社会保険料も「税」です-「異次元の少子化対策」の財源捻出問題から得られた教訓-
報道によれば、岸田文雄首相が今年1月に打ち出した「異次元の少子化対策」は、政策メニューも財源もほぼ固まったようです。
(NHK NEWS WEB 2023年5月23日 19時13分)
(NHK NEWS WEB 2023年5月24日 6時02分)
「子育て支援連帯基金」「こども保険」「消費税」など様々な案が有識者や財界から出されましたが、結局、「異次元の少子化対策」の財源問題については、基本的には、「歳出改革」、「資産売却(赤字国債発行と同じ)」、「増税」の三点セットの防衛費拡充と同じスキームで決着したようです。
今後の焦点は、「歳出改革」、「資産売却」、「増税」のそれぞれで、どれだけの財源を捻出するか、特に、増税(医療保険料引き上げ)規模の問題でしょう。
「異次元の少子化対策」の財源捻出問題を通して、幾つか教訓が得られたと個人的に思いますので、それをまとめておきたいと思います。
1.社会保険料は税ではないと誤解されている
2.社会保険料引き上げは増税より反対が少ないと認識されている
3.社会保障含めて歳出にはまだまだ無駄(削減の余地)がある
4.無駄な歳出は別の(無駄な)歳出に置き換えられる
5.政府は政策の費用対効果を度外視する(政策の効果を示さない)
6.日本の政党は右から左まで社会保障の拡大を支持する
特に、政府の公式な「異次元の少子化対策」の効果推計なのか不明なものの、経済財政諮問会議の民間議員から提出された試算では、出生増一人当たり1億円から2億円かかるとされ、薄くコスパの悪い少子化対策を敢えて社保税増税で実施するのですから、結婚・出産予備軍、現在子育て中の世帯の多くは負担増となるのは不可避で、当然、少子化は一層加速するのは間違いありません。賃上げがなされても手取りが減るのでは暮らしにゆとりは出ません。
しかも、子育て支援のための「こども金庫」なる新たな特別会計を創設するので、少子化が加速する度に、子育て支援は拡充され、少子化加速の無限ループは続くでしょう。そもそも、特別会計は特定の財源と支出が紐付けられるので、肥大化し勝ちで、無駄の温床として削減されたのをもう忘れたのでしょうか?
経済(日本経済新聞 2023年5月22日 7:25)