にバルセロナを退団してフリーになっていたメッシを獲得した。そこで、メッシ、ネイマール、エムバペの「MNM」と称される3トップを形成させた。
しかし、下手を打てば、その3トップが一気に抜ける可能性がある。「僕はパリとの契約をまだ残している。そして、プレーするために、ここにいる。クラブはできる限りのことをして、僕は彼らがやっていることに満足すると思う。それ以外は、僕の問題ではない」とはエムバペの言葉だ。エムバペ自身には残留の意思があるが、クラブが売り時と見れば、どのような結末になるかは不確かだ。
■マドリーのプラン
一方、エムバペの移籍先候補として考えられるのが、マドリーだ。
マドリーは今夏、カリム・ベンゼマ、マリアーノ・ディアス、エデン・アザール、マルコ・アセンシオが退団。とりわけ、アル・イティハド(サウジアラビア)への電撃移籍が決定したベンゼマの代役を確保するのは、フロレンティーノ・ペレス会長の急務となっている。
そう、状況は変わった。昨年夏の段階では、ベンゼマが絶対的なエースとして君臨していた。
だがベンゼマが去り、マドリーはトップクラスのゴールスコアラーを獲得する必要性に駆られている。そのようなシチュエーションで、エムバペが市場に売りに出されたとすれば、それは決して無視できるものではない。
「会長はやるべきことを分かっている。僕がエムバペについて言えるのは(マドリーに移籍したら)歓迎するということだ。僕だったら、この夏、獲得するよ」とはナチョ・フェルナンデスの言葉だ。
「ケインが移籍してきたとしても、ケインとエムバペは共存できると思う。僕たちは、ベンゼマという重要な選手を失った。彼は多くのゴールを決めてくれた。僕たちは次のシーズンに向けて、得点力を必要としている」
■積極補強に動く
先日、ペレス会長がサポーターにエムバペ獲得について聞かれ、「イエスだ。でも、今年の夏ではない」と答えていた。このやりとりは、メディアやSNSを通じて拡散され、話題を呼んだ。
マドリーはこの夏、移籍金1億300万ユーロ(約151億円)でジュード・ベリンガム(前所属ボルシア・ドルトムント)を獲得している。加えて、フラン・ガルシア(ラージョ・バジェーノ)の再獲得、ブライム・ディアス(ミラン)のレンタルバックが決まっている。
2022―23シーズン、マドリーはコパ・デル・レイで優勝した。ただ、主要タイルの奪還は、そのひとつのみ。23―24シーズンに向け、大型補強に動こうとしている。
ペレス会長はかつて、デイビッド・ベッカム獲得の際に「Never, never, never」と語り、「絶対にない」と断言した後で、ベッカムの獲得を決めた過去がある。エムバペに関しても、同様のことが言える。つまり、この夏、何が起きてもおかしくはないのである。