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この選手がトレードで出されそうなのは、試合中にスーパースターと口論したせい!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
フランシスコ・リンドーア(左)とジェフ・マクニール Sep 5, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ニューヨーク・メッツは、ジェフ・マクニールを放出しようとしているらしい。メッツのビート・ライター、スポーツ・イラストレイテッドのパット・ラガッツォが、そう報じている。ロックアウトの終了後、メッツはマクニールを、トレードで投手を獲得するための交換要員にするつもりだという。

 マクニールは、2018年7月にメジャーデビューし、そこから3シーズン続けて打率.310以上と出塁率.380以上を記録した。2019年は、23本のホームランと38本の二塁打を打った。ポジションは、二塁に加え、三塁とレフトとライトを守る。年齢は来年4月で30歳。FAになるのは2024年のオフだ。今シーズンは不振だったとはいえ、通常であれば、トレードに出されるような選手ではない。

 今年5月、マクニールは、チームメイトと揉めた。試合中に、ダグアウトの奥でフランシスコ・リンドーアと言い争った。これについては「二遊間デュオが「試合中に口論」。見かけた動物がネズミなのかアライグマなのかを巡って…!?」で書いたが、先月、ニューヨーク・ポストが掲載したマイク・プーマの記事によると、単なる口論にとどまらず、リンドーアはマクニールの首を掴んで壁に押しつけたという。リンドーアは、開幕直後に10年3億4100万ドルの延長契約を手にした。この契約は、来シーズンからスタートする。

 ただ、マクニールが放出されそうなのは、この一件が理由ではない――少なくとも最大の理由ではない――ようだ。

 来シーズンのメッツには、ロビンソン・カノーが戻ってくる。2度目の薬物違反により、今シーズンはプレーできなかったが、リンドーアがスーパースターなら、カノーは元スーパースターだ。また、今オフ、メッツはFA市場に出ていた野手3人、スターリング・マーテイマーク・キャナエデュアルド・エスコバーを手に入れた。

 カノーのポジションは、二塁だ。マーテイはセンター、キャナはレフトかライト、エスコバーは三塁を守る。外野にはブランドン・ニモもいるので、マクニールが守るポジションはない。控えは、ドミニク・スミス(外野と一塁)、J.D.デービス(三塁と外野)、ルイス・ギヨーメイ(一塁以外の内野)の予定。この3人のうち、スミスとギヨーメイは、マクニールと同じ左打者だ。

 今シーズンの打率.251と出塁率.319からすると、マクニールをトレードに出しても、そう大きな見返りは得られないかもしれない。だが、これまでの実績と守備の汎用性を考えれば、需要はありそうだ。四球率は低めながら、打率(と出塁率)は昨シーズンまでのレベルに戻ってもおかしくない。今シーズンは、ツキがなかったということも考えられる。BABIPは.280。過去3シーズンのBABIPは、いずれも.330を超えていた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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