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後半戦の大爆発でMVPを手にした選手がいる一方、後半戦の大失速でMVPを逃した選手も

宇根夏樹ベースボール・ライター
クリスチャン・イェリッチ(ミルウォーキー・ブルワーズ)Sep 15, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 オールスター・ブレイクを迎えた時点で、クリスチャン・イェリッチ(ミルウォーキー・ブルワーズ)がMVPに選ばれると予想した人は、まずいなかったはずだ。前半戦も悪い成績ではなかったものの、OPS.823はナ・リーグで300打席以上の77人中28位に過ぎす、イェリッチよりもホームランの多い選手は、リーグに45人もいた。

 それが、後半戦のOPS1.219は2位(200打席以上)のジャスティン・ターナー(ロサンゼルス・ドジャース)を153ポイント引き離し、打率.367と25本塁打、出塁率.449、長打率.770もトップ。シーズン全体ではリーグ1位の打率.326、長打率.598、OPS1.000を記録し、出塁率.402と36本塁打も3位にランクインした。

 一方、ホゼ・ラミレス(クリーブランド・インディアンズ)は後半戦に大失速した。前半戦のOPS1.029はア・リーグで300打席の84人中4位に位置し、29本塁打はJ.D.マルティネス(ボストン・レッドソックス)と並んで最も多かった。ところが、後半戦のOPS.793は200打席以上の79人中32位。本塁打は約3分の1の10本にとどまった。シーズン全体では30-30を達成し、MVP投票の3位に入ったものの、ラミレスを1位に挙げた記者は皆無で、2位すら1人しかいなかった。

 イェリッチのOPSは、前半戦と後半戦で396ポイントも違う。これは、リーグを問わず、シーズン500打席以上を記録した144人のなかで、最も大きな差だ。打率の75ポイント差も「前半戦<後半戦」の5番目。イェリッチとは対照的に、ラミレスのOPSと打率は「前半戦>後半戦」の5番目(236ポイント差)と2番目(84ポイント差)に大きかった。

筆者作成
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 イェリッチに関して唯一惜しまれるのは、MVPに無関係とはいえ、後半戦の猛打をポストシーズンで発揮できなかったことだ。ディビジョン・シリーズの初戦こそ、ホームラン1本を含む3打数2安打ながら、その後の9試合は打率.152(33打数5安打)、1本塁打に終わった。

 ただ、ラミレスが不調に陥ったにもかかわらず、インディアンズはア・リーグ中地区を独走した。ブルワーズの場合、イェリッチが後半戦に打ちまくらなければ、ポストシーズンにはたどり着けなかっただろう。

 リーグ・チャンピオンシップ・シリーズの第7戦に、イェリッチのバットは再び火を噴き始めた。最初の打席でホームランを打ち、3打席目の一打は左中間へ伸びていった。レフトのクリス・テイラー(ドジャース)が好捕しなければ、同点に追いつく長打になっていた。その裏、ブルワーズはヤシエル・プイーグ(ドジャース)のホームランで点差を広げられ、そこから追い上げることなく、オフを迎えた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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