チャップマンは「最速」から「最強」へ進化するのか
先月、アロルディス・チャップマン(ニューヨーク・ヤンキース)は33歳になった。
数年前まで、チャップマンが投げる球は、誰よりも速かった。当時、MLB.comが掲載していた1球ごとの球速トップ50――現在は見当たらない――には、「チャップマン・フィルター」が設けられていて、ページの左上にあるチャップマンのアイコン(顔写真)をクリックすると、彼の投球を除いたトップ50が表示された。そうしないと、50球ともチャップマンが投げた球になってしまうためだ。
今でも、チャップマンはハードボーラーだ。けれども、その球速は前ほどではない。例えば、各シーズンの最速は、スタットキャストのデータによると、2015年が104.1マイル、2016年が105.7マイル、2017年が104.2マイル、2018年が104.4マイル、2019年が102.7マイル、2020年は101.5マイル。速球(4シームとシンカー)の平均球速は、100.1マイル→101.1マイル→100.0マイル→98.9マイル→98.3マイル→98.0マイルと推移している。
3月10日、チャップマンは今春初登板のエキシビション・ゲームで、最初の打者を空振り三振に仕留めた。速球2球でカウント0-2とした後、3球目に投げたのは、速球でもスライダーでもなく、スプリッターだった。
スタットキャストが記録している、2019年までのチャップマンの球種に、スプリッターは存在しない。ただ、2020年は、シーズン最後の2登板とポストシーズンの3登板で、計6球のスプリッターを投げている。球速が低下しても――それでもまだ十分速いが――打者を封じられるよう、新たな球種を投げ始めているのではないだろうか。100マイル前後の速球と横方向の動きが大きいスライダーに、縦変化のスプリッターを加えようというわけだ。前はチェンジアップを投げていたが、2018年以降はほぼ皆無に近かった。
今シーズン、チャップマンがどれくらいの頻度でスプリッターを投げるのかは、わからない。もしかすると、そう多くない可能性もある。エキシビション・ゲームの初登板で、最初のアウトをスプリッターで記録したのも、言ってみれば、デモンストレーションかもしれない。速球とスライダーだけでなく、スプリッターもあることを打者に認識させれば、それだけでも効果はあるはずだ。