北半球で珍しい「オゾンホール」発生、しかも巨大
有害な紫外線から私たちを守ってくれる、良いイメージのオゾン層ですが、その名前の由来は意外にもギリシャ語の「臭い(くさい)」なのだそうです。そのにおいは、青臭いとか腐敗臭などと書かれてあります。
オゾン層は、地上から10~50キロほどの高さの「成層圏」に位置し、オゾンホールは南極上空に発生するのが一般的です。
しかし現在、北極上空に巨大なオゾンホールが開いていることが明らかになりました。
北半球のオゾンホールの様子
タイトルの図はNASAが発表した3月28日のオゾンホールの様子です。
図の中で濃い青色で示された部分が、オゾン濃度が薄い場所、つまりオゾンホールを表しています。色分けは「ドブソン単位(DU)」に基づいてされています。ドブソン単位とは、オゾン層を地表面に移動させた場合の厚さを意味していて、たとえば赤い部分の50DUというのは、5ミリの厚さに匹敵します。
このオゾンホールは今週、イギリスの方向に移動する恐れが出ています。このためヨーロッパ北部では、いつもより紫外線量が上がると予想されています。
オゾン層の破壊理由
オゾンホールが発生する一つの理由は、地表からの化学物質の排出です。たとえばフロンの場合は、上空で強い紫外線に当たることで塩素を発生させ、それがオゾンを次々と壊していくのです。
またオゾンは、極端な低温状態でも破壊されます。成層圏の気温がマイナス78℃以下まで下がることで、特殊な雲が発生、その雲の表面で化学反応が起こって、オゾンを破壊する成分が発生するのです。
この雲は、高度20キロほどの高いところにできます。日の出前や日の出後にも太陽光が当たって、真珠のように虹色に輝くことから「真珠雲」などとも呼ばれます。
そもそもオゾン層が南極上空の話であるのは、南極の方が低温であるためです。世界の地上の最低気温記録であるマイナス89.2℃も、南極のボストーク基地で観測されています。
なぜ北極上空に発生?
ではいま、なぜ北極にオゾンホールができているのでしょうか。
それは普段ではありえないくらいの冷たい空気が、北極上空を覆っているためです。その寒気は1979年以来で最強と言われています。
北極上空では、1997年と2011年にも巨大なオゾンホールができたことがあります。しかし今回のオゾンホールは、それらを上回る大きさで、観測史上最大である可能性があるようです。
どんな影響がある?
では、北半球のオゾンホールはどのような悪影響をもたらすのでしょうか。
ドイツにあるアルフレッド・ヴェゲナー研究所のレックス教授によると、「北極圏の地域は、この時期太陽が地平線に昇り始めたばかりなので特に影響はない。ただ数週間のうちにオゾンホールがヨーロッパ方面に移動する恐れがある。イギリスや北欧などでは、紫外線量が上がるので、日焼け止めを塗ったほうがいいかもしれない」とのことです。