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政党ガバナンスのルール作りを

加藤秀樹構想日本 代表
(写真:イメージマート)

1.政治家、政党の不祥事はなぜこんなにも多いのか

旧統一教会と政治家の関係では、ついに閣僚が一人辞任した。また、被害者の救済などが漸く国会で議論されるようになった。しかし、これでは問題解決の一部にしかならない。政党と旧統一教会の関係に踏み込んでいないからだ。政党、政治家は票と金集めのことになるとなりふり構わない。だから旧統一教会のような「問題がある」と分かっている団体とも付き合う。これは政党の行動規範、ガバナンスの問題なのだ。

報道を聞いていると「政治家にも信教の自由はあるから、宗教団体との関係を深くは聞けない」といったことを言う議員や政治ジャーナリストがいる。しかし、これは信教の自由とは関係ない。反社会的な活動をしている団体に対して政治家や政党がどのような態度をとるべきかの問題だ。

また、こういった問題があると、必ず聞くセリフがある。

「(どういう団体か)知らなかった」

「事務所がやったこと」

「記憶にない」

実際に知らなかったことも、記録にもないこともあると思う。一人でも多くの人と会い、少しでも票につながりそうなことを競って行っているのが今の日本の政治家だからだ。問題はしかし、それでいいのか!ということなのだ。

会社の経営者なら「知らなかった」「部下が・・」と言うとマスメディアはこぞって叩くだろう。ところが“政治ジャーナリスト”には、「政治家は大勢の人と会うのが重要な仕事だから仕方ない」などと政治家の擁護をするような発言が多い。

日本の“政治ジャーナリスト”の多くが、政策など政治の中身ではなく、専ら政治家の動向といわゆる政局を追いかけ、大物政治家とどれだけ親しいかを競ったりしているからこうなる。

一方、野党も「実態を調べろ」「正確な情報を出せ」と言うばかりで、その先がない。だからモリもカケもそうだったように、不祥事が中途半端に終わり、繰り返される。網に追い込もうにも、本気で追い込む気がなかったり、方法を持っていないのだ。そしてもっと重大なことは、追い込む先の「網」がそもそもない。

2.政党のガバナンス

日本には選挙や政治資金に関する法律は不備ながらあるが、政党の運営、ガバナンスに関するルールがないのだ。コーポレートガバナンスという言葉を日常的に目にするようになったが、会社の場合、会社法に始まり、証券取引所の規則など詳細なルールがある。そして、非上場、上場とパブリック=公的な度合が高いほどルールも厳しく、特に近年それらがどんどん強化されている。会社以外の社団、財団でも同様だ。

ところが、だ。

会社などと比べて最も「公的な度合」の高い政党に対して、ガバナンス全体を律するルールがないのだ。大抵の先進国では、何らかの形で政党のガバナンスに関するルールがある。日本はその意味では間違いなく政党後進国だ。そして、それが今や民主主義後進国の大きい原因になっている。

さらに、このことについて政党間あるいは国会できちんと議論されたことはほとんどない。政党、政治家に自己統治意識が大幅に欠如してしまっているのだ。

ガバナンスの利いていない政府=ガバメントに国のガバナンス(統治)を任せられるのだろうか。

3.政党法

では、政党のガバナンスとしてどんなことを決めればよいのか。旧統一教会との関係のような組織の規律という観点からみると、主に以下のような事項だろうか。

(1)政党が設置すべき機関とその権限、責任を明確にする

 (会社の場合、株主総会、取締役会、監査役会などがそれぞれの権限、責任、選任方法、決議方法とともに会社法に規定されている)

(2)政党の本部と支部の関係、両者の役割、責任を明確にする

 (日本の多くの政党で、支部は国会議員や地方議員の「私物」化している。会社に例えるなら、支店長が勝手に支店を作ったり、自分の都合に合わせて運営しているようなものだ)

(3)政党の活動や資金の収支に関して、記録を残し、外部の機関による監査を受け、公開する。

 (政治資金については、選挙管理委員会に報告、公開することが義務付けられているが、記載や監査の仕方は極めて大まかで、抜け穴だらけだ。また、活動内容については何もルールがなく、報告義務もないため、「忘れ」たり、「知らなかった」りする)

私は、以上のことを中心に、「二世議員」を含む候補者の選考や党員などについても定めた「政党法」を新たに作るべきだと考えている(※参考:「政党法」制定の提言、構想日本2009年)。

政党法の例として有名なのはドイツだが、他の多くの国でも政党の組織や活動に関する基本ルールは定められている。それは先述したように、政党が国の統治に関わる最も「公的な度合」の高い組織であり、その運営に税金も使われているからだ。

日本の政党には、約300億円の国からの政党助成が行われていて、これに非課税の政治資金を加えると、1,000億円以上の国民の金が政党、政治家の運営に使われている。

会社など他の団体とのバランスを見ても、法律と法律に基づいた党則に則って政党運営が行われるのは、国益の観点から当然だと考える。

日本の政治はひどいな、と思っている人は政党、政治家の行動規範の法制化に向けて、こぞって声を挙げていただきたい。

構想日本 代表

大蔵省で、証券局、主税局、国際金融局、財政金融研究所などに勤務した後、1997年4月、日本に真に必要な政策を「民」の立場から立案・提言、そして実現するため、非営利独立のシンクタンク構想日本を設立。事業仕分けによる行革、政党ガバナンスの確立、教育行政や、医療制度改革などを提言。その実現に向けて各分野の変革者やNPOと連携し、縦横無尽の射程から日本の変革をめざす。

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