同床異夢の立憲民主党と国民民主党の合流劇に“元重鎮”が吠えた!
同床異夢は変わらず
立憲民主党と国民民主党の合流問題が重要局面に差しかかっている。7月28日には都内のホテルで両党と連合との意見交換会が開かれた。立憲民主党の福山哲郎幹事長と国民民主党の平野博文幹事長、そして連合の相原康伸事務局長で行われた第1回の合流協議に続き、今回は神津里李生会長、立憲民主党の枝野幸男代表と国民民主党の玉木雄一郎代表を交えた会談だ。合流に強い期待を抱く連合に対し、立憲民主党の枝野代表と国民民主党の玉木代表はともに「一定の方向性は共有できた」と述べた。しかし現実は同床異夢だ。
「根幹について折り合うことが大事だ」
翌29日に開かれた国民民主党代表の定例会見。通常なら厳格に午後2時ちょうどに始まるはずが、執行役員会を終えた玉木代表は午後1時半ごろ、慌ただしく党本部を後にした。戻ってきたのは午後2時17分。19分遅れで会見は始まった。
「大事なことは合流するかどうかの根幹について折り合うことが大事だ。いま一番の対象となっているのは党名の問題だ。消費税を含む税制の扱いや憲法議論など政策協議を進めてもらっても、根っこの部分が決まらないと水泡に帰してしまう」
このように玉木代表は党名の決定方法を最優先としているが、実際に両党の協議はその通りに進んでいない。同日午前に開かれた両党幹事長会談では、以下のように合意されている。
・両党幹事長・政調会長の4名で綱領・規約の検討作業を開始する
・両党幹事長間で代表選の手続き等のとりまとめ作業を開始する
・両党幹事長間で党名に関する民主的な手続きについて引き続き検討する
代表の発言を“上書き”する幹事長
ここで両党の幹事長が党名を決定する手段を「選挙」としていない点は重要だ。前日の連合を交えた合流協議後でのぶら下がりでも、玉木代表が「(党名を決定するのは)無記名の投票以外はない」と述べたところ、平野幹事長が「それでないとダメだというのではなく、みんなが納得するやり方」と玉木代表の発言を“上書き”していた。
そうした矛盾があることについて、会見で「両院議員懇談会を経て決まった党の(政党名決定に関する)コンセンサスとは何か」と記者から質問された玉木代表は、「民主的手続きというのは、自然に考えれば無記名投票ということだ。私の知恵では他の手段は浮かばない」と述べ、「(しかし)それだとなかなか難しいということで、両党の幹事長が脳みそに汗をかいているというのが現状だと認識している」と皮肉を利かせて答えている。
選挙目当ての「大きなかたまり」では、選挙後に大きくなれる保証はない
なぜ代表の考えと幹事長の行動が食い違うのか。それは国民民主党内で「対等な立場で組織と政策を決定すべき」とする少数の玉木派と、それにこだわらずとりあえず「大きなかたまりを作りたい」とする多数の合流派(アンチ玉木派)に分かれるからだ。
ここで留意すべきことは、ここで言う「大きなかたまり」とは次期衆議院選挙対策に過ぎないことだ。もっとも選挙で負ければ、大きくなれるはずもない。
実際に「大きなかたまり」を作るとは、本来は大きな政治勢力を結集するという意味であったはずだが、もはや二の次になっており、比例区での復活当選が有利になることに他ならない。だがそれぞれの候補が小選挙区で当選すれば、自ずから「大きなかたまり」になっていく。それが「政権交代を目指す」という本来の意味であったはずだ。
かつての古巣の惨状に、“元重鎮”が嘆いた
「政党の綱領とは政策に裏打ちされていなければならないものだ。選挙で生き残るための新党結成では、国民の理解は得られない」
輿石東元参議院副議長は7月29日夜、電話の向こうでこのように嘆いた。民主党政権時に党の幹事長を務め、強面と辣腕で鳴らした輿石氏だが、2016年に政界を引退した後は時折後輩議員の相談に応じるものの、めったに表舞台に出ることはない。そうした輿石氏にとって、単なる選挙目当てに流れがちな立憲民主党と国民民主党の合流劇は、歯がゆいことこの上ないようだ。
輿石氏が述べるように、議員には大義の選挙対策でも、国民にとってそれが大義とは限らない。しかしながら両党は、早急に綱領や規約の検討作業に着手する予定。選挙も経ずに党名を作り、政策に裏打ちされない綱領を持つインスタント政党で国民の支持が得られるなら、政治家ほど楽な商売はないだろう。