ビットコイン先物の上場計画相次ぐも、価格インパクトの評価は割れる
仮想通貨ビットコイン市場で新たな動きが報告されている。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が29日、市場運営会社NASDAQが2018年4~6月期にもビットコイン先物取引の上場を計画中と報じたのだ。既に米国の大手取引所ではCBOEとCMEが規制当局の承認を前提にビットコイン先物の年内上場計画を発表しているが、そこにNASDAQも新たに名乗りを上げる格好になる。
現在、ビットコインは「取引所」と言われる仮想通貨交換業者が売買の仲介や販売を行っており、主に個人投資家が取引を行っている。一方、主要取引所でビットコイン先物が上場すれば、投資家にとってはビットコイン価格の値下りに備えたヘッジが可能になることに加えて、機関投資家が本格参入するきっかけになる可能性がある。
既にゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースといった大手金融機関が、CMEにビットコイン先物が上場した場合には取引の仲介を行う可能性を検討中と報じられているが、いわゆるプロ投資家の参入する条件整備が急ピッチに進んでいる。
従来は、法規制の不確実性、更にはマネーロンダリングに使用される可能性などから、一部を除いて大手取引所はビットコイン先物の取り扱いに慎重姿勢を示していたが、急激な価格高騰を受けて個人投資家のみならず機関投資家の関心も高まり始める中、取引環境が急激に整備されつつある。
ここ最近のビットコイン価格が高騰している一因には、CMEが年内上場計画を発表した影響が指摘されていたが、更に市場が広がる兆候が増えている。
■楽観視ばかりできないビットコイン先物の誕生
先物取引に関しては、値上がりでの利益を想定した「買い」以外にも、値下りでの利益を想定した「売り」も可能になる。このため、これまでの個人投資家主導で値上がりしたビットコイン価格に対して、機関投資家がバブルだとの前提で空売りを仕掛けてくる可能性も十分にある。一般的に言われているように、「ビットコイン先物の上場→ビットコイン価格の上昇」とのロジックは必ずしも成立しない。
しかし、強気相場ではこの種の慎重な議論は歓迎されておらず、極めて単純な「ビットコイン先物の上昇→機関投資家の資金流入→ビットコイン価格の上昇」とのロジックが広く支持を集めている。
ビットコインの発行数は現時点で約1,671万ビットコイン(BTC)であり、現在のビットコイン価格だと18兆~19兆円程度になる。ただ、これはトヨタ自動車の時価総額23兆円には届かず、「通貨」と言われながらも世界的な大企業であれば1社分の時価総額に過ぎない。
ここに機関投資家の資金が流入すれば更にビットコイン価格が上昇するというのが強気派の見方になるが、個人投資家中心の単純な市場構造が機関投資家も含めた重層構造に変化した際に、現在のビットコイン価格の上昇ロジックを維持できるのかは、実は疑問の声も多い。