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【最新研究】じんましんの治療に全身性ステロイド薬は有効か?副作用のリスクも解説

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

じんましん治療におけるステロイド薬の効果と副作用リスク

じんましんは、皮膚に生じる赤く盛り上がった発疹(膨疹)を主症状とする皮膚疾患です。急性じんましんと慢性じんましんに分類され、多くの場合、抗ヒスタミン薬が第一選択となります。しかし、難治性の場合、全身性ステロイド薬が使用されることがあります。今回、ステロイド薬のじんましんに対する効果と安全性について、最新の研究結果を解説します。

【ステロイド薬はじんましんの症状を改善する】

メタアナリシスの結果、抗ヒスタミン薬と比較して、全身性ステロイド薬の併用は、じんましんの症状を改善することが示されました。特に、抗ヒスタミン薬単独では改善が見込めない難治性の場合、ステロイド薬の追加により、症状が改善する可能性が高いとされています。ただし、その効果は抗ヒスタミン薬への反応性によって異なり、抗ヒスタミン薬単独でも改善が期待できる場合は、ステロイド薬の追加効果は限定的となる可能性があります。

【ステロイド薬は痒みの改善にも効果がある】

じんましんの主な症状の一つである痒みに対しても、ステロイド薬は改善効果を示すことが明らかになりました。ただし、痒みの改善効果に関するエビデンスの確実性は低く、更なる研究が必要とされています。痒みは患者のQOLに大きく影響する症状であり、ステロイド薬の痒み改善効果は、じんましん治療において重要な意味を持つと考えられます。

【ステロイド薬の副作用リスクを考慮する必要がある】

一方で、全身性ステロイド薬の使用には副作用のリスクが伴います。メタアナリシスでは、ステロイド薬使用群で副作用の発生率が高いことが示されました。主な副作用として、消化器症状(胃炎、消化不良、嘔吐など)、頭痛、不安、倦怠感、鎮静作用などが報告されています。したがって、ステロイド薬の使用にあたっては、その効果と副作用のリスクを慎重に比較検討する必要があります。

じんましんは、皮膚科やアレルギー科を受診する患者さんの中でも比較的頻度の高い疾患です。治療薬の選択に迷ったら、まずは抗ヒスタミン薬の効果を確認し、難治性の場合にステロイド薬の使用を検討するのが賢明でしょう。ステロイド薬の使用を考える際は、その効果と副作用のリスクについて、医師とよく相談することが大切です。

参考文献:

Chu, X., Wang, J., Ologundudu, L., Brignardello-Petersen, R., Guyatt, G. H., Oykhman, P., ... & Chu, D. K. Efficacy and Safety of Systemic Corticosteroids for Urticaria: A systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials. Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice. [In Press] 2024.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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