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倒産寸前の水道屋がタピオカ屋とアパレルを始めたら「世界一やりたいことができる会社」になった 第3回

倉重公太朗弁護士(KKM法律事務所代表)

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多くのプロジェクトを同時にスピーディに進行させるには、仕事を誰かに任せないといけません。関谷有三さんは、著書の中で「人を育てるもっとも効果的な方法は仕事を任せること」と書いています。しかし丸投げして放っておくと、たいていはうまくいきません。反対に進捗を細かく管理して指示を出していたら、任せたことにはなりません。関谷さんはどのようにチームをマネジメントして いるのでしょうか?

<ポイント>

・リーダーに絶対的に必要な3カ条

・「結末は必ずハッピーエンド」と決める

・友達になりたいと思える人だけ採用する

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■今の時代のリーダーに求められるもの

倉重:この時代は、やはり昭和的な「俺についてこい」というようなリーダー像とは変わっていますよね。リーダーについてどのように考えていますか。

関谷:弊社は並走型です。口や手を出さずに、隣でずっと伴走しています。丸投げはするのだけれども、並走しているのがポイントです。結構極端な人が多くて、完全に放置してしまうか、言いすぎてしまうかのどちらかです。そこは我慢強く並走すべきです。

倉重:部下には褒める、励ます、寄り添うと書いてありました。

関谷:やはり褒めて悪いことは一個もありません。どのような人も褒められて伸びると言います。しかるのはお互いに疲れます。

倉重:問題点を指摘するときはありますか。

関谷:「もっとこうすればよくなるのに」とは言います。例えばあいさつができない人がいたら、「こんなにいいところがたくさんあるのだから、あいさつができたらもっといいよね」というような言い方しかしません。

倉重:それはいい乗せる言い方ですね。うまいです。

関谷:伴走しているときに、横で文句を言っていてもしょうがないです。

倉重:まったくです。そういった見守りをして、やばいなと思ったら口を出すのですか。

関谷:いつでもアドバイスができる状態にいます。横にいたら、声を掛けてくれますから。こちらからは言わないで、向こうから来たときに、ちゃんとSOSに対して対応ができる状態で並走する感じです。

倉重:なるほど。当然進捗も分かっているということですよね。

関谷:一緒にしているプロジェクトに関しては、60人くらいの日報を毎日見ています。そうすると、毎日誰が何をしているかが全部分かります。

倉重:それだけでも時間かかりますよね。

関谷:たった15分くらいです。お風呂にiPadを持ち込んでいるのですけれども(笑)、毎朝半身浴をしながら社員の日報を見て、コメントすることを日課でやっています。

倉重:なるほど。自然とそれがルーチーンになっているから、苦でも何でもないですね。

関谷:ちゃんと行動も把握して、リアクションもしてあげて、何か困ったことがあれば向こうからSOSができるような環境づくりをしています。

倉重:採用もかなり力を入れているとさっき言っていましたけれども、どのような人を採りたいですか。

関谷:一番は、年齢問わず僕が友達になりたいと思える人です。僕は友達としか働きたくありません。「この人と友達になりたいか?」という観点でしか採用しないのです。頭がいいとか、仕事ができそうだとかは重要ではありません。

倉重:それは面接でやるのですか。それとも何か食べながら話したりするのですか。

関谷:面接でします。

倉重:そこでどのような質問をするのですか?

関谷:「土日に何をやっているの?」「食べ物は何が好すきなの?」「今日の服装のコンセプトは?」という質問です。

倉重:本当に合コンの初対面のようですね。それで「この人とは友達になりたい」というのはどんな人ですか?

関谷:僕はセンスがいい人としか友達になりたくないのです。センスがいい人は、相手が何を求めているかが分かります。ボサボサの髪型で来たらセンスはないですよね。

 全然話は違いますが、ご飯屋さんに行って、店員さんに対する態度が悪いのは当たり前に駄目なのですけれども、食べ終わった後のおしぼりが汚い人も個人的に嫌いです。おしぼりをぐちゃっと置く人は、見ていて感じが悪いです。

