文政権の「米中天秤外交」が試練! 恐れる「THAAD報復」の二の舞!
文在寅政権の「米中天秤外交」が試練に立たされている。先月の米韓首脳会談に続き主要7カ国首脳会議(G7)拡大会議でも米国寄りの姿勢を示したことが原因だ。
韓国は「特定の国(中国)を指したものではない」と弁明しているものの英国で開かれたG7拡大会議での共同声明は明らかに中国牽制に主眼が置かれている。文在寅大統領がこの共同声明に調印したことは欧米と足並みを揃えたと中国側に受け止められても致し方がない。
すでに中国外務省は「台湾海峡の平和と安定」に言及した先月21日の米韓共同声明を問題視し、韓国に対して「台湾問題で言動を慎み、火遊びをするな」と批判を浴びせたばかりだ。特に射程800kmに抑えられていた韓国のミサイル開発制限が撤廃されたことには苛立ちを露わにしている。米国の差し金でミサイルの矛先が中国に向けられる恐れがあるからだ。今後、中国の反発次第では蜜月だった中韓関係に亀裂が生じるかもしれない。
こうしたことからすでに韓国の政界、経済界では外交や経済分野で報復を受けるかもしれないとの不安の声が広がっている。
何よりも外交では「コロナ禍」で延び延びとなっている習近平主席の年内訪韓は危うくなったと言える。というのも、朴槿恵前政権がハネムーンの関係にあった習近平主席の要望を拒否し、2016年7月に米軍最新迎撃システム「THAAD(高高度防衛ミサイル)」の韓国配備要請を受け入れた時、中国は「どのように弁明してもだめだ」(王毅外相)と激怒し、直後のアジア欧州会議(ASEM)首脳会議での李克強首相と朴槿恵大統領との首脳会談をスルーした経緯があるからだ。
仮に下半期までに「習近平訪韓」が実現しなければ、来年3月の大統領選挙で実質的に終焉する文政権下での中韓首脳会談は困難となる。これ以外にも、一部では中国が南北等距離外交から再び北朝鮮寄りになるのではとの懸念も出ている。
外交で対立や摩擦が生じると、必ず経済制裁というカードを切るのが中国であることから経済界では経済制裁を危惧している。
実際、THAADの時も中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹誌である「環求時報」は「言葉で抗議するだけでなく、相手が痛がるような強力な制裁を掛けるべき」と主張し、韓国が配備を決定した日には社説で「韓国配置を積極的に推進した韓国政治家らの中国入国を制限し、彼らの家族の企業を制裁すべき」と「報復措置」を唱えていた。
韓国は中国との間で2015年12月に自由貿易協定(FTA)を発効しているので中国は韓国に関税による直接的な制裁は掛けられない。しかし、非関税障壁を通じた韓国製品の輸入制限は可能である。過去にも輸入農水産物に対する検閲強化や通関拒否、不買運動などを行ってきた。
今から21年前の2000年6月に韓国が農家を保護する必要性から中国産ニンニクに課していた関税を30%から一気に10倍の315%に上げたところ、中国当局は対抗措置として韓国からのポリエチレンやハンドフォンの輸入を大幅に規制する措置を取ったこともあった。
中国の経済報復が最も凄まじかったのがTHAADの時の韓国製品不買運動と韓国旅行制限措置だった。
中国人の韓国団体旅行が禁止となったことで中国人観光客が半減し、韓国観光業界は深刻な打撃を被った。特に敷地を提供したため「環球時報」から「ロッテグループの中国市場における発展に終止符を打つべき」と狙い撃ちされたロッテは中国内での不買運動に直面しただけでなく、空港内のロッテ免税店ももろに影響を受けた。
中国が本気で自国民に韓国旅行を自粛するような目に見える措置を取れば、韓国観光業は再び大きなダメージを受けることになるだろう。
韓国の貿易も観光収入も今や中国を抜きにしては語れないほど依存度が大きい。
中韓は来年、国交樹立30周年を迎えるが、国交樹立した1992年の貿易量は6300億円だった。それが、「コロナ」前の2018年は35兆円に達し、韓国の黒字は11兆円に上る。中国からの観光客も419万人に達している。
文政権内には韓国がこれ以上、米国に擦り寄らないよう今回は報復や経済制裁を自制するのではとの楽観論もあるが、内心戦々恐々となっているようだ。