ソニー不在で任天堂の“本命”発表なし 存在感が薄れるE3
11~13日(米国時間)に米ロサンゼルスで開催された世界最大のゲームイベント「エレクトロニック・エンタテインメント・エキスポ(E3)」。毎年ゲーム業界関係者の注目を集めますが、今年は業界の“顔”ともいえるソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は不在で、任天堂から新ゲーム機の発表もなく、かつての存在感が薄れつつあります。
PS3やWiiなどが披露されたころの2006年のE3は、多くの関係者が詰めかけ、試遊台に長い列ができるなどゲーム業界の中心的なイベントでした。しかし近年は、E3の存在感が薄れたという声も関係者から聞かれるようになり、今年は盛り上がりに欠けたという声が大きいのです。その指摘は、2016年にエレクトロニック・アーツなど世界的な大手ゲームメーカーが出展を見合わせたことからささやかれるようになりました。今年にSIEが出展を見合わせたのも、その流れと言えるでしょう。
背景にあるのは、ビッグタイトルを持つゲーム会社であれば、わざわざ発表会を開かなくても、ネットで情報発信をするだけでメディアや多くのユーザーの目を引き付けられるようになったことです。そこには発表会開催時の費用対効果に対する懐疑的な見方もあります。一方でネットの映像配信は、手間もコストも抑えて相応のPR効果が見込める……というのが、業界の共通認識です。
任天堂もかつて、メインとなるE3直前の発表会では現地の会場を借り切って華々しく開いていましたが、今は事前収録の映像を流す形にしており、明らかに力の入れ方が違います。しかも今回は、関係者が“本命”と注目していた「ニンテンドースイッチ」の新バージョンの発表がなく、ソフトの紹介だけ。大手ゲーム会社の社員は、任天堂の発表について「予想の範囲内。(ゲーム機の)新発表がなかったのは、E3でなくても注目を集められると判断したのだろう」と淡々と話しています。
さらに言えば、ゲーム業界の関係者は、毎年3月ごろに開かれるゲーム開発者向けの国際会議「ゲームディベロッパーズゲームカンファレンス(GDC)」を重視する傾向にあります。グーグルの新ゲームプラットフォーム「STADIA」の発表もGDCでした。
もちろん、以前ほどではないにしても、E3のブランド力は健在なのも確かで、各社ともにこの時期に合わせてさまざまな動きをしています。マイクロソフトは新型ゲーム機「プロジェクトスカーレット」を発表し、動画配信大手のネットフリックスもゲームビジネスに参入することを明かしました。E3不参加のSIEもE3の前に合わせて最新ゲームの映像を流し、グーグルもE3の前のタイミングで「STADIA」の価格やサービス開始時期などを出しています。だが各社の動きを総合的にみると、E3が以前のような絶対的な存在ではなく、選択肢の一つにすぎなくなったともいえるでしょう。
今後のゲーム市場は、既存の据え置き型ゲームとスマホゲームに加え、グーグルやアップルなど非ゲーム系の会社が発表した新プラットフォームを発表するなど多様化する流れになっています。関係者は「どこが勝つのか先が読めない」と悩んでいるように、E3の扱いにも悩むことになりそうです。