ノルウェーテロから6年目。当時の首相があの日を振り返る「国への非情な攻撃」
「あの日」から6年目。アンネシュ・ベーリング・ブレイビクによって、77人の命が奪われた2011年7月22日から6年の月日が流れた。
ノルウェーでは毎年この日になると全国各地で追悼式がおこなわれる。極右思想を持ち、移民を受け入れる母国の政治の在り方を否定していたブレイビク。首都オスロ中心地にある政府庁舎を爆破後(犠牲者8人)、郊外にあるウトヤ島で銃乱射により69人の命を奪った。
ウトヤ島では当時、労働党の青年部の若者たちが、年に一度開催されるサマーキャンプに参加していた。労働党はノルウェー最大政党であり、移民背景をもつ政治家も多く、移民の受け入れに寛容な党として知られていた。
国の未来のために政治を議論する若者を狙う行為は、ノルウェーの民主主義、国の在り方そのもの、若者という未来への攻撃と否定に他ならなかった。
爆破があった政府庁舎では、この悲劇の日を忘れず、テロの日を体験しなかった若者たちに語り継ぐことを目的として、2015年に「7/22センター」がオープンされた。
ブレイビクが事件当日に使用した所有物や爆破物となった車、ウトヤ島に残された若者たちの携帯電話などが展示されている。
「生々しすぎる」という声もあったが、何が起きたかをありのままに伝えるために、議論のきっかけとなるように、教育者が子どもたちに過去を説明しやすいようにという目的で設けられた。
21日、NTB通信社によると、これまでに10万5千人が訪問。144のクラス(3600人の生徒)を含む。
ヤン・トーレ・サンネル地方自治大臣(保守党)は通信社にこう語る。「我々の予想を超える訪問者数です。この場所がどれだけ重要で、必要とされているかを意味しています。我々多くの人にとって、あの日は今でも毎日の一部です。しかし、多くの若者にとっては歴史です。とても暴力的に、そして正直に、このセンターでは何が起こったのかが展示されています。強烈な写真やビデオ、当時のSMSやツイッターに触れることで、事件を身近に感じることでしょう」。
今年の追悼式の前日、7/22センターではトークショーが開催された。
事件が起きた日、自分の政党仲間の死の知らせを次々と受ける中、首相として国を指揮しなければいけなかったイェンス・ストルテンベルグ元首相(労働党、現NATO事務総長)。当時16才でウトヤ島の生存者であり、友人や家族の命をブレイビクに奪われたララ・ラーシルドさんが、あの日を語った。
自身も若い頃は、青年部仲間と共に、楽しい夏合宿を過ごしたストルテンベルグ元首相。「爆破が起きたと知った時、どうかガス爆発であってほしいと願っていた」と振り返った。最終的な死亡者数を記したメールが寝る直前に届いた時、「ノルウェーへの非情な攻撃だと思った」と語った。
22日はノルウェー全国各地で追悼行事が開催される予定。
Photo&Text: Asaki Abumi