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「遠藤保仁選手は視野が広く頼りになる」韓国代表FWファン・ウィジョ(ガンバ大阪)インタビュー前編

金明昱スポーツライター
ガンバ大阪で今季絶好調のファン・ウィジョ。J1残留の救世主となれるか(筆者撮影)

 ジャカルタで開催されたアジア大会で金メダルを獲得し、その後、国際親善試合の韓国代表メンバーに選出され、コスタリカ戦とチリ戦に出場。休む間もなく、すぐにガンバ大阪に合流したファン・ウィジョ。

 9月某日、ガンバ大阪のクラブハウスで待ってくれていたファン・ウィジョ。「日本に帰ってきたらインタビューしましょう」と、その約束を律儀に守ってくれた。

 かねてから、彼の今季の活躍ぶりが気になっていた。現在、ガンバ大阪はJ1残留を賭けた戦いを続けているが、やはりチームにはこの男の得点力が欠かせない。

 ”神様、仏様、ウィジョ様”――。サポーターやファンからはそんな声も聞こえてくる。

「チームの雰囲気はとてもいい」

――アジア大会と国際親善試合が終わったあと、ガンバ大阪に合流し、第26節のヴィッセル神戸戦と第27節の清水エスパルス戦で立て続けに得点を決めました。リーグ11得点目ですが、チームもサポーターも首を長くして待っていたと思います。

 今のチームには勢いがありますが、今はとても気分がいいです。アジア大会でも金メダルを取って、結果を残して大阪に帰ってきました。この状態を保っていきたい。サポーターやファンも応援してくれていますから、それに応えられるような結果を残していきたいです。今もまだチームはしんどい状況にありますが、降格圏から一日でも早く抜け出せるようにがんばりたいです。

――3連勝して確かに勢いがあります。チームの状態はどうでしょうか?

 チーム内の雰囲気はとてもいいんですよ。みんないい準備ができているので、このあとの試合も十分に勝てる力はあると思います。能力の高い選手が集まっているので、十分に可能だと思います。

――ここまで11得点。好調の要因を教えてください。

 昨年7月にガンバ大阪に移籍してきてからの6カ月は、チームに溶け込むための努力をしました。練習と試合をこなすなかで、チームの戦術や選手の特長をつかむことに集中しましたね。その結果が今季のゴールにつながっていると思います。

「宮本恒靖監督はとても緻密」

――Jリーグに慣れるまで、時間がかかりましたか?

 来日した当初は、チームの選手のことも、サッカースタイルもどのようなものなのかよくわからなかったので、とにかく慣れるまで時間はかかるだろうなと思っていました。昨年は13試合に出場して3得点でしたが、決して辛いシーズンではありませんでした。まずはJリーグに適応するための期間と考えていました。それに今季はシーズンオフからしっかりと準備してきたので、チームにしっかりと溶け込むことができていると思います。

「自らのゴールでチームを勝利に導きたい」と語る。(写真提供・GAMBA OSAKA)
「自らのゴールでチームを勝利に導きたい」と語る。(写真提供・GAMBA OSAKA)

――ガンバ大阪には元日本代表でチームの顔でもあるMF遠藤保仁がいますが、実際に一緒にプレーしてみて何か感じることはありますか?

 チームの中心選手として試合をしっかり組み立てて、リズムを作ってくれる選手です。私の特長をつかんでくれているのもよく分かりますし、いいタイミングで質の高いパスをたくさん供給してくれます。プレーを見ていると、とても視野が広い。試合を動かすバランスもあります。テンポとリズムのある緩急をつけたパスでチャンスを作り出してくれるので、FWにとってはすごく頼りになります。

――今年7月に宮本恒靖監督が新たに指揮官となりましたが、どのような印象をお持ちですか?

 選手時代にガンバ大阪や日本代表選手として活躍している方ですが、監督になってからはチームプレーを強調します。選手たちも新しい監督についていくと、一つにまとまっていますし、いい流れにチームを導き出すのはとても上手いと思います。相手をしっかり分析したうえで、緻密な戦略を立てる監督で、練習からそれを徹底しています。

スンギュ兄、ジェソク兄とは韓国料理

――2017年7月にガンバ大阪に移籍し1年が過ぎました。大阪での生活には慣れましたか?

 日本での生活にはもう慣れましたよ。もちろん、私一人だと大変だったかもしれませんが、チームに(オ・)ジェソクヒョン(兄)もいますし、ヴィッセル神戸にもGKの(キム・)スンギュヒョン(兄)がいるので、普段から一緒に食事に行ったりして楽しく過ごせていますよ。

――どのくらいの頻度で一緒に食事にいくのですか?

 私が神戸に行ったり、スンギュヒョンが大阪に来たりすることもあります。日本料理も口に合うので好きなのですが、韓国の選手が集まったら必ず韓国料理屋になりますね(笑)。懐かしい味は食べたくなるものです。大阪と神戸にはおいしいお店が本当に多い。行きたいところを探しています。週に2~3回くらいですかね。多いですか?(笑)

――そんな頻繁に?(笑)

 大勢で食べるほうが楽しいですからね。今度、おいしいお店がどこなのかもメモして教えますよ(笑)

――ところで、日本語は上達しましたか?

 日本語はまだまだですね……(笑)。もちろん簡単なものは分かりますが、まだ会話できるレベルではありません。リーグが始まってから忙しくて、まともな勉強ができていません。もちろん、一日でも早く話せるようになりたいです。チームメイトとも、もう少しコミュニケーションを取れるように、勉強がんばります。

チームメイトとの連携もスムーズだ。(写真提供・GAMBA OSAKA)
チームメイトとの連携もスムーズだ。(写真提供・GAMBA OSAKA)

――最初に覚えた日本語は何ですか?

 最初に覚えた日本語は「あっつい!」でした(笑)。今年もそうですが、去年の夏も暑かったので、みんなが言っていたのを聞いてそれを覚えましたよ(笑)

――練習や試合中は簡単な日本語で会話したりするのですか?

 プレー中の細かい指示や難しい日本語については、通訳やジェソクヒョンに助けてもらっています。ボディランゲージでがんばって伝えています(笑)。日本に来て6年目のジェソクヒョンはもう日本語がとても上手で、日本語能力の高さにビックリしましたよ。

「川崎フロンターレは難しい相手」

――そもそも、日本を選んだきっかけは何だったのでしょうか?

 Kリーグの城南FCでプレーしている時代、2015年のアジアチャンピオンズリーグ(ACL)でガンバ大阪と対戦したことがありました。当時、ガンバ大阪を指揮していた長谷川健太監督(現・FC東京監督)が私のことを評価してくれていて、声をかけてもらっていたのがきっかけです。私も当時、ガンバ大阪のサッカーを見て、いいチームだという印象がありましたので決断しました。

――Jリーグで1年過ごしてみて、うまいなと感じる選手はいましたか?

 誰か一人の選手を選ぶのは難しいですよ。Jリーグにはすばらしい選手がたくさんいますから。ただ、すごく難しいチームだなと感じたのは、川崎フロンターレです。とにかく守備も攻撃も簡単に崩せない。それだけ強いチームということです。パスワークが速く、その数も多い。スピードもあるので、手ごわいチームという強い印象がありますね。

――ガンバ大阪サポーターの印象はどうでしょうか?

 ガンバ大阪のサポーターは本当に熱いですよね。勝利のために一丸となって応援してくれますし、そんなサポーターの前では、絶対に負けられない。そんな気持ちでいつも戦っています。今季はまだ難しい状況が続いているのですが、しっかり結果を残していきたいと思います。

(後編に続く)

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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