倉重:ちゃんと整えると。

関谷:おしぼりをぐちゃっと置くことが、相手から見たときに感じが悪かったり、粗雑な人と思われたりすることに気づいていないのは、センスが悪いと思っています。

倉重:自己客観性が高く、想像力を持つ人がいいということですね。毎日友達と一緒に働いていたら、それは楽しいですよね。

関谷:学生さんは、僕の本やブログを読んできて、Instagramをチェックしたうえで説明会にエントリーしてきます。

倉重:それはミスマッチが最初から少ないですね。でも、条件で言ったら、やはり大手さんと比べませんか? みなさん「関谷さんと一緒に働きたい」と言って入ってくる感じですか。

関谷:大手に行きたい人は当社の価値観に合いません。だから、アンチマストで外れていくのです。優秀であるのは前提としても、10年後の未来は課長、20年後の未来は部長、その後役員、取締役になれるかは実力以外の時の運ですから。チャレンジ精神に富んだ人が、歯車に人生をささげられますか?

倉重:絶対無理です。

関谷:決まりきった人生に対して魅力を感じる人は、当社の価値観と合わないから来なくて大丈夫です。

倉重:最初から社長の価値観を分かっている人に来てもらえるのは大きいですね。

■リーダーとして絶対的に必要な3カ条

倉重:ご著書にはリーダー論として、「絶対的に必要な3カ条」というものがありました。「①常に考え続けること」「②変化を恐れないこと」「③行動で検証すること」ですね。

関谷:やはりこのような時代ですから。変化をしていかなくては生き残れないし、PDCAを回していかなければいけません。僕らは新しいことしかしていないので、とにかく行動して、失敗して検証することの繰り返すしかありません。

倉重:どのように検証するのですか。

関谷:なぜうまくいかなかったのか、どうすればうまくいくかを検証します。僕たちはチームで行動するので、「毎日が文化祭」が基本です。自ら立ち上げた文化祭がうまくいかなかったら、「どうやったらお客さんは来るのだろうか」「どうやったらもっと盛り上がれるのだろうか」など検証します。自分たちが好きなことは、ちゃんと検証をするので。

倉重:「皆頑張ったし、よかったね」で終わりではないと。

関谷:うまくいかなくても検証はしますし、うまくいったらいったで、「なぜうまくいったのか」と検証します。

倉重:その変化もまた楽しんでいくという感じですね。

関谷:そうです。失敗も成功もプロセスを楽しむ感じです。

■逆境の乗り越え方

倉重:最後は「逆境の乗り越え方」がテーマです。事業をしていれば、どのような人でも逆境はあるし、多分楽しい中にもつらいことがあると思います。マインドについて、どのように心掛けていますか。

関谷:結末はハッピーエンドであると思い込んで決めています。結論を決めてしまうと、過程はハッピーエンドまでのストーリーでしかありません。例えば水戸黄門の結論は絶対に勝つと決まっていますよね。ドラえもんの映画も、絶対に問題解決をして現代に帰ってくると決まっています。

倉重:でも、途中はハラハラしてしまいます。

関谷:「結論が決まっていたら、途中経過は全部ストーリーにできる」というマインドセットを自分のものにできればいいのです。

倉重:いい未来が想像できないという人はたくさんいると思いますが、関谷さんはめちゃめちゃ強いですね、どうやったらそうなれるのでしょう。

関谷:思い込んで決めてしまうだけです。

倉重:メンタルが落ちるときは、どのようにしてリセットするのですか。

関谷:ストーリーでいったら、「今落ち込んでいるシーンだな」と思います。僕は『リッチマン、プアウーマン』が大好きで、あのドラマを十何回も見ています(笑)。小栗旬が孤独になって部屋でうずくまって、「皆いなくなってしまえばいいのだ」と叫ぶシーンがあります。ここが一番つらいシーンで、6話くらいです。僕もつらいときは「今は6話なのだ」と思っています。8話から復活していきますから(笑)。

倉重:ドラマに重ねているわけですね。ストレス解消法はありますか。

関谷:毎朝の半身浴や、汗をかくのが好きなのでランニングや筋トレもやります。ただ仕事は仕事のことでしか解消できないと僕は思っています。

倉重:オンオフというのはありますか。

関谷:オフは絶対しないです。オフにすると、ギアを再び入れるのが大変なので、プライベートでも、旅行でも、オフにはしないです。最低ローギアは入れておきます。

倉重:私からの質問は最後になりますが、関谷さんの夢を教えてくれますか。

関谷:昔は日本一になりたいとか、トヨタやソニーのような世界的な企業にしたいという野望がありました。

倉重:でも、もう変わっているのですね。

関谷:今の明確な夢は、死ぬ前の日まで人から必要とされ、仕事をしていたいということです。多分それが一番究極の理想だと思います。

倉重:夢中で走り続けて、いつの間にか倒れているのですね。

関谷:仕事は面白いプロジェクトしかしていません。22、23歳の若い子の隣の席で一緒にワクワクと仕事をしているのですから、楽しくないわけがないのです。60になっても、70になっても、若い子たちが「関谷さん、関谷さん」と寄ってきて、お金も稼げたら楽しいではありませんか。

