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サンウルブズ沢木敬介コーチングコーディネーター、日本代表と打ち合う。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
スクリーンショットは筆者制作

 6月12日、静岡・エコパスタジアムで日本代表にぶつかる。サンウルブズの沢木敬介コーチングコーディネーターが、11日、試合会場での前日練習後に意気込みを明かした。

 サンウルブズはこの国唯一のプロクラブとして2016年に発足。20年まで国際リーグのスーパーラグビーに参戦し、代表強化を支えてきた。特に2018年は日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチ以下、多くのスタッフ、代表候補選手がサンウルブズに参加。プレースタイルの共有のみならず、互いの信頼関係構築にも役立った。

 現キヤノン監督の沢木は20年のサンウルブズで指導に携わり、感染症の影響でシーズンが停止する3月中旬までの約1か月半、工夫を凝らしたアタックでスタンドを沸かせてきた。

 過去には20歳以下日本代表のヘッドコーチ、日本代表のコーチングコーディネーター、サントリーの監督を歴任。競技への愛情、鋭い視線、厳しさと優しさの絶妙なバランスで知られてきた。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——明日はどんなプレーをしたいか。

「ジャパンがB&Iライオンズ(※)とやる、その準備のための本当に重要なゲームです。しっかりしたクオリティで、強度の高いラグビーをやってかなきゃいけない。ただ、(サンウルブズは)噛ませ犬じゃない。そういう、エネルギーのあるチームだと思うのでね。サニーズ(サンウルブズの愛称)の文化らしくボールをしっかり動かして、観ていても楽しめる展開に持っていきたいですけどね。準備期間(が約1週間と短い)って言われますけど、アウェーの時のサニーズのノーマルスケジュールなので、これは。コーチ陣も、主将のカーキー(エドワード・カーク)も、そういうのも楽しんでやっていますけども。

 ディフェンスはほとんどやってないです。きょうのキャプテンズランで、スローで、5分か10分くらい。ただ、ある程度の決まりごとがあれば選手たちのハードワークでカバーできる。殴り合い(のような試合展開)になるかもしれないけど、トライを獲りに行く、アタックするという姿勢が選手1人ひとりに強い。細かいミスとかは出ると思いますけど、皆、エネルギーあるプレーしてくれるとは思います」

※B&Iライオンズ=ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ。イングランドなどの4協会からなる連合軍。6月26日、スコットランドのエディンバラで対戦する。

——代表側からB&Iライオンズ風のプレーをリクエストされているわけではない。

「もちろんです。あと、B&Iライオンズがどういうプレーをするのかも知らないんで」

——日本代表と戦えることについて、率直にどう感じるか。

「皆、そこにモチベーションがあると思いますし、はい。ただ、サンウルブズとして戦えるという思いが——特にサンウルブズを経験した選手には——すごく強いと思います。また、(以前)サンウルブズに参加したいと思っていた若い選手が何人もいる。サンウルブズとして楽しみたい」

——スタンドオフの山沢拓也選手、インサイドセンターの梶村祐介選手など、20歳以下日本代表で指導した選手が多い。

「久々に会った選手もいます。最初はちょっと、あれじゃないですか、(自分に)びびってたんじゃないですか。フフフフ。…けど、皆、順調に成長してきて、将来のジャパンの軸になれる選手がサンウルブズにも日本代表の方にも何人もいる。成長のためにハングリーに頑張っているんじゃないかなと」

——先発に並ぶ日本代表選手は、今週の途中になって合流した。そのあたりで生じる難しさ、対処の仕方について。

「そういうネガティブなことは考えない。ある程度、サンウルブズを手伝うことになってからは、自分のなかで色んなオプションを考え、来た選手の力を最大限出るような組み立てをした。また、そういうのを選手と作っていくのもサニーズの文化です。

主将のカーキー、布巻(峻介)と先に入ったサンウルブズ組が、遅れてきたジャパン組をリードできる形は作れていたので。なので、もちろん急造(チーム)ですけど、合わせる時間が短かったから…という感じでは全くないです」

 話題に挙がった梶村は10日、「(沢木のもとで)練習にいい緊張感がある。普段よりもよりひとつひとつのプレーに丁寧になって、自信を持って(試合に)臨める準備ができている」と述べ、「自分が成長するための一戦と考えています」。現在候補入りにとどまっている日本代表への思いをたぎらせるよりも、いま自分ができることに集中したいとした。

 主将のカークは2016年から4年間サンウルブズでプレーしたクラブの顔。今季限りでキヤノンを退団しており、今度の試合を「自分にとってこれはテストマッチ」と表現していた。

「サンウルブズのジャージィを二度と着られないと思っていたので嬉しい。チームを背負っておこなうのは、自分の得意なアグレッシブなプレーです。そして私は、また将来が何も決まっていない。これが日本でプレーする最後の試合になるかもしれないので、それも楽しみたいです」

 試合前日練習で沢木が選手へかけた声のひとつには、「エンジョイもサニーズの文化ね」。決して「噛ませ犬」ではない狼たちは、試合の物語をより豊穣にする。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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