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大阪桐蔭、神宮大会3連覇ならず! それでもセンバツで優勝候補筆頭に推したい理由は?

森本栄浩毎日放送アナウンサー
神宮大会3連覇を狙った大阪桐蔭は関東一に敗れ、偉業達成はならなかった(筆者撮影)

 明治神宮大会が終了し、今年の高校野球シーズンが幕を閉じた。史上初の大会3連覇を狙った大阪桐蔭(近畿)は、初戦の2回戦で関東一(東京)に5-9で敗れ、快挙を逃した。大阪桐蔭の秋の公式戦での黒星は、3年前の近畿大会決勝で智弁学園(奈良)に敗れて以来となる。

星稜が32年ぶりの優勝を果たす

 優勝は星稜(石川=北信越)で、作新学院(栃木=関東)に3-1で競り勝って、32年ぶり3度目の神宮制覇を果たした。初戦で広陵(広島=中国)に勝って勢いづき、青森山田(東北)、豊川(愛知=東海)を撃破。4つ勝っての優勝だけに価値がある。左腕・佐宗翼(2年)の巧みな投球が光り、中軸打者全員が本塁打を放つなど、投打ががっちり噛み合った。来春センバツで、北信越の出場枠は「3」となる。

大阪桐蔭に重なった不運

 さて大阪桐蔭にはいくつもの不運があった。まず早朝からの雨で試合時間が大幅に繰り下がったこと。これは前日に決まっていたので影響は少なかったとみられるが、慣れない人工芝に雨の水分が残り、後述する守備のもたつきにつながったのは間違いない。さらに、相手の関東一は神宮が主戦場であり、この球場の戦い方に慣れている。また関東一は初戦を勝っての2回戦で大阪桐蔭は最初の試合。夏の甲子園の49番クジのチームの勝率が極めて低いことを考え合わせれば、ある程度、納得がいく。

計5失策で相手に流れを渡す

 それでもこの試合は明らかに不出来だった。エース・平嶋桂知(2年)は近畿大会決勝でも制球に苦しんだが、初回からつかまり、本来の投球ではなかった。3回に四球の走者を置いて2ランを浴びたあたりで代えていてもよかったかと思う。試合は、1点差に迫った6回裏の守りが全てだった。この回から登板した南陽人(2年)は力強い速球を軸にテンポよく投げ込み、守りにリズムを呼び込める。しかし、味方の失策が重なり、決定的な4点を奪われた。右打者の強烈なゴロを後逸したのは守備に不慣れな1年生一塁手だったし、1死満塁でゴロを好捕しながら本塁へ悪送球した三塁手のラマル・ギービン・ラタナヤケ(2年)は、4番として3安打3打点の働きは立派だったが、落ち着いて投げていれば余裕でアウトにできたプレー。結局、計5失策では、勝てるはずもない。

「投手王国」の看板はそのままで

 筆者が「ぜひ神宮で見てほしい」と力説した大型右腕の森陽樹(1年)は結局、投げずじまい。2年前の前田悠伍(ソフトバンクから1位指名)と同じ道を歩むかと思いきや、肩透かしを食らってしまった。だからこそ、「本番」のセンバツでは一層、怖い存在になる。森を出さずに負けたということは、前田を出さずに負けるのと同じようなもので、「投手王国」の看板を下ろす必要はない。そしてさらに、来春は大阪桐蔭に追い風が吹く。

「低反発バット」が来春センバツから導入へ

 それは「低反発バット」の導入だ。打高投低と言われる昨今の高校野球で、主に投手の負担軽減を目的に導入されるが、打球速度が落ちることで強烈な当たりが減り、選手のケガの防止にもつながる。今大会では、北海(北海道)がこの新バットを使って果敢なチャレンジをしたが、作新学院相手に9回まで無得点に抑えられた。地区大会後、神宮まで時間が空いたため、来春を見越してすでに新バットで練習しているのだろう。秋の公式戦が終わるタイミングで各校の監督が、「明日から新しいバットで練習する」と言っていた。

新バットは大阪桐蔭に追い風

 実際にどれくらいの影響があるのか。近畿大会で準優勝した京都外大西の上羽功晃監督(53)は「ひょっとしたら木のバットの方が飛ぶんじゃないか」と話し、飛距離が出るスイートスポット部分も非常に小さいという。したがって、相当な打撃技術が必要で、今大会で出たようなライナー性の本塁打は激減するかもしれない。大阪桐蔭には、中学時代から技術に長けた選手が多く、さらに相手を抑え込めるだけの球威を持った投手が何人もいる。今秋は打てずに苦労した大阪桐蔭だが、来春はどのチームも攻撃力が落ちる。投手力が分厚い大阪桐蔭にとっては、ますます有利と言える。

来春はより精度の高い野球が求められる

 来春のセンバツでは「新バット」の導入という大きな変革が待っている。近年、タイブレークや継続試合、申告故意四球、投手の球数制限など、運用面での変革が高校野球に大きな影響をもたらしたが、使用道具の変更は珍しい。秋の公式戦を終えたチームは、すでに新バットで練習試合も行っていて、対策に余念がない。実際にやってみないと分からないが、これまで以上に1点の重みが増すことは確実で、より精度の高い野球をやれるチームが、甲子園で笑うことになるのだろう。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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