「ベビーカー利用者は気遣いをしている」同意者は7割
ベビーカーに係わる問題で特に指摘されるのは「利用者が横柄な使い方をしているのではないか、周囲への気遣いをしていないのではないか」とするもの。実際にはそのような事例がまったく無いとは言えないが、構造上・利用スタイルの事情から第三者視点で見ると、そのような意図はまったく無くとも、乱雑な使い方をしているようにも見えてしまうのも「気遣い無しに使っているのでは」との疑念を持たれる理由でもある。
では実際、世間一般における認識はどのような状況なのだろうか。どれほどの人が「ベビーカーを使う人は横柄だ、周囲への気遣いが足りない」と思っているのだろうか。内閣府が2016年2月に発表した、ベビーカーマークに関する世論調査の詳細値から確認していく。
電車やバスなどの車内、エレベーターなどでベビーカーを使用している人が、周囲の人や通行人と接触したり、妨げになったりしないように、周囲に気遣いをしているように見えるか。回答者の考え、意見を聞いた結果が次のグラフ。
全体ではほぼ7割が「ベビーカー使用者は周囲に気遣いをしている」とし、ベビーカー使用者へ肯定的な感想を有している。他方、「気遣いしていない」とし否定的な意見を持つ人は約2割。他に分からない、意見留保的なポジションの人が1割程度。
男女・世代別では押し並べて男性よりも女性の方が肯定派意見の値が高く、ベビーカーを利用する機会が多いと思われる年齢(男性は20代から50代、女性は20代から40代)の値が好意的意見を多く有している。否定的意見は2割程度でさほど違いは無いが、女性では年上ほど高い値を示すのがやや気になるところ(「分からない」の回答率も上昇するが)。
ベビーカーで生じ得るトラブルは多分に混雑が起きる場でのものだが、そこから連想されるのは「人が集まりやすい都心部の方がトラブルが起きやすい。だから気遣いをしていないような状況に遭遇しやすいので否定的意見も多くなるのでは」との流れ。しかし実際には都市規模別での傾向だった動きは見出しにくい(いくぶん否定派が多いように見えるが、数%ポイントの差でしかない)。ただし小都市や町村部では気遣いをしている・していないの判断ができるようなケースに遭遇する機会が少ないようで、意見留保の回答率が高くなっているのも特徴的。
地域別では関東や近畿といった人口密集地帯でいくぶん否定回答率が高めに出ているが、似たような動きは中国でも確認されており、一概に「人が集まりやすいとトラブルが生じやすいから云々」とは言い切れない。
子供の居る・居ない別では子供が居る人の方が肯定派が多く、特に乳幼児≒現在使用している人は特段肯定派が多い結果が出ている。利用の実情を自分自身が知っているからこそ、だろう。他方子供が居ない人に限ると1/4強が「気遣いをしていない」との意見を有していることになる。また当然ながら、現在ベビーカーを使っている人の肯定意見は極めて高い……のだが、それでも1割強は「配慮が欠けているな」との認識を持っている。
この類の話は多分にケースバイケースで、すべてのベビーカー使用者が配慮に欠けているわけではないし、使用者全員が周囲に気遣いをしっかりとしているとは限らない。そして正しい知識・情報が無ければ、多分に自分の実体験を背景に全体の状況を認識してしまうところがある。ベビーカーマークを推進する、さらにはベビーカー関連団体や育児方面においては、ベビーカーの正しい使い方、そして使う際にどのような状況となるのか、第三者からの見え方だけでなく、利用者自身の視点も十分に公知し、その現状を伝えるべきだろう。
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