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サントリー沢木敬介監督が見た、「コントロール」できない要因とは。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
流キャプテンは、日本代表でもリーダー格。(写真:FAR EAST PRESS/アフロ)

 愛がある。直接的に選手を「バカ」となじることはしない。ただ、選手のパフォーマンス次第では冗談を交えて「バカみたい」と振り返ることならある。

 12月9日、東京・秩父宮ラグビー場。日本最高峰トップリーグで前年度王者のサントリーは、NECとの第11節を28―13で制した。2つある組のうちレッドカンファレンスの首位を守り、勝ち点を47に積み上げる。プレーオフに進める2位以内を確定させた。

 もっとも試合内容は、満足のゆくものではなかったという。攻め込んで、攻め込んで、手詰まりになるシーンが特に後半、増えた。NECの接点での働きかけでスムーズな球出しを制限され、その延長線上でシステムエラーを起こした格好か。

 冒頭で「望んでいるプレーはできなかった」とはなした就任2年目の沢木敬介監督は、具体的な反省点を聞かれる延長でつい、笑みをこぼす。質問者を笑わせる意図からか「…みたいに」を重ねた。飾らぬ気風は変わらず。

 以下、公式会見の一問一答(編集箇所あり)。

沢木監督

「皆さま、お疲れさまでした。まずはプレーオフへ行けることに決定したのは明るい材料ですけども、ゲーム内容を見れば、自分たちが望んでいるプレーはできなかった。あと2試合、レベルアップして、ファイナルに向けていい準備をしていきたいと思っています」

「ありがとうございました。結論から言えば、本当に質の低いラグビーをしてしまった。それを修正できないまま試合を終えてしまった…。という感想です。自分らのラグビーをもう1回、見直して、次の神戸製鋼戦に自信を持って挑めるようにします」

――不満足な点は何か。

沢木監督

「まずは同じミスを何回も繰り返しているということですね。…バカみたいに。子どもでも怒られたら次は止めますけど、きょうは何回も繰り返して。…バカみたいに」

「そのミスということですが、簡単にボールを失うこのがすごく多かった。(スペースへの攻めを志向する)サントリーはボールを持って相手をコントロールしないといけなかったんですけど、ブレイクダウン(接点)のところ(のトラブル)、イージーなパスミスもあった。普通のフェーズのなかでもひとつのパスの精度がものすごく悪くて、自分たちのリズムを作れませんでした」

――攻撃時のブレイクダウンについて。

沢木監督

「まぁ(相手の)タックラーの向き方のところでストレスはあったと思うんですけど、そんな言い訳を探しても仕方ないんで。その前に自分たちがコントロールできる状況を作れなかった。そこが、反省すべき点だと思います」

「自分たちが持ち込んだ時、自分がコントロールできた状態でアタックできていれば、基本的にボールを失うことはないんですけど、相手に上体を浮かされたり、自分の体をコントロールされている時にボールを失うことが多かった。そこが次への修正点だと思います」

――流選手ら代表勢が後半から登場も、ペースは掴み切れなかった。

「同じミスを繰り返し、修正できなかった。僕を含めたリーダーが正しい道を示せなかったというか、次にどうするかというコミュニケーションができなかった。僕を含めたリーダー反省の残る試合でした」

 

 実は、対するNECの亀井亮依ゲームキャプテンは、戦いながら「サントリーのプレー中のコミュニケーションの質と量」に舌を巻いていた。それでも当事者は、その「コミュニケーション」の内容を試合直後に反省していたこととなる。王者が自らに課すハードルの高さがうかがえる。

――相手のディフェンスが健闘していた側面もあったのでは。

「いや…。そこまですごく激しかった、ということはないのですけど…。(自軍ランナーが)少し片手になった時にボールを取られたり、味方がボールを蹴ってしまったりということがあった。そこはもっとコントロールをしないといけないですし、ボール保持者と後ろの選手がもっと(プレーしながら)コミュニケーションを取らないといけない部分もあります。相手どうこうより、自分たちに問題があると思います」

 サントリーは6月、スーパーラグビーのワラターズと対戦。19―21で敗れている。この時も陣営は「悔しい」を連呼。そもそも敵は自分たちのなかにある、との意識を共有しているようだ。要所でナンバーエイトのアダム・トムソンらがボールへ噛みついたNECの献身的な防御について聞かれても、自分たちの話に転じるのは自然な流れだ。

――今後は。

沢木監督

「意図的にボールを運べるよう、その仕組みをやり直す。そこです。きょうはインディビジュアル(個人)のミスが多くて。チームの課題は、さっきも言った通り、同じミスをいかに繰り返さないか」

――「意図的にボールを運べるよう、仕組みを…」とは。

沢木監督

「きょうは、ブレイクダウンのところでそれができていないんですよ。だから大前提はブレイクダウンの質を上げる」

――ランナーの姿勢、サポートのタイミングや人数などのことでしょうか。

沢木監督

「…まぁ、ブレイクダウンです。ブレイクダウンの質です」

――プレーオフを見据えて。

沢木監督

「プレーオフに出てくるチームを予測して、相手への対策ももちろんやらないといけないですし、サントリーのラグビーは簡単にボールを失っていてはできないので。相手にボールを渡す時は完全にコントロールした状態で渡す(追っ手を決めた状態でスペースへキックを蹴るなど)。きょうみたいに簡単にボールを渡す、その意識を、しっかり変えないといけない」

 繰り返されるメッセージは一貫している。問題点をいかに解消するか。以後のトレーニングのプランにも注目が集まる。

 ちなみに沢木監督は、ある若手選手曰く「個人面談の時はいろいろといじっていただける」。場面ごとにかなりのキャラクターのギャップがあるとみられる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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