倉重:もう中高時代からずっと「モテたい」ということが原動力ですよね。

関谷:これは余談ですが、僕は韓流ドラマが好きなのでたくさん見ています。すごい財閥のおばあちゃんがいて、権限もお金も持っているので、生意気な孫がおばあちゃんにだけは逆らわないのです。

倉重:そこは年功序列の最たるもののような感じですか。

関谷:お金と権限を持っているからです。おばあちゃんにクレジットカードを取り上げられると、そのクソガキがいつも言うことを聞くのです。ということは、僕が老人になってもお金と権限があったら少なくとも足蹴にはされないですよね(笑)。

倉重:かっこいい自分でいたら、そうですよね。

関谷:老人になって足蹴にされたら、悲しいです。だったら、死ぬ前の日まで楽しんで仕事をして、自分の力でお金も稼げて、家族や周りの人にちやほやされて死んでいったら、絶対に楽しいだろうと思います。

倉重:この延長線で楽しい未来が待っていると。今は夢の中ですね。

関谷:リタイアをする人の気持ちがよく分からないです。よほど仕事がつまらなかったのだろうなと思います。

倉重:Fireなんて何もうらやましくないですね。絶対ボケます。

関谷:世界1周した人の話はたくさん聞きますが、4~5周したという人の話は聞きません。

倉重:確かに(笑)一度はやってみたいですが、絶対に飽きますよね。

(つづく)

対談協力:関谷 有三(せきや ゆうぞう)

オアシスライフスタイルグループ代表取締役

1977年栃木県宇都宮市で生まれる。2001年成城大学入学3日目にしてイベントサークルを立ち上げ、大学最大級の規模へ拡大。大学卒業後、倒産寸前だった実家の水道工事店を立て直すため地元の栃木に戻り再建に成功。その後、2006年(株)オアシスソリューションを起業し、大手マンション管理会社と提携するビジネスモデルを生み出し、数年で全国規模に成長させ業界シェアNO.1を誇る企業へと躍進。

2011年東日本震災を経験し、1つの事業だけでは事業の永続は難しいと痛感し、3本柱の事業を運営することを決意。2013年タピオカミルクティー発祥の台湾のカフェブランド「春水堂」を3年の交渉の末に日本へ誘致し、代官山に海外初店舗をオープンし、その後全国へ展開し空前のタピオカミルクティーブームの火付け人となる。

2017年水道事業の作業着をリニューアルしたことを契機に第三の事業としてアパレル事業を立ち上げ、独自開発の新素材「ultimex」を使用したスーツに見える作業着「ワークウェアスーツ」を開発。現在、導入企業数は1,600社を突破。2019年にはユナイテッドアローズ名誉会長の重松氏が顧問に就任。2021年現在、ユナイテッドアローズ、ベイクルーズをはじめとしたセレクトショップや三越伊勢丹などの百貨店での取り扱い、ANAとのコラボなど注目を集め、コロナ禍のアパレル不況の中でも異例の急成長を続けている。

2021年3月8日に自身初の書籍「なぜ、倒産寸前の水道屋がタピオカブームを仕掛け、アパレルでも売れたのか?」を発行。時代を先駆ける様々な新規事業を成功へ導き、「令和のヒットメーカー」と呼ばれる。

弁護士(KKM法律事務所代表)

慶應義塾大学経済学部卒 KKM法律事務所代表弁護士 第一東京弁護士会労働法制委員会副委員長、同基礎研究部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)副理事長 経営者側労働法を得意とし、週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」 人事労務部門第1位 紛争案件対応の他、団体交渉、労災対応、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。代表著作は「企業労働法実務入門」シリーズ(日本リーダーズ協会)。 YouTubeも配信中:https://www.youtube.com/@KKMLawOffice

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